第10話【その後】ベッドとエピローグ



ワサ様については結論から言うと特に命に別状はありませんでした。魔力の使いすぎで気絶しただけだそうです。救護室のベッドに寝かせたら30分ほどで目覚めましたし。

医者によると今日は念のため安静にしておくようにとのことでしたのでベッドの上で退屈そうに果物を要求しております。

「オーちゃん!りんごちょーだい♡。」

「今切ってますから待っててください。」

「しっかし、引き分けに持ち込まれるとはフゥちゃんも中々やるわね。これは何か考えないといけないわね。」

「とりあえず今はお休みください。リンゴどうぞ。」

「オーちゃんの切ったリンゴ美味しいから好きよ♡。」

全く。この主人は変なところが抜けていると言うか、ちょっと変わっていると言うか、、、そういうところが好きなんですけどね。

「そういえばフゥちゃんどうなったの?死んではいないと思うけど。」

それを聞くか。仕方ない。ここは真実を話すしかない。

「いいですかワサ様。落ち着いて聞いてください。フゥ様は、、、その、、、。」

「なんか勝手に死んだことにしないで欲しいのです!!」

横から大声でツッコミが入る。

「オッツェンさんそんなキャラじゃないと思うんですけど!?ぼくってそんなにいじられキャラですか!?」

「「「そうだよ(ですよ)(ですね)。」」」

「3人揃ってなんなのですか!?」

そう、救護室の隣のベッド、、、具体的には一枚のカーテンを挟んだ隣にフゥ様とフィーラさんはいた。向こうもおんなじ状況らしい。

「フゥ様、いじられキャラなのはそのようにすぐ向きになるところとか口調とか、、」

「今マジレスはいいのですよフィーラ!怪我人になんたる仕打ちなのですよ!」

「そうは言ってもフゥちゃん可愛いからついつい、、ね♡。」

「そう言うお前は何なのですか!?あんなに煽ってきて首絞めた割に可愛い可愛いって言ってることとやってることが正反対じゃないですか???」

「可愛いのは事実だから。あれはちょっといたずらしたくなっただけよ。首絞めたのは、、その、、あの、、、ごめんなさい。」

おっ、ちゃんと謝りましたね。怒った甲斐があったと言うものです。

「まあ、いいのですよ。ひとつ聞きたいことがあります。」

「私もフゥちゃんに聞こうと思ってたことがあるわ。」

「せーので一斉に言うとかどうです?」

「いいわね。じゃあいくわよ?せーの。」


「同じ世界出身だったりするのです?」

「フゥちゃんのスリーサイズ教えて?」


・・・何を言っているのだろう。完全に空気が凍ってしまってます。同じ世界という言い方もよくわかりませんがワサ様は何を聞いているのでしょうか?

「はぁぁぁ!!??何でお前に言わないといけないのですか!?ていうか聞くことそっちですか?」

「そっちはどうでもいいじゃない?今生きてるのはこの世界。私はワサであなたはフゥちゃん。これ以上の物はいらないでしょ?」

「うっ。まあ、たしかに今はフゥですけど、、」

「そんなことよりスリーサイズ教えて?今度お揃いのパジャマ作るからまた一緒に寝ましょ?」

「な、何で教え、、ってまた?一緒に寝たことありましたっけ?」

あ、失言。

「フゥ様。ワサ様はフゥ様の巫女就任の日から3日おき位で添い寝してましたよ?」

フィーラさんもぶっちゃけちゃいましたよ。いいんですか?

「え?フィーラ?もう一回言ってもらっていいですか?耳がよく聞こえなくて?」

「ワサ様はフゥ様の巫女就任の日から3日おき位で添い寝してましたよ?オッツェンさんもよく見張りとしてきていらっしゃいましたし。」

こっちに振られた!

「ま、まあ、、それくらいで行ってましたね。ハイ。」

「え?つまりボクは敵国のトップと添い寝してしかもフィーラ公認?どういうこと?え?」

「なんかキャパシティオーバーしちゃってますけどワサ様はどうなさるおつも、り、で、、?」

そう突っ込んだ瞬間、ワサ様がフゥ様のベッドに潜り込んでフゥ様に抱きつきました。

「何するのです!?離すのです!!」

「フゥちゃん男の子だったでしょ?だから女の子にしようと思って?」

「な、何言っているのです?ちょ、そこは、ああっ♡。」

「ワサ様。あとはお願いします。淑女としてのなんたるかを教えてあげてください。」

「わかったわ!さあ、フゥちゃん!」

「え、ちょ、ま、」

「では我々はここで。オッツェンさん、いきましょう。」

「え、止めなくていいんですか、フィーラさん?」

「オーちゃんは一旦ホテル戻って片付けして頂戴。明日すぐ帰れるようにね。心配はいらないわ。」

「あ、はいそれでは。明日朝にお迎えにあがります。」

そう言ってフィーラさんといそいそと部屋を出ます。これ以上ここにいてはいけないと本能が伝えてきます。

「じゃあよろしく〜。さて、フゥちゃん。いくわよ〜♡。まずは、、、」

「あ、ちょ、ダメ!ダメ!」

なんか聞こえてはいけない言葉が聞こえて気がしますがスルーしましょう。近づいてはいけない。

「一応人払いはしてありますので大丈夫ですよ。ではこれで。また会いましょう。」

「あ、はい。それでは。」

そう言って私はホテルの片付けに向かいます。何か後ろで聞こえてきますが木のせいでしょう。気のせい気のせい。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


この『演舞戦争』後、水の巫女は年齢を理由に引退。引退後の巫女とメイドの姿を見た者は誰もいない。

炎の巫女はこの戦争後、振る舞いが女の子らしくなったと評判となった。それから長い間巫女を務めるものの引退。引退後の姿を見た者は誰もいない。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


炎の国と水の国の国境近くの辺境。そこには1つの小さな家がある。


「おはようござ、、、またボクに抱きついてますねこいつ!」

「う〜〜ん。おはよう、、ふぅちゃん。早いわねぇ。」

「きゃっ!変なところ触らないでください!」


そこには長い赤い髪を持つ少女と短めの青い髪の少女、そして彼女らの従者が住んでいる。


「フゥ様、ワサ様。朝食ができました。フィーラさんがお待ちですよ?」

「わかったわ〜オーちゃん。今いくわ。ほら、フゥちゃん。いくわよっっと。」

「あ、ちょ、持ち上げるな、、変なところ触るななのです!」


付近の村々では2柱の女神とその眷属たちが住むと言われている。


「はい、揃いましたね。それでは「「「「いただきます。」」」」


情報が残っていないためその少女たちの正体ば誰もわからないが、彼女たちは幸せに暮らしている。


「あ、ちょっと!取らないで欲しいのですよ!」

「いいじゃないですか。まだまだたくさんあるんですから。」

「オーちゃんもフゥちゃんとすっかり打ち解けたわね。あ、この最後のおかずもーらい。」

「あ、ワサ様に取られた!じゃあ、そのかわりにこっちもらいますよ。」


いつまでも、いつまでも。



【fin.】

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炎と水が交わるとき 珀露 @hacro_ambre

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