ウィンソウ家はすごいんだ!

 あれから、私はうさちゃんのことを、まだ抱きしめていた。

 かわいいから、ぎゅ~っとしたくなるのだ。


「……いつまでそうしてるつもりなの?」


 最初は「殺す」とか、物騒なことを連呼していたのだが、今ではすでに呆れていた。

 というか、もう諦めたという感じだろう。


「だって、こうしたくなるんだもん。仕方ないでしょ」


 そう返した私本人でも、これは異常だと思う。

 と、ふと私は、うさちゃんの尻尾を触ってみたくなる。

 というのも、なんか凄いふわふわしてそうだったから、触ってみたいと思ってたんだよ。

 抱きしめているついでに、私は尻尾も触る。


「ひゃ、ひゃぁぁぁぁぁ! な、なに、なにをするの!」


 顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにしながら私にそう言ってきた。

 なにって……。

 尻尾触っただけなんだけど。

 だから、


「うさちゃんの尻尾ってさ、なんかふわふわしてて気持ちよさそうだから、触ってみただけだよ?」


 普通にそう答えた。

 だって、それしかしてないわけだし、それ以外はまるで心当りがない。


「そ、それっ! せ、セクハラだよ! 兎メイドの尻尾を触るなんて、セクハラだよ。万死だよ、万死」


 それが悪かったらしい。

 てか、この世界にセクハラって言葉存在したんだ。

 そんな、ちょっとした驚きを覚える。

 けど、触られたうさちゃん本人はそれどころじゃないようだった。


「ねえ、聞いてるのっ! もう、触らないでよ。絶対に、だからね……? いい?」


 本気で私にそう言ってくる。

 まあ、そんなに嫌なら触らないけど。

 と、思うも、思ってたよりもふわふわしてた、うさちゃんの尻尾は、変にクセになる触り心地だった。

 ときどき隙をみては触ろう。

 結局そこにいたった。

 人間、大きな欲望の前には勝てないものなのだ。

 なんとなく、私がなにも聞いてないのを感じとったのか、


「本当にやめてねっ!」


 うさちゃんは最後に念押ししてきた。

 けど、私にはそれが、「触って」と言ってるようにしか聞こえない。


「なあ、ウィンソウ家って言ったよな?」


 それまで、だんまりと、静かにしていたハンディーが、唐突にそう言った。

 私にウィンソウ家がなんなのかわかるわけがない。

 そんなわけだから、ウィンソウ家と言われてもピンとくることはない。くるわけがない。

 だから、マギアの方を見てみたのだが、マギアもピンときてる様子はなかった。

 うさちゃんも、「そうだけど、それがどうかしたの?」という雰囲気だった。

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ゲームを始めたはずの私は、なぜか異世界で勇者《最弱職》になりました。 アールケイ @barkbark

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