その後ろ姿は誰?



「美味しい〜〜」

「モッチモチ!」

「ちょっと甘すぎない?」

「それがいいんじゃないの!」

「出た、甘党〜」


 私、篠田マリは、クラスメイト3人と一緒に新しくできた噂のタピオカ屋さんに来た。

 なにが噂かって? それは……。


「にしても、イケメンだった!」

「ね! 同い年かなあ、思った以上に若かったよね」

「ピアス穴すごくなかった?」

「そこがまたいいんじゃん! 赤のインナーカラーがめっちゃ好み!」


 そこの店員さんが、かなりのイケメンなの!

 少し長い髪を後ろに縛って、エプロン姿でお仕事しててね。そのギャップがまた良し!

 鼻筋が通った少しだけ日本人離れしてる顔も、満点ね。しかも、みんなは気付いてないけどその人、さりげなーく目元メイクしてるの。男の人でメイクしてるって、めちゃくちゃカッコ良くない?

 ……でも、絶対彼女いるよね。いないわけがない。

 

 店の前は、学校が終わった高校生がたくさん。多分、みんなも同じ目的だね! イケメンは目の保養だもん。


「私も入れようかな」

「えー! マリ、これ以上派手になってどうするの!」

「いいじゃん、別に誰にも迷惑かけてないし」

「生活指導の……誰だっけ? あの先生の喉に迷惑かけてるじゃないの」

「そうそう、いつもマリ見て怒鳴ってる」

「勝手に怒鳴ってるだけだもんー。私は悪くない」


 だってそうでしょ?

 好きな格好してるだけだもん!


 金髪だって、メイクしてたって、スカートが短くたっていいじゃないの。それに、このウェーブ髪は梓とお揃いだから絶対に変えないもんね!

 勉強ばかりじゃアレだから、ファッションくらい楽しみたいじゃん?


「……」

「どうしたの?」


 ストローに口を付けた時だった。

 私は、向かいの歩道を走っている女の子に目が行ってしまった。


「あれ、梓じゃない?」

「えー、どこ?」

「あそこ。髪の毛縛って歩ってる」


 ……でも、違うかも。だって。


「絶対違う! 梓があんなダサい格好してる訳ないじゃないの」

「……だよね。あれは流石にないね」

「そもそも、高校生じゃないって! 子連れじゃないの」


 その人は、この通りを右へ真っ直ぐ行ったところにあるスーパーの袋を両手に1つずつ持って歩いていた。パーカーにジャージ姿で。

 その両側には、小学生かな? 小さな男の子と女の子がいる。

 あんな「主婦です!」みたいな人、なんで梓だと思ったんだろう? 違うに決まってるじゃん。

 梓は、もっとおしゃれさんだもん。


「確かにぃ。次は、梓連れてこようね」

「そうだね、梓もマリと一緒で甘党だから」

「私、今日宿題見せてもらったから奢らないと」

「また宿題忘れたの!? この劣等生!」

「しょうがないじゃん、忘れちゃうんだから」


 私は、その人の後ろ姿から目を離すと、店内で接客しているイケメン店員さんをガラス越しに見つめる。


 はあ、やっぱりイケメン!


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