03 over extended.
「あっ、あたっ、あたったっ」
「ん?」
彼女。
「あだだっ」
勢いよく起き上がろうとして、私の胸にぶつかる。
二回。
右と左、ピンボールのバンパーみたいに彼女の頭が吹っ飛ぶ。
「むねがおおきいのは違法だとおもいます」
「違法って」
「あっ、ちがくて。みて。みてこれ」
テレビ画面。
「お」
珍しく、彼女の顔が反射して映ってる。
「反射角百度?」
「あ、ほんとだ。映ってる。めずらしいね。じゃなくて。応募画面」
画面のほうか。
なんか、数字が六つ、並んでいる。
「当たった。試写会。あたらしいやつの」
彼女。携帯の画面を見せてくる。たしかに、同じ数字が表示されていた。
「よかったねえ」
「ね。一緒に見に行こ?」
「ひとがしぬやつだよね」
「うん。こわくてひとりでみれないよお」
じゃあなんで応募したの。
「あ」
「え、予定とか、あるの?」
「おもいだした」
「うそ。ひとりでみにいくのこわい」
「夢の内容」
「ね。いこうよ。一緒に」
「あなたがいなくなる、夢だった」
「わたしが?」
「急にあなたが消えて。番組の録画とか始まってもいなくて。部屋に行くと、画からあなたがいないの」
「こわいよお」
「こわかった、かな。いや、そんなにこわくなかった、気がする」
「そうなの?」
「でも、さびしかった」
「そっか。あまえていいのよ」
彼女。手を大きく広げた体勢。
抱きつくと見せかけて、すばやく胸とおなかをつねる。
「いだだだ」
たしかに、彼女は、ここにいる。
「携帯で連絡とったり、しなかったの。夢の中で」
「あ」
考えてなかった。
「考えてないことって、出てこないよね。夢に」
「まあいいや。行こっか。ひとがしぬ映画」
「やたっ」
反射角百度の彼女 春嵐 @aiot3110
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