鈴木家は私が守る〜みんなの証言〜

授業終わりのチャイムは猛ダッシュする合図



 キーンコーン、カーンコーン。


「では、今日はここまで。宿題は来週月曜までに先生のところに持ってくること」


 やっと、チャイムの音が鳴った。この音をどれだけ待ち望んだか、言葉では言い表せないわ。


 5限目は、退屈な現国の授業だった。

 ただでさえ嫌いな学科なのに、先生の話が長いこと長いこと! さっきそれ聞きましたって話を何度も繰り返すんだもの。さらに嫌いになりそうだわ。


 私は、背伸びをしてその退屈さを払い退けると、急いで帰りの支度に取り掛かる。今日は、担任が午後から出張らしく、HRがないんだ。

 すると、


「梓ー。さっき、お昼に話したお店なんだけど」

「あー、ごめん。今日早く帰らないと」


 早速マリたちが話しかけてきた。

 お昼に、新しくできたタピオカ屋さんの話をしていたけど、そのことかな?


「またあ?」

「ごめんごめん。後で行った感想聞かせてよ。美味しかったら行く」

「わかったよ! また今度ね」

「うん、また今度」


 行けない理由?

 一々言わないわよ。だって、聞かれてないし。言ったところで、場がしらけるだけ。


 マリは、こうやって断ってもまた誘ってくれるんだ。ありがたいよね。


 私は、マリたちに手を振りながら猛スピードで帰り支度の続きをした。

 今日は、宿題が多いので持ち帰るものも多い。本当、嫌になるわ。慢性的な肩凝りになったら訴えてやるんだから!


「……よし」


 私は、再度持ち帰る荷物を確認して、そのまま駆け足で教室を後にした。

 その背中からは、マリたちの楽しそうな声が聞こえてくる……。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る