第14話 ガーディアン

 エイレンに到着したソレ=ガシたち。

 一行は、エイレンでのんびりすることにした。

 ウレペウシ号の甲板は、先の銃撃戦で穴だらけ。船長が愚痴る。

「結構、派手にやったね」

「悪い」

「まあ、無事でよかったよ」

「そうですよ。無事で何よりです」

 謝るケルオに、サフコとタラカストスが手を差し伸べた。

 防御魔法は完璧ではない。どんなに強力でも、かすり傷程度は受けてしまう。ケルオは、アイカの治癒魔法で傷を治してもらっていた。

「やるもんだな」

「へっへーん。すごいでしょ」

 アイカは鼻高々だ。

 やはり、船員たちは船の整備にとりかかる。

 その夜。

「祭りがあるんだって。ソレ、行きましょう」

 手を引っ張られるソレ=ガシが、ゆっくりと口を開く。

「なぜ、そんな服装なのですか?」

 それもそのはず、ミナは浴衣姿。髪も後ろで結んでいた。髪型に対して言及しないところがソレ=ガシらしいといえる。

「エイレンの祭りでは、この格好が正装らしいよ」

「なるほど」

 異世界の魔王まおうは、納得したようだ。

「お前も行くのか」

「お前じゃなくて、アイカ」

「ああ。悪いな」

 本気で怒っている顔を見て、ケルオが帽子をとった。頭をかく。

「やっぱり、苦手だな」

 ぼそりとつぶやいた。

 祭りに参加するミナたち。ソレ=ガシもしぶしぶついていく。

「これ、買って食べない?」

それがしには、食事は必要ないので」

「またまた、冗談言っちゃって」

 とつぜん、大きな破裂音がひびいた。体の中まで浸透するような。

「何?」

 ケルオが身を隠す。

「ちょっと。花火だよ、花火」

 文字どおり、火の花のようにまるい。咲くように広がっていき、途中で急激に暗くなる。

 あきれ顔のアイカが、ケルオの手を引っ張って出てきた。

「きれい」

「花火ですね」

 ミナとソレ=ガシは、隣に立って花火を見ていた。次々と打ち上がっていく。赤、青、黄色。大きなものも、小さなものもある。

「おそらく、火薬を使っています。エーッテリにもあったんですね」

 延々と花火の解説をするソレ=ガシ。ミナは、笑顔で聞いていた。


 エイレンから東へ向かうことになる。

 地図を見る一行。

 これまでの地図とは違う。アジャテラの王クニンガスから渡されたものだ。普通の地図には載っていない島が表示されている。

 船の甲板に出て、行く先を見つめる面々。

「100ポマセくらいでしょうか?」

「106ポマセみたい」

 くしゃみをするアイカ。

 すぐにマントが脱がれ、無言でアイカにかけられた。それをおこなったのはケルオだ。

「だから、ガキは苦手なんだ」

「ありがと」

 まぶしい笑顔を、ケルオは直視しなかった。

「よし。出航だ」

いかりをあげろ」

「了解」

 ネリア船長の命令を、タラカストスが遂行する。

「忘れ物をしても帰らないからな」

「そんなのトゥットゥ」

 ヨフトの言葉に、マーが答えた。

 ひたすら東へ進むウレペウシ号。波が荒くなってきた。ソレ=ガシには効いていない。酔うこともないらしい。

 波をかき分けて進み、昼頃。

 名前すら忘れられた島が見えてきた。


「慎重にいけ」

 ケルオが小声で話すなか、忘れられた島に近づいていく。

 なぜか、港のような施設があった。そこの埠頭ふとうのような場所に船をつける。

 上陸。まだ襲われない。

 いつ何が起こるか分からない。なにしろ、ほとんどの地図に載っていない、いわくつきの島だからだ。

 船員たちは船で待機することになった。

 島の詳細な地図を見るソレ=ガシたち四人。

「ここですね」

「行きましょう」

「おーっ」

 三人はのんきだ。

 遺跡の入り口を目指す。

 魔物がいないのんびりとした道中。ガーディアンがいることなど忘れてしまいそうだ。

「おっと」

 とつぜん、ソレ=ガシが陣を広げた。

 ガーディアンからのレーザー光線が防がれたことは、ケルオとミナとアイカには分からない。

「なんだ?」

「気をつけて」

「見て、あれ」

 アイカが指差す方向から、4足歩行のガーディアンが現れた。

 重機のような見た目で、にぶく光る銀色。数々の武装を搭載している、巨大な機械だ。

「壊さずに済ませるのは無理そうですね」

 と言いつつも、ガトリング砲やドリルなど、あらゆる攻撃を無効化するソレ=ガシ。ミサイルは飛んでこなかった。装備されていない。

 ケルオがつぶやく。

「ソレがいなかったらと思うとゾッとするぜ」

「構造から考えて、弱点はまんなか!」

 アイカの言葉が聞こえ終わらないうちに、ソレ=ガシが動く。

 それは一瞬の出来事だった。当たらないレーザー光線をものともせず、中から大きな部品をつかみ出したのだ。ガーディアンが動かなくなる。

 心臓部は無理やり引きはがされている。辺りには大小さまざまな部品が散らばった。


「よいしょ」

 ミナが、担いで運んできたガーディアンの残骸を、船の甲板におろした。

「こいつはたまげた」

「ヤベェもん拾ってきやがって」

 ペラシンとサフコが、率直な感想を述べた。

「分解はここじゃ無理だな」

 ガーディアンを回収するウレペウシ号の船員たち。多くの部員たちが、残りの部品も回収に向かっている。

「危険なので、この先は一人で行きます」

「私も行く」

「仲間外れはやめてくれ」

「ボクもいく」

 三人に、ソレ=ガシがいつになく真剣な表情で言う。

「どうなっても知りませんよ」

 再び船を降りる四人。

 おだやかな獣道を通り抜け、遺跡の入り口へとやってきた。

「ソレ、明かりある?」

「逆に聞くと、誰も持ってないのですか?」

「私、持ってる。行きましょう」

 ミナの手には、バロ・ハイカイセバの力で光る、小型の装置がにぎられていた。光の魔法が唱えられる。

「バロ・ハイカイセバ」

 遺跡を奥へと進んでいく。同じような広さの道が十字に別れてつづく奇妙な構造をしていた。

「なんだ、こりゃ」

 周りは金属だらけ。

「足が痛いね」

「つかれたー」

 そして、みな無言になった。

 敵も防衛機構もなく、足音だけがひびく。魔王まおうは地図を書いていた。

「見て、見て」

「ほかとは違う部屋みたいね」

「着いたか」

 ほっと胸をなでおろす仕草をしたケルオ。だが、次の瞬間には再び緊張した表情を見せた。

 最深部では、ソレ=ガシがよく知る文字が使われていた。

「これは――」

 部屋のスイッチを入れるソレ=ガシ。明かりがともった。

 キーボードを操作する魔王まおう。モニターに表示される事実を、ソレ=ガシが噛み締める。

「何て書いてあるの?」

「もったいぶらずに話せよ」

「聞きたーい」

 ソレ=ガシは、三人に向けて話し始めた。

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