17.それは少し、夢の中の甘い時間 【2016年GPファイナル】

 2016年フィギュアスケートGPファイナル 開催;フランス、マルセイユ

 

 ●男子シングル出場選手

 1位通過 神原出雲 日本(カナダ大会優勝、日本大会優勝)

 2位通過 アンドレイ・ヴォルコフ ロシア(中国大会優勝、ロシア大会優勝)

 3位通過 チャン・ロン 中国 (スケートアメリカ優勝、フランス大会優勝)

 4位通過 鮎川哲也 日本(スケートアメリカ2位、ロシア大会2位)

 5位通過 ジェイミー・アーランドソン アメリカ(スケートアメリカ3位、中国杯2位)

 6位通過 フィリップ・ミルナー フランス(フランス大会4位、日本大会2位)


 補欠:キリル・ニキーチン ロシア(中国大会3位、ロシア大会3位)

 補欠2:アーサー・コランスキー カナダ (スケートアメリカ4位、フランス大会3位)

 


 ○女子シングル出場選手

 1位通過 エレーナ・マカロワ ロシア(ロシア大会優勝、日本大会優勝)

 2位通過 マリーアンヌ・ディデュエール フランス (フランス大会優勝、カナダ大会優勝)

 3位通過 安川杏奈 日本 (スケートアメリカ優勝、日本大会3位)

 4位通過 里村理沙 日本 (中国大会2位、日本大会2位)

 5位通過 ステイシー・マクレア カナダ(カナダ大会2位、フランス大会2位)

 6位通過 ジョアンナ・クローン アメリカ(スケートアメリカ4位、中国大会優勝)


 補欠;ジェシカ・シンプソン アメリカ (アメリカ大会2位、ロシア大会4位)

 補欠2;エフゲーニャ・リピンツカヤ ベラルーシ (カナダ大会4位、ロシア大会2位)

 


 ✳︎

 


 12月第二週、金曜日。


 シーズンが始まると大体、学校は2時で切り上げてリンクに直行している。ウォーミングアップをして3時から午後練をスタート。日によってだが、夜まで練習するときだってある。


 ただ。今日は練習をすればいいと言うだけではなかった。


 カメラを持つ人。レコーダーとマイクを持ったリポーター。テレビ局のディレクターらしき人が、一人。私の滑りを見たり、練習風景を撮ったりしている。トリプルアクセル飛んで、というリポーターの声にも応えたりする。

 一通り練習風景を見せた後、待っていたのはインタビュー。


 まさかのテレビ局からの取材。


「今ファイナルの真っ最中ですが、改めてご自身、どう思われますか?」

「フランスで三位になった時点で、ファイナル出場は難しいと思っていました。逆に全日本に向けて調整ができると思ったので、早めに切り替えられてよかったですね」

「さて、星崎選手といえば、ダイナミックなジャンプですが、代名詞のトリプルアクセルが今季ものすごく安定していますね。ファイナルは逃したものの、二大会連続表彰台と、成績も残しています。強さの秘訣はやはりトリプルアクセルでしょうか」


 出来ればトリプルアクセル以外も見て欲しい、と思うのだが。そうですね、とにこやかに答える。それに、二大会連続表彰台ではなく、三大会連続表彰台だ。ネーベルホルンを入れてあげてくれ。


「やはり世界の壁は厚いので、トリプルアクセルだけでは戦えないなと実感しています。他の技も磨いていきたいと思っています」

「最後に、全日本に向けて抱負を教えてください」

「はい。去年は5位だったので、今年はそれよりもいい結果を目指したいです」

「表彰台に上がれば、世界選手権の代表も見えてくると思いますが」

「……皆さんのご期待に添えるように、頑張ります」

「では星崎選手、本日はありがとうございました」

「いえ、こちらこそありがとうございました」


 テレビ局の方々に挨拶をする。彼らが帰った後、大きくため息をつく。……やっぱりこういう取材やインタビューは苦手だ。小さかった頃、ノービスの大会に出ただけで注目された記憶を思い出す。過剰な期待と悪意は紙一重だ。


 私はリンクの壁掛け時計を見やった。午後4時。ようやく普通の練習ができる。

 マルセイユではシリーズを勝ち抜いた選手たちが、火花を散らしている。フランスでは今は深夜だから、就寝して疲れを取っている頃だろう。


 ……いろんな思いを振り払って、私は氷上に上がった。最近怪しくなってきたフリップのエッジの見直しが、フリーの振り付けの見直しが待っている。

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