第108話 case108

「さぁどうするか」


父親は母親から回復を受けながらマナポーションを飲み、小さく呟くように言うと、くるみは少し考えた後、父親に切り出した。


「ドーンは?」


「あんなの直撃したら、シェルター自体が壊れる」


「そっか… あ、無属性の大剣ある?」


「無属性? あるぞ。 今度公表される、最新式の無属性の大剣。 俺の鎧と同じで、特種幻獣の大剣だ。 この前俺が開発した! 能力は全装備で最高値をたたき出してるし、耐久度もかなりすごいぞ!」


父親はドヤ顔でくるみに手渡すと、くるみはそれを手に取り、葵に「物理アップ頂戴」と切り出した。


葵は「は、はい!」と言った後、物理攻撃アップの補助魔法をくるみにかけ、くるみは剣を持つ手に力を籠める。


「飛んで行っても無駄だぞ?」


父親が言うと、くるみは勢いよく駆け出し、「おりゃああああ」と叫びながら槍投げのようにそれを投げた。


セイジはそれを感じ取り、大剣に向かって光の魔法を放ち、大剣の速度を加速させる。


セイジのはるか前にいた太一は、アンクレットを装備している足で、飛んできた大剣を、サッカーのシュートのように思い切り蹴り出した。


その先にいた亮介は、思い切り大剣を振り抜き、野球のように大剣を打ち出すと、大剣の勢いは増し、ぐんぐん突き進んでいた。


くるみの投げた大剣は、まるで通り道を作るように、魔獣の群れを切り裂き、1本の道を作り出していたが、途中で勢いを落とし始める。


すると、ハンマーを担いだノリが魔獣の死骸の上に現れ、「いっけ~~~!!」と叫びながら、ゴルフのようにフルスイングをした。


勢いを落としていた大剣は、再び勢いを取り戻し、骸骨の胸に突き刺さる。


その瞬間、くるみは右手を掲げ、左手で右手の手首を押さえながら、思い切り力を込めた。


くるみの右手から放たれた魔力は、投げられた大剣を勢い良く回転させ、氷の魔法を放っているラミアの体を何度も切り裂き、血の雨を降らせていた。


「やった!!」


葵が叫ぶと同時に、くるみの投げた大剣は勢いよく飛び出し、亮介の目の前に突き刺さる。


亮介は少し笑いながら「使えってことか?」と言いながら、それを手にし、魔獣の群れの中へ。


くるみはマナポーションを飲み干した後、アックスを担いで魔獣の群れの前に立ち、父親も肩を並べるように並んで立っていた。


2人は無言のまま右手を掲げ、くるみは氷、父親は炎の道を作り上げると、氷と炎の道の間には、激しい落雷が起きていた。



いつの間にか葵の背後にいたノリは、その光景を見て「おおお!! 親子のプリンセスロードは激しいねぇ。 青と黄色と赤だよ。 まるで信号だね」と言うと、母親が小さく笑い「なんか悔しいなぁ」と言いながら歩き始める。


母親はくるみの横に立つと、その横で緑色の強烈な回復弾を放ちはじめ、魔獣たちは弾き飛ばされる。


3人は揺らめく虹色の道を作りながら、魔獣を消し去り続けていた。


「押し込め!!」


セイジが怒鳴りつけると同時に、周囲にいた人たちは、虹色の道の中に魔獣を押し込んでいた。


全ての魔獣が消え去った後、修復中のシェルターが閉じ、集会所の地下では大きな歓声が上がっていた。


「す… 凄すぎるわよあんたたち…」


りつ子は涙を零しながらそう呟いていた。


悠馬は呆然としたまま立ちすくんでいると、千鶴がその横に立ち「あんたの手に負える人じゃないよ」と、小さく呟くように言っていた。


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