第17話 またまた、今はいつ?
「さあ〜〜て、さて」と、オババ、なんか嬉しそう。
「嬉しそうですね」
「いや、今回は何年に送られたかと思うとな。道端で捨てられて、
「何年って、そもそも、捨てられたって。あれはですね、オババさま……。オババが明智光秀の尻をけっとばすという暴挙に及んだからで。あんなことしなけりゃ、今頃、光秀の側室として贅沢三昧」
「え?」っと、転がっていたマサが青ざめた。
「オカカ、蹴っ飛ばすって、お、お、お殿、お、うんにゃあ、あ、Q;Xxっxと」
マサだって、びっくりして言葉になってない。
そうなのだ。この姑、あろうことか、織田信長に向かって光秀を蹴り飛ばしたんだ。なんてことしてくれた。おかげでゲームでいえば、また『最初に戻る』じゃないか。
オババ、チチチって顔してる。
「つまらん、
「どういう意味ですか」
「
「現代って、普通の庶民でしたが、なにかっ」
「それが
「ま、そりゃ、イタリアンとか食べれませんけど。フレンチとかも。中華料理も、ああ、カレー味ポテトチップス食べたい」
「あんたはカレー味ポテチ派かっ」
そこ、今、そこ?
「庶民レベルなら、まずい雑穀米の
「オババ、いまは歴史上、何年でしょうね」
「しれっと、話題を変えたな。で、そこに尻餅ついてる、マサ」
目をギョロつかせて床にすわりこんでるマサ。ボサボサの頭をかいていた。
「あ、あの、またまた、おかしくなったんかぁ。オカカ」
「ま、そういうことだ。今はいつだ」
「それや。また、それや。何年か前に聞いたことあるんやが。そして、そういうこと言い出すと、ふたりとも消えて、金もって帰ってくるや」
「そうか、前も金を持ってきたか」
「金、なかったけんやが、えれえ立派な金のかかる着物を着てたやろ。それ売って、随分と」
「ほお、それは良かったな、マサ。で、それから、何回、冬がきた」
「さ、3回」
「季節は?」
「春」
「ゲッ」
思わず、私は叫んでいた。
「オババ、こりゃ、まずい」
「どうした」
「前は1579年、それから3年といえば……、アワアワアワ」
「泡吹いてる場合か、普通に足し算すればいいだけだろう。1582年だ」
「いや、アワアワ、そっちじゃない」
「だから、なんの、アワアワ」
「1582年春と言えば!」
「春だ!」
「ちゃうわ。ほ、ほ、ほん」
「ホンジャマカ」
オババ、古ッ!
「名前が出てこない……。あの有名な寺、ほら、信長といえば。あの寺、ほら、あの、あの」
「比叡山!」と、マサ。
「マサ、ここで参加するな! ややこしい」
「わかった、アメ。あまりに有名な寺の話だな」
「そ、そう、ここまで、喉のここまで名前が出てるんですが、なんか、急に忘れて」
「で、どこだ」
「だから、ここで信長が討ち取られる」
「え?」って、マサ。
「ああ、もう、ややこしい。マサ、家に帰れ。シッシッ」
「あ、あの、また帰ってくるんやで」
「たぶんな。マサ」
「ふんじゃあ。金、待ってくるんやで」
「いつからジゴロになった」
「いや、オラ、マサだよ。二郎じゃないやろ」
そう、1582年春といえば、もう『本能寺の変』目前。あの、徳川三代将軍家光が心のなかに入った光秀。ここまで、うまく乗り越えてきたんだろうか。
「オババさま」
「なんだ改まって」
「私たちが、現代で休息することもなく、この時代にいきなり3年超えたということは」
「ことは?」
「ことは、おそらく、本能寺。まともに歴史上で行われない可能性が」
「おいおいおい。我らのような庶民の女子ふたりに、そんな大層な歴史的事実を守れと」
「おそらく、あのアンニュイ家光秀、
「ありうる」
「まずいです」
「行きましょう」
「で、どこに」
「ま、まずは。食料確保の道から」
オババ、私を見て笑った。
「歴史を戻そうというわりには、せこい目的だな」
「腹が減ってはイクサはできぬ、でござります」
第二部完
第三部につづく
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