第4話誕生日会の始まり

本能を抑え込む事に集中していた俺に助け舟が現れた。

ーピンポーン

インターホンを確認すると、デリバリーの兄ちゃんだった。

ルミちゃんは駆け足でピザの受け取りを行なっている。今まさにこの時間に2人が戻ってきたらクラッカーを派手に打ち鳴らす事が出来ない。ルミちゃんからは、そんな焦りを感じていた。

デラックスピザ、海鮮ピザ、ナゲットにフライドポテト、以上でお間違えないですか?

「はい」短く声をあげるルミちゃんをみて、誰彼構わず愛嬌を振りまく人ではないのだと少し安心した。

会計を済ませ無邪気な笑顔でこちらに近づいてきた。

「焦ったー今戻って来たらどうしようかドキドキしてたー」

「うん、知ってた、全身から焦りがでてたよ」ニヤつきながらも続ける

「でも、安心した」

「なにが?」

「シャンとして対応してたから。もっと愛想よくするかと思ってた」

「知り合い以外に愛想よくして、勘違いされても怖いからなるべく淡々としてる」

「そうだね、ルミちゃんの発言に強く肯定します!」


俺の緊張も解れてきたころ外からワイワイと話し声が聞こえて来た。俺とルミちゃんは、お互いに目配りをし、その時を待つ。


ーガチャ

扉を開けるのは間違いなく買い出しに行った2人だ。大きな声で「ただいまー」と明るく帰ってきたふたりに向かって俺たちは初めての共同作業を行う。


ーパンパンパンパン

暗がりから突如鳴り響く聞き慣れた音。

意味も分からず鳴らされたクラッカーに悲鳴をあげる元彼女。

急いで灯りを点けるとそこには、尻餅をついた元彼女と耳を塞いで小さくまるまっている忠弘がいた。


「ばぁーかこんのやろうびびったじゃねーか」

「心臓にわるい!クラッカー禁止にします!」

忠弘と元彼女の流れる様なやり取りを見て相当怖かったのだろう。灯りのない部屋から突如乾いた音が鳴り響くのだから。大抵の人は驚くと思う姿形の見えない空間からの壁を突き破る激しい音。俺は暗闇の何でもない日にクラッカーは禁止と心のメモ帳に記入しておく。


「あーわるいわるい、驚かせるつもりが驚きを突き破り恐怖に変わるとは想像できなかった」悪いと思っていないの俺の愛のある弄りを受け忠弘は、「ばか、まじやめろまじこえーから漏らすぞ!」すかさず、ルミちゃんが

「ごめんねー私がやろって言ったの」

ルミちゃんは時計をみて続ける

「今9時20分を以って我が家では暗闇クラッカー禁止にします」

「賛成!」「さんせー」「了解」

一際大きな声を挙げて賛成したのは、忠弘だった。忠弘の右手に握られ続けている買い物袋は忠弘の右手を薄紫色に染めるのであった。


買い出しに行った2人を労い、各々飲み物を選び。届いてあるピザを開け並べ。

「改めてお誕生日おめでとうーかんぱーい」

誕生日会の始まりだ。

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青春の2ページ目 ロジー @every-dstyle

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