「『save the catの法則』を取り入れろ」の、ほんとうの意味

 ヒットする小説を書く法則として、


「『save the catの法則』を取り入れろ」


 という意見をよく聞く。



 ただ、意味を履き違えると完全に間違った作品を仕上げてしまう。


 これなあ、オレは完全に意味を取り違えて解釈していた。


 てっきり「save the catの法則」って

「ブレイク・スナイダー・ビート・シート」

 が大事なんだと思っていた。


 しかし、なろうの攻略などを見ていると、なんか反応が違う。

「話に緩急は必要だが、主人公をピンチにする必要はない」

 とか書いてある。


 敵対者をピンチにしたら「ざまあ」だし。

 


「何が違うんだろう?」と、長年思っていた。


 で、他の人の作品を読んで、ようやくオレは意味を間違えてとらえていたと知る。


「ああ、大事なのは『猫を救え』ってことか!」


 と、人の作品を読んで理解できたのだ。


 これは本家に載っていて、「猫を救うことが大事なんだ!」と力説している。


 ひとことでいうと、「観客に好かれる主人公を作れ」というわけだ。


『アラジン』も、最初はパン泥棒として描かれている。

 だが、貧しい子どもに盗んだパンを与えるのだ。


 読者の中には、「好感が持てる相手なんて!」と拒絶反応を示す人もいるだろう。

 そんな人にはこういった手法もある。


『パルプ・フィクション』の主人公は、殺し屋である。

 彼らに好感をもってもらうため、タランティーノ監督が行った処置は、

「彼らを冷酷な殺し屋ではなく、無邪気なマヌケに仕立て上げること」

 だった。

 トラボルタがサミュエル・L・ジャクソンとハンバーガー屋で食事をする冒頭で、

「ボスは奥さんの足をマッサージしただけで、半殺しにされた」 

 と語る。


 これにより、

「自分が悪いやつなら、相手をもっと悪いやつに仕立てる」

 ことに成功している、と説明がある。

 客が気に入る相手と、嫌う相手のバランスが取れると。


 これは、「ざまぁ」パターンでも使えそうではないか?

 実際に使っているのでは?



 完全に、やらかしていた。


 このやらかしには、理由がある。


 実はオレは、二作目の『save the catの法則を使い倒す』から読んでいた。


 そのせいで、


「ブレイク・スナイダー・ビート・シート」

「10のストーリーパターン」 


 の説明「しか読んでいなかった」のである。


 大事なのは、「猫を救え!」の方だったのだ。



 どれだけビートシートを暗記して構成を学ぼうと、どれだけストーリーパターンを会得しても、

「猫を救っていない」

 と、相手にもされない。


「自分より立場が弱い人を、自分もぼろぼろなのに救う」

 という展開がなければ、誰からも見向きもされないのである。

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