マルチバッドエンドゲー『NEEDY GIRL OVERDOSE』に見るリアル

 漫画家系Vチューバー犬山たまきさんが


『NEEDY GIRL OVERDOSE』


 をプレイした。


「一ヶ月でフォロワー100万いくこと」

 が、ゲームの目的だ。


 犬山さんは、40万人までしかフォロワーが付かずににバッド・エンド。

「神配信者にしてくれるって言ったのに、嘘つき」

 と罵倒されて終わるエンドだった。


 犬山さんは

「嘘つきはテメエだろうがこのメンヘラクソ女が!」

 とブチギレ。


「このゲーム、ひと月以内に100万フォロワーにならんと無能呼ばわりされるよ」

 というコメントを受けて、犬山たまきさんは

「クソが! 優しくしていたらつけあがりやがって!」

 と吠えていた。

「一ヶ月で10イケばいいほうだぞ! 40万いくってマジで才能あるんだぞ! ボクはいつも本気で演者と向き合っているんだ!」

 とブチギレ。

 しかし、3時間夢中になりすぎてあっという間に終わって「神ゲー」と言っていた。


 ただし、プレイ内容までは教えないでおく。

 ちなみに40万フォロワーは、シスター・クレアさんのプレイ結果と同じ。



 本作のプレイ動画を見まくって、

「このゲームには、二つのリアルがある」

 ことがわかった。


・「短時間」で「実現不可能な程のデカイ目標」を立てるやつは、「ほぼ確実に失敗する」か、「成功しても病む」。

 

 メンタリストDaiGoさんの動画によると、

「デカイ目標を立てる人の特徴は、できないと、はじめから分かっている」

 ことらしい。

 できもしない目標を立てて、失敗していい言い訳を考えているそうな。

 

 短期目標を立てるなら、「実現可能よりちょっとむずかしいレベル」で達成し続けるといいという。


 オレも禁煙外来を利用していたときは、「三ヶ月」と考えず、「一週間を、13回繰り返すだけ」と考えた。

「一週間我慢できた。オレエライ!」

 と、自身を鼓舞していた。


・「普通に生きることが幸せになるわけではない」人種は、確実にいる。


 本作の特徴は、マルチバッドエンドだ。

 つまり、どうあがいても絶望しか待っていない。

 本作の真の目的は、バッドエンド集めなのである。


 実は、全方位的バッドエンドというのはかなり扱いづらい。

 みんな書くんだけど、その分、良作に恵まれない。

 小説講座でも死ぬほど読んだ。

 が、バッド系はやっぱり「感情をかなり動かさないとシラケてしまう」のだ。

「虚無感・閉塞感ばっかを主張してくる」作品ばかりなんよね。


 たいてい

 主人公に魅力がない。

 感情がないロボット的な人なので、あがこうとしない。

 つまり、出来事はあるのにお話が動いてない。主人公の感情が動かない。

 そんな作品ばかりだった。

 

 犬山たまきさんだって、このゲームにおいては

「ゲーム自体はめちゃおもろい」

 と言っていた。 


「裏で全エンドみたい」

「こんなにイラついたのは久々」

「こんだけ感情が動くってことは神ゲー」


 と、絶賛していた。


「感情を動かすことが、どれだけフィクションにおいて大事か」を、知ることができる。

 本ゲームは

「一ヶ月以内に家賃を払わないと家を追い出される」

 状態で、最初から詰んでいる。

「堕ちるしかない」のだ。

 その中で、「フォロワー増やさないと!」と論理が飛躍している。

 さらに詰んでいるのだ。

 常識がないから。常識から逃げているから。


 その中で「彼女がいかにあがくか」を観察するゲームなのである。

 だからイラつくし、感情も揺さぶられる。



 Vチューバーランキング1位の兎田ぺこらさんは、このゲームをプレイして、

「こいつは有名になりたいだけなのか?」

「配信を楽しんでない」

「自分がやっていることを楽しいと思えないのは、辛いだけ」

 と、あめちゃんの活動を辛辣に全否定していた。 



 本ゲームは、

「絶望に落ちきっている人間に手をのばす」たぐいのゲームではない。

「どうやって堕ちるかを楽しむ」ゲームだと言えよう。


 そう考えると、このゲームの作者は、いい意味でかなり性格が悪い。

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