第3話ピザピザピザ

ピザをデリバリーで頼み、飲み物などは近くのコンビニに買い出しに行く事になった。

買い出し班はジャンケンで決めようとなったが、本日の主役は待機を命じられた。

ルミちゃんが負ければ、俺と待機になるかもしれないが、そんな偶然に賭ける俺ではない。

俺の脳味噌は今日焼き切れるかもしない。

「待った!そのジャンケン待った!」

「本日の主役が待機なら、場所を提供してくれた彼女も待機じゃない?」

俺はもっともな事を強く当たり前に大袈裟に訴えかけた。

「えっいいよ、気にしないで。私買い出し全然行くよー皆んなコンビニ何処にあるかわかる?」

元彼女が、「私わかるよ。バス停の前ぐらいのところでしょ?」

「そう、家出てまっすぐ歩いたところ」

場所もわかったところで、元彼女が「そうだね、場所提供して貰ってるから買い出し私と、忠弘で行ってくるよ!」

120パーセントの笑顔で、「ねっ忠弘、着いてきてよ!」

忠弘は若干面倒くさそうにうなずいていた。

俺は、心の底から元彼女にエールを送っていた。

忠弘が、少しゴネた後渋々荷物持ち係として元彼女に着いて出て行った。


収束を図っている胸の鼓動は、彼女を見つめる度に発散する。この時間がとても大事だと頭ではわかっているが、心も身体も抑えきれない。身体が熱い、火照った身体を冷ますように窓を開け出て行った2人を探すふりをした。


「あれーあいつら何処かなー」

わざとらしい、俺の棒セリフをあっけらかんと彼女はこう答えた。

「コンビニ逆だから見えないよ。寒いからそろそろ閉めない?」

「もしかして部屋暑かった?私寒がりだからー」

確かに部屋は暑い。外はチラチラ雪が舞う程に冷えているが、部屋の中では薄手のロンTだ。忠弘に至っては、Tシャツだった。

「大丈夫、俺も寒がりなんだ」

これは、本当だ。

「忠弘がちゃんと着いて行ったか確認したかったんだ」

「そっかー2人はずっと仲良しなの?」

「男同士の熱い友情何ていいよね」

彼女の方から会話を弾ませてくれる。

「うーん、ううん。正直中学は同じだったけど特に接点もなく、高校は違うし。プラプラしてる時にたまたま会ったのが忠弘で、特に嫌ってこともなかったからそのまま遊んでる関係かな?」

「だから、仲良しって聞かれるとうーんって考えちゃうかな」

「そっかー、嫌じゃないならいいね。そー言えば私なんて呼べばいい?」

「そっかー呼び名決めてないよね。俺は何て呼べばいい?」

「えーずるいー私から聞いたのにー」

口元の微笑を隠しながらも俺は続けた。

「柔よく剛を制す的な」

玉を転がす様な彼女の笑い声は、俺の頭からつま先まで駆け抜けていった。

上がりきった口角からは、彼女の澄んだ声で

「ちょっと何言ってるかわかんないけど面白い」

彼女の声を聞くたびに目の前にある真っ暗でどす黒い霧が晴れていく。この先に何があるだろう。緑いっぱいの大自然の森がこの先にある予感がする。この霧を晴らしてくれるのは君なのか。

「るみでいいよ」

知らず識らず左右に身体を振りながら俺は

「ルミちゃんと、しゅうくんでどう?」

見てくれだけはいい俺だが、女の子の名前を呼んだことは無い。正直恥ずかしいのだ。何でもない振りで、しゅう君だなんて赤面で飛び降りるぐらい恥ずかしい一言だ。

「へーしゅう君って言うんだ。宜しくねしゅう君。お誕生日おめでとう」

強烈だった。もう、前世か?前世から一緒なのか、好きだー好きすぎる好きが止まらない。言いたい!目の前にいるこの子に伝えたい!

「前世一緒だった?」

溢れ出す俺の恥ずかしい言葉。

頬に少し赤みがみえた彼女だがお酒なのか照れなのか分からず、口を手で覆い漏れ出す声。

「バカ、恥ずかしい事真顔で言わないで」

有りなのか?これは、有りなのか?ここは、押すのか、引くのか「魂がよろこんでいるみたい」押す俺。

今度は間違いなく頬を赤らめ「もうっ」

堪らない堪らなく愛おしい、あっやば、俺このままだと頭オカシイ人間だ。

乾いた笑いで、一先ず自分を落ち着かせ。

「あいつら遅いなー」フルブレーキを選択した俺は、彼女のとろける様な甘い笑顔を今も忘れない。

「今度は、しゅう君が照れたんでしょ?」

「全く歳下だとは思えないなー」

オッシャー!俺は拳を握り腕を曲げ何度も上下させた。ここまで気持ちを込める人も居ないだろう。見てくれ!俺のガッツポーズ、感情の昂り選手権が開催されたらダントツでナンバーワンだ。

満足そうな俺を見ていた彼女は「そろそろふたり帰ってくるかな」驚かせようか?まだクラッカー余ってるから鳴らしちゃう?

「うん、やろう!」

今の俺はどんな無理難題をふっかけられてもやると思う。

ワクワクを隠しきれない彼女は電気を消し、2人が帰ってくるのに備えた。

暗がりに溢れる携帯の光彼女の姿は魅力的で男の本能を掻き乱すには充分だった。恋は盲目とは言い得て妙だ。


ハッピーバースデートゥユー♪

ハッピーバースデートゥユー♪

ここの居酒屋は店員さんがパフォーマンスをしてお祝いしてくれるらしい。

右斜め後ろのテーブル席にまだ初々しい若者4人が座っていた。あのテーブル席の赤面顔の彼の元にケーキと歌を届ける店員さん、歌い終わるとクラッカーのけたたましい音が店内に響く。俺は少しビクつきながらも店内の雰囲気に合わせ拍手を贈る。

「あの日もクラッカーに驚かされたな、あの時から俺クラッカー苦手になったんだよな」

「確かにあの音は反則だよね、最近のは遠慮のある音だけど、あの時代のクラッカーは怪我するレベルだったよね」

ケタケタ笑いながらあの日の事を思い出してるのであろう。笑いを抑えながらもあの日の事を茶化してくる。

「蹲り丸くなってたもんねー」

「耳抑えてたし」

言い終える前に笑いが込み上げてきたのか、ケタケタ笑いが止まらない様子。あのテーブル席の彼のよう俺も赤面が止まらない。お祝いされたのが俺と間違えられてもおかしくない赤さだった。

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