結局誰だかわからず



「梓、おはよう〜」

「おはよう、マリ」


 次の日。

 私は、昨日会った人物を探すべく気合を入れて登校した。

 だって、すっぴんジャージ見られたのよ! 学校の人なら、口止めしないと!


 昇降口で、マリと一緒になったわ。彼女、いつもはもっと遅いのに珍しいな。


「ねえ、梓。昨日放課後、前坂商店街のところにいた?」

「えっ、あ」


 ……いた。

 でも、ジャージに適当に結んだ髪で。


 いや、いなかったことにしよう。あれを見られるわけには、いかないもの。


「い、居ないよ。昨日は、帰ってからずっと家に居たし」

「そっかあ。なんかね、新しくできたタピオカ屋さん行ったんだけど、そこで梓に似た人見たんだ」

「他人の空似ってやつね」

「え、他人の佃煮?」

「何それ」


 うん、ごまかせたわね。

 マリ、結構単純だから助かるわ。


「あ、それよりさ。マリに聞きたいことがあって」

「なあに?」


 私たちは、話しながら教室へと向かう。


 マリなら、結構交友関係広いから知ってるかも。

 他のクラスだけじゃなくて、科とか学年関係なく知り合いが多いの。楽天家な性格だから、好かれやすいのよね。私も、そういうところが好き。


「うちの学校に、ちょっと髪の毛長くてピアスすごくて、足が細い男子っている?」

「その人がどうしたの?」

「あ、いや。……ちょっとね」


 私がそう言うと、マリは難しい顔をして考え出した。

 なんだか、こういう顔も可愛いなあ。彼女、良い意味でミニサイズだから愛でたくなるのよね。


「ん、ん〜。ピアスすごい人がそもそも居ない」

「学校では付けてないとか」

「うーん。……該当人物ゼロ!」


 マリでもわかんないかあ。なら、私はもっとわかんないや。

 本当、昨日の人って誰だったの?


「そっかあ。何か思い出したら、教えて」

「オッケ〜。もしかして、梓、一目惚れした相手!?」

「ち、違うわよ。ちょっと気になっただけで」

「うわー、今までどんな男子に告白されても興味なかった梓が気になる男子って! 私も気になる!」

「そんなんじゃないってば!」


 結局、その日はあのド派手な男性が誰だかわからなかった。

 ……やっぱり、高校生じゃないって!



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