第1話 党員#2 吸血鬼? いや、吸精姫! その1
山間を貫くように通っている橋。
虚ろな目つきで佇んでいる一人の女。
眼下には、ゴツゴツとした岩の間を流れる急流の川。
橋の欄干から川までの高さは、有に60m以上ある。
女は真下を覗いているように見えたが、目をつぶっている。
そして、身を乗り出し・・・
靴を履いたままの両足が、真っすぐ上を向いた。
「この手の予想は外した事無いけど・・・」
川から河原に引き上げられた女の遺体。
「やっぱり、いい気分はしないモンだねぇ・・・」
その傍らにフクロウの死骸。
それらを見つめていたのは・・・
ボロボロの布切れをまとった、ゾンビのような風貌の老婆。
「さてと、始めるとするか。」
しばらくすると、周囲一帯が煙のような濃い霧に包まれた。
三日後、XX県X市立・節句洲中学校から捜索願が出されていた、
【保健体育教師、失踪】の件は本人が出頭、学校並び関係者各位に謝罪し、
事なきを得た。
「・・・まあ、あんたが驚くのも無理ないよねえ。」
と、一羽のフクロウに向かって話しかける、当の保健体育教師、【河合たまき】。
『ねえ、なんであたしがそこにいるのー!? あなただれー!?』
と、羽根をバタバタしながらテレパシーで返してくる、一羽のフクロウ。
「まずは落ち着こう。 順を追って説明してあげるから。」
河合たまきの部屋で独り言に聞こえる会話は続いた。
「これから話すことは全部事実なんで・・・ あんたがどう思おうが、
とにかく信じてもらうしかないの。 いい?」
『・・・わかった。』
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