二人は最適解の検証に協力する

 車両時事故で奇跡的に無傷で生き残ったユウトとアヤナ。

 半日ほど精密検査の後、帰宅する。


 アヤナのスマホにユウトからの着歴が残っていた。

 パスコードがわからないので、生体認証で解除する。


 ユウトからのメッセージを確認すると、そこには、

<キリオカへ、戻ったら電話ちょうだい>

 と書かれていた。


 アヤナは、ユウトへ電話をかける。

 数コールでユウトがでる。


 ユウトが言う。

<キリオカだよね? ボクはキタシロ>


 アヤナが言う。

<うん。俺はキリオカ。やっぱり入れ替わってたんだ>


 ユウトが言う。

<いまからそっち行ってもいい?

 どうせ一人でしょ?>


 アヤナが言う。

<うん、両親ともすぐ仕事にでちゃったよ。

 数日は戻れないってさ>


 ユウトが言う。

<わかった、すぐ行く>


 アヤナは部屋を見回す。

 中性的で清楚な部屋だった。

 とくに、書籍やDVDなどが男性向けの物しかなかったので、ぱっと見、男性の部屋に見えるくらいだ。


 ピンポーン……


 玄関のチャイムが鳴る。


 ユウトだった。


 ユウトはたくさんの荷物を持って、タクシーで急行したのだ。


 アヤナが言う。

「すごい荷物だね?」


 ユウトが言う。

「部屋に入るね」


 そう言うと、段ボールを数箱運び込み、中から、書籍やDVDを段ボールから出し、アヤネの部屋の物と交換し始めた。

 

 アヤナが言う。

「え? いきなり何やってるの?」


 ユウトが言う。

「キタシロに借りてた荷物をもってきた。

 なんか、女子の部屋っぽくて落ち着かないからね。

 ボクの荷物は回収させてもらうから」


 アヤナが言う。

「それ、俺のじゃん」


 ユウトが言う。

「キタシロのだよ、もとに戻したがってたじゃん」


 アヤナが言う。

「そうだけど……。まあいいか」


 ユウトが言う。

「あ、お茶入れてよ、キッチンに行けばわかると思う」


 アヤナが言う。

「え? うん、わかった」


 お茶を入れて、部屋に戻ると、すっかり、荷物の交換が済んでいた。


 アヤナは、テーブルにお茶をおく。


 ユウトが言う。

「ありがと、キタシロ。いただくね」


 アヤナが言う。

「うん、どうぞ」


 ユウトは嬉しそうにお茶を飲む。


 ユウトが言う。

「そうだ、情報交換しよ」


 そう言うと、A4の紙をアヤナに差し出した。


 アヤナが言う。

「これなに?」


 ユウトが言う。

「パスワードとか注意点とか。

 似たの作ってボクにも頂戴?」


 アヤナが言う。

「あ、そっか、困るよね。

 わかった。

 でも、俺のパソコンに保存してあるんだよね……」


 ユウトが言う。

「大丈夫、持ってきたから」


 ユウトはそう言うと、大きな段ボールから、ユウトのパソコンを一式取り出し、テーブルに設置し始めた。



 ユウトが言う。

「ログインパスワードおしえて?」

 ユウトは、ユウトのパソコンの電源を入れると嬉しそうに言う。


 アヤナはユウトに教えた。


 ユウトが言う。

「どのファイル?」


 アヤナが言う。

「えっと、ここのこれ、一通りまとめてあるよ」


 ユウトが言う。

「ありがと。

 それじゃさ、ちょっとプレイしない?

 アカウントは元の自分の使って」


 アヤナが言う。

「いまから?」


 ユウトが言う。

「うん」


 アヤナが言う。

「わかった」

 

 アヤナは自分のパソコンを起動させ、ユウトにもらった紙を見ながらログインする。


 2時間ほど元の自分のアカウントでゲームを楽しんだ。

 アヤナは日常が戻ってきた感覚がした。


 ユウトが言う。

「これからはさ、ボイスチャットと使おうか?」


 そう言うと、ユウトは、アヤナのパソコンにボイスチャットの環境を設定した。


 ユウトが言う。

「ボイスチャットでも、ちゃんと女子やってね?

 てか、日常生活でもちゃんと女子やること」


 アヤナが言う。

「……うん。

 でも、なんか、キタシロはすごいね、すぐ慣れちゃった感じで」


 ユウトが言う。

「ボクはキリオカだよ」


 アヤナが言う。

「あ、そうだったごめん」


 ユウトが言う。

「そうだ、下の名前で呼び合わない?」


 アヤナが言う。

「え?」


 ユウトが言う。

「いや?」


 アヤナが言う。

「うれしいけど」


 ユウトが言う。

「じゃ、そうしよ?

 できれば付き合いたい」


 アヤナが言う。

「ちょっと、なに言ってるの?」


 ユウトが言う。

「だってお互いの事情を一番知り合ってるし。

 好きな男子でもいるなら別だけど」


 アヤナが言う。

「いるわけないじゃん。そうだね、そうしてもらえるとありがたい」


 ユウトが言う。

「じゃ、決まり、今からアヤナはボクの彼女ね」


 アヤナが言う。

「うん。よろしく……ユウト」


 ユウトはアヤナの家に泊まり込み、アヤナに女性としての常識的なことをレクチャーしてから、帰宅した。


 ユウトが言う。

「じゃ、学校で会おうね、アヤナ」


 アヤナが言う。

「うんまたね、ユウト」



 ユウトは、学校でも気にせず、アヤナと行動を共にして、彼氏として振る舞った。

 アヤナはとまどったが、やがてそれが当たり前のように心地よくなりはじめた。


 学校でも、ゲーム内でも、ユウトはユウトとして振る舞い、アヤナはアヤナとして振る舞った。

 

 気がつけば、灰色だった学生生活がいろどりで満たされていた。

 


 ……



 夢の中、女神が二人の前に立っていた。


 「ご協力ありがとうございました。

  大変有益な情報をえることができました

  ゴエティアでも、末長くお幸せに……」

 

 

 ……



 二人は、微睡まどろみから覚醒する。


 アヤナが言う。

「なんか、すごい夢見たんだけど……」


 ユウトが言う。

「ボクは、素敵な夢をみたよ?」


 アヤナが言う。

「私とユウトが事故で生き残って入れ替わる夢だった」


 ユウトが言う。

「ボクもそう、夢が叶って嬉しかった」


 アヤナが言う。

「そっか、そうだよね。私も最終的には嬉しかったし」


 ユウトがアヤナを抱き寄せてキスをする。


 ユウトが言う。

「でも、今の方がもっと幸せだよ」


 二人はいつもよりたくさん愛し合った。


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