第9話 明智光秀のリベンジ
私たちの意識が転移した天正7年(1579年)。
明智光秀にとって、また、その配下にとってもリベンジの年だった。
赤鬼と呼ばれた赤井直正に心を
苦難を経て、明智光秀の戦略が変わった、いや、精神が変わった。
新たにはじめた第2次攻略で、信長の元で学んだものを取り入れた。
大病をわずらい最愛の妻を失っても、光秀の心は落ちなかった。立ち直ったというより
より冷酷に、そして、合理的になったと言うべきか。
辛い試練による明暗、どちらに向かうかは人それぞれ。困難にあって打ちのめされた後の、人としての行動の違いは現代人とて同じだと思うんだ。
それは個人の資質といえば簡単だが、その資質とは生まれもった性格なのか、あるいは、成長期の親の愛情なのか、育てかたなのか。精神医学者だって答えはもっていない。
ともかく、明智光秀は試練において雄々しく立ち上がるタイプではあった。
これまでの光秀像は、どちらかといえば陰険なインテリ。が、史実に残る彼の姿は、つねに雄々しい。
戦場で敵に殺されそうな部下を槍で助けた。
さて、試練を経て人として熟成した彼、第2次丹波攻略では冷静にじっくりと一つ一つ敵の
当時、地方はそれぞれ国として独立していた。丹波地方もまた然り。国司として有力な豪族が、その地を納め戦国大名と契りを結んだり、結ばなかったり、まさしく、
丹波は東方面から京都に向かう要所の地域にある。
いろいろな豪族・国衆がうごめく山のなかに……
うん、アメとオババの嫁姑バディは分け入った。
それでね、マムシとかなんとかね、もう書きたくもないし、思い出したくもない。お察ししとくれ、皆の者。ともかく、亀山城に到着したんだよ。
いや、ひどい旅だった。徒歩で歩き続けた1日。
冬の嵐がきそうな嫌な風の吹くなか、暗くなって到着した私たちは、へろへろになりながら門番に問うた。
「古川九兵衛殿の元へ参った」
門番のひとりがギョロっと目を大きくして上から下まで私たちの姿をチェックした。
「古川殿に何用じゃ」
「織田のお
いや、歩き続けて、やつしすぎだって。
もうね、坂本城で文字通りに門前払いだったからね。亀山城では工夫してみた。とりあえず九兵衛にさえ会えば、その後はなんとかなるって、もう完全に九兵衛頼り。
て、九兵衛、これなに?
名前だけで門番がわかるって、相当、出世したんだ。6年前なら、ガン無視されてたのに。
「で、何を」
「九兵衛さまに直接と」
「そなたら名は」
「アメとお伝えください」
「わかった」と、門番は隣を見て、また私たちを振り返った。
「古川殿はこちらにはおられん」
こら、門番。
爆弾発言はダメだから。現代人って、主に私だけど打たれ弱いんだ。10時間以上もかけて、わけのわからん道を歩いて、途中でマムシも冬眠中を叩きおこして、ここまで来たら、九兵衛がいないだと!
もうね、もうそれを聞いた瞬間、へなへなって膝が笑った。
「その、古川九兵衛殿に直接にと言いつかってきた。どちらにおられるのか」と、一番手のアメがあえなく討ち取られて、オババが前に出た。
門番ふたりは顔を見合わせた。
「しばらく、待たれよ。わかるものを探して参る」
若いほうが年配の指示で中に走った。
おい、若いの、ほんと頼りにしてっから、あんたが思っている以上に祈ってるんだから。
それで、どのくらい待つのだろうか。構内アナウンスもないし、スマホもないし、問い合わせる人を探すの、すべて人力で解決する時代だから。
焚き火がばちばち音を立ててるけど、でも、まったく足りない。
この寒夜に外で待つなんて、ともかく、誰かストーブをくれ。疲れて凍え死にそうなんだ。
(つづく)
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