★★★ Excellent!!!
それでも、飛行機は飛んでいく。 月船みゆ
かつて起きた大戦の傷跡癒えぬ時代。
世界最強の重戦闘機CaZ-175E-7”サラマンドラ”のパイロットであったユーリは、その操縦能力を生かして航空郵便をしている。
社会的に不適合と取られかねない性格をしている彼が出会うのは、様々な事情を抱えた人々で……。
前作の「サラマンドラ航空郵便社」の続編にあたります。
それが、前作より、よかった。
すくなからず作品を編むものである私も経験がありますが、続編って、微妙な出来が多いじゃないですか。有名どころでいえば……やめておきましょう。
でも今作はちがいます、やはり完成度が高かった前作よりもさらに完成度が高くなっています。
予定調和的ハッピーエンドで終わる作品がほとんどですが、でも、「わあ、やっぱりハッピーエンドでよかった!」という類いの単純な感情は抱きません。
作者自身の戦闘機に対する知識の深さと物語性が深く融合して、人の様々な感情の機微を万華鏡のように示しているのが、作品の完成度をより高めています。なので、心に一筋の光が差したような、そんな終わり方を迎えるのです。
ハードボイルドな人間関係の書き方も素敵です。
主人公たちはお節介ではなく、単に仕事をしているだけ。その一線は超えません。でも、その冷たさが、どれだけ、傷ついた人の心を後押しするか。
その書き方が見事だと感じました。
文章も非常に巧みです。がっつり読書したい方におすすめの作品です。