オレは「プロ作家」という立場がほしいだけかも知れない

『僕たちは就職しなくてもいいのかもしれない』という本を読んでいる。


 そこの章に、

「正社員も結婚も、ほしいのは立場」


 という項目がある。


 著者の岡田斗司夫さんは、五〇の仕事をこなしているという。

 ときには生徒の相談に乗るなど、お金にならない仕事もしているとか。

 それは、他社から感謝されたほうが目先の稼ぎより勝ちがあると考えているからだという。


「今はハイパー情報化社会で、貨幣経済が終わりを告げて『評価経済』の時代が来る」

 と本書には書かれている。

 

 人々はお金を稼げなくなることも恐れているが、なにより

「立場を失うことを恐れている」

 とのこと。


 今でも「正社員」のほうが有利と言われている。

「結婚している方がリア充」

 とも言われる。

 世間から認められたいのだと。


 これは江戸時代にも言えて、「身分なんてなくなればいい」と考えていたのは坂本龍馬くらい。

 他の人は、そんなことをされたら立場を失って路頭に迷うと考えていた。


 また、世間では「やりたいこと」は未だに「食うための手段」と思われている。


 オレも実際そう思っていて、「プロ作家」になることはその手段だと思っている自分がどこかにいる。


 その昔『ピューと吹く!ジャガー』ってマンガで、ジャガーさんがギターを始めた主人公に

「お前は音楽が好きなわけじゃない。ミュージシャンになりたいだけだ」

 と正論パンチを浴びせるシーンがある。


 未だにオレは、その幻想にとらわれているのでは、と毎日思っている。


 しかし、本書では

「やりたいことと食べていくことがリンクしない時代が、いつか到来する」

 と語っている。


「雇われる」という時代が、「参加する」という言葉に変わる、と。

「働く、稼ぐ」は「手伝う」に取って代わると。


 2012年には、大学生ブロガーがネットで奨学金を集めるという活動が行われたという。

 大学の学費を払うのは親の役割だったものが、親に頼らず他人を巻き込んだのである。

 将来への期待値、つまり「評価」を、他人が金で買ったのである。


 これは、

「立場という言葉がなくなっていき、評価経済になっていく兆しなのでは」

 と本書は言う。


 今年最後になって、すごく考えさせられる本を読んだ。

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