第2話 党員#2 吸血鬼? いや、吸精姫! その2

「まあ、早い話・・・あんたが自殺を図って、あたしはそれを待ち構えていた。」

『・・・・・・』


「あたしの場合・・・自殺した直後の、若い女の体。 そういう条件じゃないと乗り移ることができないっていう、厄介な体質なの。」

『・・・・・・』


「本来だったら定期的に〝食事〟をしていれば、若さを保てたんだけど・・・

今回はどうしても早急に体の交換をしないと、とってもヤバい状態だったのよ。」

『・・・・・・』


「で、遺跡発掘調査によって、あたしにかけられていた忌々しい封印が解かれた事と・・・予想通りにあんたが自殺を図ってくれたおかげで、あたしは消滅の危機から

逃れる事ができた・・・ ってわけ。」

『・・・・・・』


「ざっくり言うと、こんなとこかしら。」

『もしかして、吸血鬼ってヒト・・・?』


「おしい! 近いと言えば近いんだけど、あたしは血ィ吸わないから。」

『え? じゃ、なに吸うの?』


「そおねー なんて言えばいいかな・・・ そう、赤ちゃんの素だね。」

『ああ、そう・・・ って!! なによそれー!?』


「なにって、そのまんまよ。男がイク時、アソコから発射される例の白い液体。」

『ええー-っ!? まさか、口でくわえてチュ~チュ~って?』


「そんなオ下品な事しませんので。 ちゃんと下の口で・・・ね。」

『そんな事したら・・・デキちゃうじゃない!』


「それがねえ、大丈夫なんだなー。 排卵も生理も起きないから。」

『・・・・・・』


「上の口は、水分補給と魔力を高める効果のある酒を呑むため。下の口は男の…」

『もう聞きたくない!! それより・・・』


「・・・ん? どうしたの?」

『おなかすいた・・・』


「あんたフクロウなんだし、外いってネズミでも捕まえてくりゃいいじゃない。」

『無理!! そんなの食べれないし!』


「めんどくさいわね~ じゃ、どうすんの?」

『冷蔵庫、開けてみて。』


「レイゾウコ・・・? なにそれ?」

『そこにある、おっきい白い扉の! そこに食べ物とか入ってるから!』

「・・・ああ、それね。」


開けてもらった冷蔵庫の中を見て愕然とするフクロウ。

『ロクなの入ってないし!』


「ねえ、これ・・・なに?」

500mlの缶ビールを指差していた。


『ビール。 お酒よ。』

「マジで!? ・・・でも、どうやって開けるの?」

「そこのリングみたいなとこ、指ひっかけて。で、そのまんま手前に・・・』


シュパッと開き、泡が少しこぼれた。

すかさず口へ持っていくたまき(の体を乗っ取った女)。

そのままグイグイと喉に流し込んでいく。


「これさ、エールみたいないい味なんだけど・・・ やっぱウスイかな。」

『そんなことより、あたしのごはん!!』


「じゃ、こんなのどぉ?」  未開封の魚肉ソーセージ。

『そのままじゃ食べれない!! ちゃんと真ん中から切って、外の皮むいて!』

「もぉ~ 世話がやけるんだからあー。」


言われた通りに下処理をした魚肉ソーセージを丸吞みするフクロウ。

『こんなのでお腹いっぱいになっちゃった・・・』


「ほんとはまだ飲み足りないけど・・・明日お仕事みたいね、この体。」

『そうなんだけど、だいじょーぶ?』


「ちゃんとあんたの頭の中の記憶を読ませてもらっているから。大丈夫よ。」

『そうだ! あなたの名前、なんていうの?』


「それなんだけどさ・・・ エイリアだったり、ネイラと呼ばれてたけど・・・

それって、元の体の持ち主の名前そのままだったから。」

『・・・?』


「だから、あたしは今後【河合たまき】で生きていくよ。」

『ええー-っ!? なんか納得できない!!』


「だって、しょーがないでしょー。 話が通じるのはあたしだけなんだし。」

『うぅ・・・』


「なんか、この体って休養をしっかり取らないといけないみたい。 だから、もう

寝るから。 おやすみ~」


照明が消され、暗くなった部屋。

『なによ、もう!!』


何もすることが無く、自分の部屋をうろつくフクロウ。

『・・・眠れない・・・』


自分が夜行性と気付くのは、もう少し後になってからだった。

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エロマンガ党 党員名簿・Mild Ver. もりおかねた。 @vespa100

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