第22話 3対2+1

 蛇が、槍のように飛んできた。

「ヤクルスですね」

 ナッピから得た知識を披露するソレ=ガシ。しかし、まったく戦う気がない。

「まずは、オレからだ」

「頼りにしてます」

「おなじく!」

 ケルオが先手必勝の射撃。だが、硬いウロコは弾をはじいた。

「任せた」

「わ、私?」

 あっさりと諦めた帽子の男の前に、金髪の女性が出た。魔物に向かって走る。跳んだ。魔力を込めた右脚が炸裂。キュロットスカートがはためく中、一撃でヤクルスを粉砕した。

「すごーい」

 アイカが率直な感想を述べた。まるで飾り気がないのは、まとっている作業着だけではないらしい。

「では、行きましょうか」

「おう」

「うん。行こう」

「さくっとね」

 二人がそれぞれ担がれる。いつものように横抱よこだきだ。ソレ=ガシとミナの二人は、ひたすら走った。音速を超えるほどの勢いで。

 1時間経過。しばらくすると、大地が黒くなった。

「黒い大地」

「これのことですか。なるほど」

 ソレ=ガシは、納得しながらも何かを考えているようだ。

 黒い地面といっても、あまり普通の土と変わらない。じゃっかん柔らかく、きめが細かいくらいの違いしかない。

 さらに、歩みを進めたのち。

「えいっ」

「今回はオレの出番なしか」

「今回は? ボクの出番はなくていいよ」

 ミナの強烈な一撃が決まった。

 何度目かの魔物襲撃。陣を広げれば戦わずに素通りできる。だが、ソレ=ガシはそれをしない。アイカの治癒魔法を使うまでもなく、戦いは終わった。

「魔物が増えてきたということは、目的地が近づいているということでしょうか」

「気を引き締めていこう」

 次々に魔物を撃退し、先に進む一行。すべて返り討ちにしている。

「あれは」

「なんだか、不気味なお城ね」

 遠くからでも目立つ大きな城のある、大きな町が見えてきた。暗雲が立ち込め、禍々しい雰囲気をかもし出している。

「これ以上は進ませないぜ」

「それ、あたいのセリフ」

「ふぅ」

 ルーヴィとパヌラプとナッピが現れた。

 ナッピはため息をついている。

 やる気のないソレ=ガシそっちのけで、戦いが始まろうとしていた。


「いい加減、しつこいぜ」

「ふん」

 ルーヴィは返事を返さない。

「ソレ、手を貸してくれないのか」

「ヒューマノイド対魔族まぞくなら、それがしの出る幕ではありません」

 やはり、ソレ=ガシはやる気がない。

「おっと。ワタシは魔族まぞくじゃない」

 ルーヴィが言った。

「そうですか」

 ソレ=ガシは、相手がなんだろうがさほど気にしていないようだ。無表情だった。

「なぜなの?」

「なんで、こんなことをするんだよ」

 同じヒューマノイドなのに、なぜ。不可解さからか、感情的になり聞く、ミナとアイカ。

「ワタシの名は、ルーヴィ=タルッカ」

 ルーヴィが過去を語り出した。

 聞くも涙、語るも涙の人間模様あふれる過去の話が展開された。ミナは目を潤ませている。アイカは泣いていた。

「……」

 ケルオは、何も言わなかった。

「――てわけで、人なんかより魔族まぞくのほうが信用できる。それだけのハナシだ」

 ソレ=ガシはまったく聞いていなかった。


 ナッピを狙うケルオ。

「また魔物を呼ばれたら面倒だ」

「へぇ」

 そうはさせないと、ルーヴィが援護に出る。ハンド魔道砲まどうほうがうなる。

「くっ」

「さらに腕を上げたようだな」

 ケルオとルーヴィの撃ち合いになった。どちらもスナイパーライフルは使っていない。連射力重視のハンド魔道砲まどうほうで戦っていた。

「はっ」

「甘いわね」

 ミナとパヌラプは近距離で格闘戦。

「リヴィト様からいただいた力で、もはや互角よ!」

「私、負けません!」

 ナッピは、魔物を呼ばなかった。長い呪文の魔法も詠唱しない。

「無駄遣いするなって言われてるから」

 アイカとナッピは、それぞれ仲間の傷をいやすことに専念している。

 お互いに紙一重で弾をよけるケルオとルーヴィ。ミナとパヌラプは、素手同士でひたすら打撃の応酬を繰り広げていた。

 二人の銃士は、左手に連射重視のハンド魔道砲まどうほうを持ちかえた。そして、右手に威力重視のものをにぎる。右手で攻撃はせず、左手で攻撃を繰り広げる二人。

 戦いが動いた。

 徐々に移動するミナとケルオが、ルーヴィを二人ではさみこむ形に持っていったのだ。

「なんだと」

「降参してください!」

「迷うな。オレがやる」

 ためらっている様子のミナに代わり、ケルオの右手に力が入る。

「くっそ」

 火をくハンド魔道砲まどうほう。いくつかが命中し、男は倒れた。

 ミナとケルオが連携でルーヴィを撃破。

「ここまでみたいね」

「まいった」

 続いて攻撃しようとしたところで、パヌラプとナッピは降参する。

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