第2話 衝撃を他所に

「すまん、おまたせ!」

待ちくたびれたはずの2人だか、一切その様子を見せず俺を労ってくれた。一週間の疲れが溜まっていた俺は睡魔に負けじと2人と会話を続ける。

元彼女の対しては。

「久しぶりだね、まさか一緒に来るとは思っていなかったよ」

元彼女と忠弘はバイト先が同じだった。俺と付き合っていた頃のバイト先だ。

忠弘は引っ越す事をお世話になってた元彼女に伝える電話をしたそうだ。同時に日曜日に俺と会うから一緒にどう?と誘ったみたいだ。

元彼女も久しぶりだし忠弘とももう会えないから今日参加したみたいだった。

「お前少し会わない間に、雰囲気変わったな

、働く人みたいだ」

駐車場で待ってる間、おれを見て感じたそうだ。

「そうか?自分じゃわかんねーし働く人だぞ」

今からどのお店に行くか俺は知らなかったので、2人に尋ねた。

「今からどこ行くの?お店決まってる?」

少し眠くなってきた俺の声が2人の耳に届く。

「眠そー。私の友達の家だよ、後5分ぐらいかな」

元彼女の友達の家って俺知らない人だし、店でもなくて知らない人の家に行くのは何だか緊張するし、車の心地良い揺れに抗いながらも後5分の揺れは俺を夢見心地にする。

「着いたよ!」

「着いたぞ!」

左右で俺を揺さぶり激しく起こす。

俺も慌てて、「寝てないけど」とわかりやすく虚栄心を満たそうとする。

到着した場所は俺らの住んでいる場所よりもずっと都会だった。

近くのパーキングに停めた後少し歩いた先の5階建てのマンションに向かっていた。

どうやら2階の201がその子の家みたいだ。

201号室のドア前まできた俺たちは俺の眠さもあったが、寒い時期だったので早く暖まりたいと元彼女よりも先にインターホンを鳴らした。会ったことも喋ったこともない歳下の俺だったが、1秒でも早く暖まりたかったのだ。

ーガチャ

鍵を開ける音が聞こえた。

俺は寒さと少しの緊張を隠すために下を向き手のひらに息を吹きかけて手先の冷えを誤魔化していた。

ーガチャ

次はドアノブを押す音が聞こえた。

開くドアを確認しながら一歩後ろに下がる

「いらっしゃーい」

声の聞こえた方向に視線を向けるそこにいたのは、缶ビール片手に持ち、セミロングほどの黒髪に強めのウェーブをかけぱっちりお目目がよく見えるほどに切り揃えらている前髪右手には飲みかけだろうか、缶ビールを持った取り分けモテなさそうな女性がにっこり微笑みかけ招き入れてくれた。


この日の出来事は、俺にとって初めての衝撃だった。



久しぶりの再会を祝した乾杯は、二杯目に突入していた。

ビールを飲み三杯目を頼んだ頃、俺たちは示し合わしたかのように、あの時の思い出について語り合う。

あの時と言うのは、誕生日会の事だろう最後に遊んだ日なのだから。


「いやーアレは衝撃だったなーまさかあの後付き合う事になるとは思わなかったなー」

「結局なんで付き合う事になったんだっけ?」

「俺が気づいた時には付き合ってたよな?」




インターホンを鳴らしそそくさと部屋に上がるつもりの俺だったが、彼女の衝撃が強過ぎて玄関先で少しの間呆然と佇んでいた。2人は俺が佇んでいる間に既に部屋の中で寛いでいた。佇んでいた俺を、寒いから早よ中入りーと名古屋弁で優しく迎え入れてくれたのは俺に衝撃を味合わせてくれた彼女だ。

いつまでも、玄関先で佇む訳には行かないので、俺は大きく深呼吸をした。

「お邪魔します」

玄関の扉は開いたままだったが、お邪魔しますの合図と共に逃げ道の扉を閉めた。俺は、より一層緊張した面持ちで、後には引けない長い長い夜になる事を覚悟していた。


脱ぎ難い靴を履いてきた事を後悔しながら何とかスマートに脱ぎ、もう一度お邪魔しますと声に出した。

「礼儀正しい子やね」

彼女は俺の見た目とのギャップに驚いた様子で俺に声をかけてきた。

俺は俺で、礼儀正しい子と言われ子の部分に引っ掛かりを覚えていた。

子供扱いな俺をどうにか対等な男としてみてもらえるように俺の頭の中では、今日までの出来事と使えそうな知識をフル動員し、どうにか対等な男としてみてもらえるように俺は出来る限り大人びた対応を心掛けていた。


俺の思考がすでに初めてあった女性に傾いていた時に突然、激しい音が1Rの部屋に鳴り響く。1Rとはいえ、16畳ぐらいありそうな広い部屋だった。大人4人でも窮屈感はなく座り心地の良い座布団がそこにはある。

その音は何重にもかなり合い、音と共に紙ふぶきを撒き散らす。クラッカーを鳴らしてくれたのだ。いつのまにか3人の手には鳴り終わり、撒き散らした後のクラッカーが残っていた。

口早に、お祝いの言葉とケーキを用意してくれている。俺は驚きよりも圧倒的に嬉しが勝ち半泣きになりながらも、それぞれの顔をみてお礼を述べた。心の中で手を合わせ神様にも、お礼をいった。彼女に会わせてくれてありがとうございます最高の誕生日プレゼントですと。


俺の心の中は彼女で一杯だった。一目惚れも始めただったし、初めて人を好きと言う感情に目覚めた。雷に撃たれてようだ。誇張表現だと思ったが、本当、全身に電気流れた様だった。勿論雷に撃たれた事はないが一瞬のうちに全身に電気が流れた表現は的を射ていると思えた。俺はこの後の事を全力で考えていた。絶対条件で2人きりで話す時間は必要だ。ただいきなり誘ったところで失敗に終わる。しかし、何もせずに居れば2度合うことは無いだろうと強い予感はしていた。まずは、彼女の情報掴む事に専念する事にした。


「びっくしたやろ」

忠弘がどや顔をしている。

「ちょっと目が潤んでない?」

元彼女が弄ってくる。企画したのは元彼女だ。細かい買い出しに忠弘を連れて一緒に行ったみたいだ。

「ビックリしたでしょーお誕生日おめでとう」

俺はもう一度お礼を伝えた。

「おい!皆んなありがとう!」

サプライズの成功に1Rに集まる4人の大人は各々満足顔だ。

「さぁ何食べたい?」

ビールの彼女がケーキを頬張りながら俺に聞いてくる。俺の為に用意してくれたケーキだ。ローソク?すでに吹き消した後だ。

俺の誕生日をお祝いしてくれるらしい。何が食べたいと聞かれ外に食べに行くことも考えたが今外に出るのは得策じゃない気がしていた。口々にあの店は?この店は?とざわざわしている。彼女の事で頭いっぱいな俺は、自分の事などどうでもよく、彼女が1番落ち着く場所は?頭の中でこれ以上なく考え混んでいた。自室以上に落ち着けれる場所なんてないと事に気がつき自室で食べれるものを答えた。

「ピザ食べたいなー」

彼女を視線の先に捉え、俺はピザを強く推した。彼女は笑いながらも「いいかもー」などと笑顔で同意してくれている。

何だかんだで、今日の主役を尊重してピザを取る事になった。ちなみに俺は好きではない。チーズとトマトが嫌いなので、俺にとっては美味しい部分を取り除いた、ただのパンだ。

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