第2話

 それは8月終わり、嫌になるほど暑い夜。貴重な高校三年の夏休みが、受験勉強一色で終わろうとしている。勉強しないといけないのは分かるけれど、それだけで夏を終わらせたくなかった。一度しかないこの夏に、特別で楽しい思い出が一つくらいあってもいいじゃないだろうか。受験の神様はそれぐらい笑って許してくれるさ。


 さて、問題は何をするかだった。旅行に行くには時間もお金も足りないが、かといって近場で思い出を作れそうな場所も思いつかなかった。今年は夏祭りも花火大会も中止だからだ。突然未知のウイルスが流行りだしたわけじゃなく、開催場所が使えなくなるくらいの豪雨のせいらしい。

「懐かしいなぁ、二人で回った夏祭り。途中でお小遣いがなくなったから二人で半分こしてかき氷をたべたんだっけな............。」

きっと、もう一緒に行くことはもうないであろう夏祭りのことを考えながら、最後の思い出に二人で食べたいものが決まった。

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夏と、特別。 灯鈴 @hisuzu0022

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