ノンストップ・ノンステップバス
架橋 椋香
ノンストップ・ノンステップバス
それでもやっぱり、夜のバスというのは怖いもののようだ。バスのなかにいるのは、少し声高の男性の運転手さんと、ブラウンのコートを着て口髭をたくわえた
バスが停車した。高校生くらいの男の人がひとり、乗ってくる。わたしのひとつ前の座席に座った。彼はわたしに振り向いて言う。
「ずっと、あなたを探してました」
「ええっと、ど、どなたですか?」
「昔あなたに一目惚れして、それから募るあなたへの思いを伝えられず、一時期あなたを殺そうとまで考えていたけれど、結局自分で死んでしまった者です。ブラックホールみたいな」
「つまり、あなたも……」
「ええ、幽霊、ということになりますね。未練ばかりなんで」
彼はははっと言って笑った。わたしはあまり笑えなかった。こいつは好きなタイプじゃない。けど。すごく。
「すごく、嬉しいです。殺そうと思うくらいわたしのことを思ってくれて」
それでも、わたしを殺さないでくれて。
「そんな、よくないですよ。僕のこと誉めたって、なにも出てきませんよ」
「誉めてはないです」
「ええっ!!!」
そう言って彼はまた笑う。ははっはっはは。私はやっぱりこいつは好きになれないな、と思った。
ノンストップ・ノンステップバス 架橋 椋香 @mukunokinokaori
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます