闇の中

雨世界

1 ……いつか僕たちと、さよならできるといいね。

 闇の中


 登場人物


 闇 やみ 暗い心を持った女の子


 罰 ばつ 罪を背負った男の子 双子 やんちゃ


 罪 つみ いなくなった男の子 双子 おとなしい


 黒 黒い鳥 にっこりと笑う不思議な鳥


 プロローグ


 ……私は、ここにいてもいいのかな? (いいに決まってるよ。だって君は、生きているんだから)


 本編


 おまじないの呪文


 やみやみ。真っ暗闇。(……囁くような、誰にも聞こえないような、とても小さな声で)


 ……いつか僕たちと、さよならできるといいね。


 古い病院


 闇は鏡に写ってる自分の顔をじっと見つめていた。そこには確かに、見慣れた自分の顔が写っていた。


『君は呪われている』

「……私は、呪われている」


『誰も君を助けてなんかくれない』

「……誰も、私を助けてなんてくれない」


 闇がそうつぶやくと、黒い鳥はにっこりと笑った。


『君は永遠に一人ぼっち』

「……私は、……永遠に一人ぼっち」


 そこまで言葉を言ったとき、……自然と闇の大きな黒い目から涙が溢れた。


『……どうして君は、泣いているの?』

「……」


 闇は無言。


 ……そんなの、私にもよくわからないよ。……私は馬鹿だから。自分のことも、よくわからないんだ。……ふふ、なんだか、すごく変だよね。


 そう思って、闇は笑う。


 窓の外には、真っ白な雪が降っている。

 その雪の降る風景を見て、闇は今が冬の季節であるということを思い出した。……どうりで体が、(……心が、凍えるほどに)冷たいと思った。


 闇は白い息をはいた。(息が白い。それは私がまだ生きている証拠だった)


 それからにっこりと(曇った鏡の中で)また笑うと、闇は薄暗い、ちかちかと切れかけた電灯が点滅する古い洗面台の前を移動して、ゆっくりと歩いて、ぎーと言う音を立てて、裏口のぼろぼろの木製のドアを開けて、一人、雪の降る真っ暗な夜の中へと、消えていった。


 ……冷たい雪の降る真っ暗な夜の中。

 そこが、十年間生きてきて、ようやく見つけた、闇が(一人の孤独な女の子が)たどり着いた、『この残酷な世界の中で、一番安心できる場所』だった。


 ……どうかお願いします。誰か、あの子を救ってください。


 誰かがどこかで(きっと、暗い闇の中で)そう、つぶやいたような気がした。

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