第16話 掘っ建て小屋での目覚め。またですか。


 翌朝、目覚めると……、

 坂本城から蹴り飛ばされて、昨夜は、そのまま村に戻ろうと歩いたけど遠くて、野営するしかなかったのだ。


 ん?


 目が覚めたが、まぶたを開ける前に異変を感じた。


 ん? んんんんん?


 ベッドだ。ベッドに寝ている。

 それもシーツが気持ちいい。絹のシーツのベッド。


 どういうことだ。

 片目を開いてみた。


 いやいやいや。


 ベッドの上じゃなかった。自分までだますようになったらおしまいだ。いや、そう、これは夢だ。いや、もう夢であってほしい。絹のシーツのベッド、現代でも憧れてて。


 でも、実際は背中も痛いし、このスプリングもない直寝の床。なんでベッドだと思った、絹のシーツとか妄想した。自宅のベッド、絹のシーツだと思わせたいのか、ちがうから、自宅ならコットンシーツ。実にわかりやすい、見栄をはったんかい。


 それにしても、

 いやいやいや……。


 片目を開けた。天井に古びた木の梁があり、寝返ると何かに当たった。


 あれ?


 昨日はオババと野宿したはず。

 このひなびたを通りこした壊れかけの廃屋。


 

 これ、どういうこと?

 また、あの最初のスタートラインってこと。


 いや、坂本城から放り出されて、野宿だったはずなのに、ここって、まさかのまさかのまさか?


 だよね?

 きっと。


 今回は現代に戻ることも省いて、さらなる意識の入れ替わり。3回目ともなりゃ、もう勝手知ったるやつだ。


 これは、もうね、またかって、ため息つくしかない。



 だから、両目を開けて、「オババ!」って叫んだ。


 どうせ、オババも意識が入れ替わっているはずだ。

 でね。オババと叫んだ瞬間、


「おマチ〜〜〜」って、オババの代わりにいきなり若い男がのしかかってきたんだ。


 これは、すでに完全なるお約束の展開。前回の文章、コピー&ペイストして、書いてる作者も楽するテンプレ展開。



 またか。また夜這よばいいで物語をリセットする気かい。

 そして、前に見たときより、若者、さらに成長してた。あの時は、まだ少年で兵に出ると言ってたマサだ。前回は若者になってて、今回、まだ若者。ていうことは、数年くらいしかすぎてないんだな。


「おマチ〜!」

「何してるの」

「何って、そりゃ、オラ、あんたの婿むこやから」


 私は男の下半身に、渾身こんしんの蹴りを入れて立ち上がった。

 うっくと言ったまま、マサは目をいて土間に転がり落ち悶絶もんぜつしてる。


 さあ、こっからの展開は皆様もおなじみでしょう。


 で、すっとばしていくよ。


 オババはどこよ。

 前回はマサの母親に転移してた。まさか、その母も亡くなった?


「マサ」と、床にうずくまっている3回、私の夫になって、3回蹴り飛ばされた気の毒なマサに聞いた。


「あんたの母親は生きてるかい」

「イテテテ、かってに、オラの母親を死なすなや」

「じゃあ、生きてるんだね」

「ありゃ、殺しても死なね」

「で、どこにいる」


「ここだ!」


 掘っ建て小屋の戸が壊れそうな音を立てて開いた。

 そこには、両足を大の字に広げた、マサの母親、つまりオババが立っていた。


(つづく)

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