第17話 試練とアイカ
アイカが試練に挑む。
ムスタスッカイスウ島の遺跡で、光る柱に触った。試練が始まる。
やはり光が包み込み、消えていく。
十代前半。いまでも子供といえる年齢。だが、さらに前の子供時代の視点。
アイカが、子供たちが遊ぶ様子をうらやましそうに見つめている。
天涯孤独のアイカ。だった頃の映像らしい。
「なに、これ」
「おう。遊ばないのかい?」
ハルコが声をかけた。しかし、少女は愛想がよくない。
アイカは、エイレンの元帥であるハルコに育てられたようだ。
「機械のほうがいい」
「そうかい。だったら、ちょっと待ってな」
「思いだした。これで、ハンド
元帥が戻ってくる。
「こいつなんて、どうだ?」
ガラクタのような機械の中に、骨董品と呼べる古びたハンド
時が経ち、最近の視点。
作業着を着て、機械をひたすらいじっている。
「いつもどおり」
もはや、話しかける同年代の者はほとんどいない。
「いま、空いてるかい?」
「ん? なに?」
「こいつの様子を見てほしいんだけどね」
何かの装置を手渡された。声をかけてくるのは、もっぱら年上の技師ばかりだ。
ハンド
「外の世界を見ろ」
「なんで?」
「まだ知らないことが山ほどあるぞ」
「って言われても、興味ないし」
アイカは、ひたすら機械の整備に没頭している。いまは機械にしか興味がないようだ。
「まあ、無理にとは言わないけどさ」
元帥が表情をゆるめて見守っていた。
誰かがやってくる。
「あそぼう」
と言っても、アイカは遊ばない。ところが、別の人物が声をかけると。
「この機械なんだけど」
「みせて!」
現実では見たことがない、謎の装置をいじるアイカ。きれいに分解していく。
アイカは、機械をメンテナンスすることが好き。その気持ちをまったく隠していない。むしろ、自分から周りの人に伝えている。
「ここの角度がこうだから、こっちはこうしないと。あっ。だったら――」
試練だということを忘れて、機械いじりに夢中になっているようだ。
「ちょっと待って。ヒューマノイドなんだから、機械いじりって、つまり」
アイカが、何かに気づいたらしい。
忘れられた島。
ガーディアンが現れた。
「そうだった! 試練」
思いだして、あたりを見回すアイカ。ソレ=ガシたちがいない。一人でガーディアンを相手にするのは無謀だ。
「こんなの、どうすれば」
逃げようとして、思いとどまる。
必死で作戦を考えていた。
「魔力がナノマシンによるものなら、プログラムを直接操作することが可能。例えるなら、機械を説得することができるのでは?」
ソレ=ガシがガーディアンの残骸を見ながら言った言葉を思い出す、アイカ。
ケルオとミナの言葉が続く。
「魔力が強ければ、できるかもな」
「そうですね」
細い蜘蛛の糸のような突破口が見つかった。
「あーあ。わかってたら、ガーディアンを仲間にできたかもしれないのに」
アイカは、自分の言葉も思いだした。そして、振り返った。
「ソレが言うなら、できる」
アイカのソレ=ガシへの信頼は厚い。一度も嘘をつかれたことがないからかもしれない。
栗毛の少女は、魔力による説得を試みることにしたようだ。
ドリルやハンマーを紙一重でよけるアイカ。
ガーディアンは、説得の隙を作ってくれない。
機械の機動音が鳴りひびき、攻撃が繰り返される。大きなペンチのようなものが唸りを上げた。
「話を聞いて」
まだガーディアンに
レーザー光線やガトリング砲を撃ってこないのは、試練だからだろうか。
そこまで考える余裕は、少女にはなかった。
再びドリルやハンマーがうなりを上げて襲いかかる。
「もうちょっと」
大きな音が鳴った。巨大な爪が迫って、アイカが目を閉じる。
アイカは試練に失敗した。
「うわっ」
戻ってきたアイカが、尻もちをつく。
「大丈夫か?」
「うん」
ケルオの隣に座るアイカ。
「アイカ、本当に?」
「だいじょうぶだってば」
心配そうに見つめるミナとは対照的に、ソレ=ガシは無表情だった。
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