第109話 case109

「で? 何でマジックウォーリアだって黙ってたの?」


戦闘を終えたくるみたちは、戦闘に参加していた全員を誘い、研究所の庭でバーベキューをしていた。


「聞こえてんでしょ? 何で?」


くるみは葵に運んでもらった食事を食べながら父親に聞くと、父親は飲み物を飲み、くるみに反論する。


「じゃあ聞くけど、父親がマジックウォーリアの賢者してるって言ったら、どう思うよ?」


「グレる」


「だろ? だったらウィザードの方が格好良くね? と言うか亮介、俺の大剣返せ」


「いやっすよ。 これはくるみがくれたんだし」


「気安くくるみとか呼んでんじゃねぇよ!! 大体、お前が彼氏とか認めねぇからな!! くるみの彼氏は、セイジみたいなシュッとした奴じゃないと認めん!!」


「断固拒否します」


くるみの父親はたかが外れたようによく喋り、今までくるみが見てきた父親とは正反対の性格をしていた。


くるみは母親に「本当に同一人物?」と聞くと、母親はクスクスと笑い「そうよ。 ばれない様に喋らなかっただけ」と言いながら、料理をテーブルに並べていた。


「良いじゃん。 今まで研究所の超偉い教授って思ってたけど、こっちの方が話しやすくてあたしは良いと思うけどね」


ノリはそう言いながらくるみの父親と乾杯をし、くるみはため息をついていた。


父親は飲み物を一口飲むと、小さく息を吐いた後に切り出す。


「くるみのおかげで抗魔力アレルギー薬も開発できたし、悪い事ばかりじゃないんだぞ? 小さいときは酷い魔力アレルギーで、生まれてすぐ死にかけてたんだしな。 俺が賢者になっていたら、あの薬は開発できなかったんだよ。 …開発したのはママだけど」


「抗魔力アレルギー薬? 毎日飲んでたカプセルの事?」


「ああ。 あれは魔力保有量を増幅させるんだ。 例えば、10しか入らない器に11の物を入れたら1零れるだろ? その1がアレルギーを引き起こすんだよ。 器自体を大きくすれば、アレルギーが発症しないこともわかったしな」


「ちょっと待って。 自分の子どもで実験したって事?」


「仕方ないだろ? 産まれてすぐ死にかけてたし、とにかく魔力に関することは、片っ端から試したんだよ。 ウィザードの魔法を覚えさせたり、ヒーラーの魔法を覚えさせたり、マジックウォーリアの戦闘方法を覚えさせたり… ピンクの蝶は、生命維持に支障が出た時、現れるようにしたんだ。 仕組みはゲートと同じだ」


「姫ちゃん!助けて!!」


太一に呼ばれてふと見ると、ゴロが太一に懐いた鳥を捕食しようと狙っていて、太一は必死に鳥を守っている。


「ああ、ゴロちゃんその子はダメだって!」


くるみはそう言いながらゴロを抱きしめ、太一の腕を回復していると、太一が切り出してきた。


「この雛鳥、孵化した時に落ちて、ちょうど助けた時に目が見えるようになってたっぽいね。 刷り込みって言うんだけど、完全に俺の事、親って思ってるわ」


「めっちゃ嬉しいんでしょ?」


「かなりね! 鳥なら家でも飼えるし、めっちゃ可愛いじゃん!」




翌日、学校へ行ったくるみと亮介は、生徒達だけではなく、教師たちからも囲まれてしまい、2人はため息をついていた。


すると、「あ、人気者が居る~」と言う声が聞こえ、振り返るとセイジとノリ、太一までもが歩み寄ってきた。


くるみは不思議に思いながらも、セイジに声をかける。


「あれ? どうしたの?」


「訓練ダンジョンのゲート、修復が終わったからチェックしに行く。 3人も来い」


「3人?」


「葵、お前もだ」


「は、はい!!」


6人は装備を変えながら歩き始め、ゆっくりとゲートの中に消えて行った。




     ~fin~

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