第149話 合宿の情報を仕入れよう

 とはいえ、念のために聞いておかねばなるまい。

「なにか困ったことなどはあったか? バランスが崩れたとか……」

「身体の動かし方や魔力の操作に関しては全くありません」

「つまりそれ以外になにかあったのか?」

「……いえ、対したことではないのですが」

「どんな小さなことでも教えてくれ」

「はい。ありがたいことに剣が速くなったことで……」


 自主練をしていたとき、アルティはいつものように剣を思い切り振って、刀身が欠けたらしい。


「なるほど。そういうこともあるのか」

 武器はそのものの力量にあったものがよい。力量が上がれば、当然武器も変えるべきだ。

 後で、アルティたちの武器も作るべきだろう。


「他には何かあったか?」

「他にはありません」

「そうか、ならばよかった」


 それから俺はゼノビアに尋ねる。


「ゼノビア。合宿に参加することにした訳だが、教員は何人同行するんだ?」

「はい。生徒の前に出る三名と、基本的に生徒に見つからないように動く助手が五名です」

「生徒のチーム数が七なのに、八名同行するのか」

「一人ぐらいは余裕を見た方が安全ですから」

「確かにそうだな。助手五名も救世機関の者たちなんだよな」

「はい。一流のものたちでありますが、アルティと同じくらいのキャリアのものが中心です」

「私も合宿の助手はやったことがあります」


 アルティは救世機関の中では年が若く経験の浅い者ではある。

 だが、腕前的には一流である。


「助手もアルティ程度に強いのならば、心強いな」

 遭遇するのが強力な魔物程度ならば、生徒たちは安全だろう。


「ありがとうございます。ですが……」

「懸念はわかる。魔人などに襲われたら安全とも言い切れないだろうな」

「はい。それに今回は教員を狙っていると思われますし」

 救世機関の中でも凄腕だである教員を倒せるレベルの敵となると、確実に魔人が出てくるだろう。


「気をつけよう。ところで教員たちは俺の存在を知っているのか?」

「知りません。ご希望とあれば教えますが……」

 俺がエデルファスの転生体であることは最高機密。

 知らない者は少ない方がいい。


「いや、教えなくていい。襲撃計画のことは?」

「それは教えています」

「わかった」



 その後、多少雑談してから総長室から退室した。

 そして俺はアルティと分かれた後、ドゥラの部屋へと向かった。

 アルティとティーナ、ロゼッタの武器を作るためだ。 


「アルティは剣、ティーナは杖で、ロゼッタは弓はもう作ったから、短刀かな」

「フムフム」


 いつものようにドゥラが至近距離で見つめてくるなか、俺は武器の製作を続けた。

 素材はドルフレアからもらった竜の鱗やミルトたちにもらったオリハルコンなどの金属だ。

 それを魔法を用いて、適切な割合に混ぜ合わせていく。


「マリョクのリョウも、マリョクのソウサもスゴイ」

「ありがとう。武器製作には大分なれたからな」

「ソザイをツクルホウホウもザンシン。ウロコをキンゾクとマゼアワセルのがスゴイ」

「俺は鍛冶の神と金属の神、それに竜神の弟子でもあるからね」


 俺には神から授けられた知識がある。

 素材を手に入れて、加工のための魔力量と操作技術を身につけたら高度なことが出来るのだ。


「スゴイ。リュウもシラナイカコウホウホウ」

「ウィルは凄いんだよー」「すごいねー」


 ドゥラの頭の上に乗ったルーベウムは自慢げだ。

 そして、フィーはそんなルーベウムの背に乗っている。

 

 一方、シロとフルフルは隣の、いつも俺たちが訓練している部屋で元気いっぱいに遊んでいる。

 広いだけでなく、訓練に耐えられるように部屋全体に強化魔法がかけられているので暴れても大丈夫なのだ。


 ドゥラたちに見守れながら、俺は素材の加工が終える。

 それから武器を魔法で成型していく。

 それぞれに合せて、形だけでなく重さや強度を考慮しなければならない。

 もっとも気合いを入れなければならない工程である。


 数時間後。

「よし。完成だ」

「ミゴト」

「すごい!」「…………」

 ドゥラとルーベウムは褒めてくれたが、フィーは完全に眠っていた。


「いい出来だと、自分では思うのだが……。明日渡して使ってもらってから最後の調整しよう」

「ドゥラもナニカツクル」

「それはいいな」


 俺の武器製作を見て、ドゥラの製作意欲も刺激されたようだった。

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