第144話 技能習得の続き

 俺は弟子たちに全力で気配を消させて、チェックする。

 それぞれに差はあるが、一通り出来てはいる。

 一番うまいのがレジーナで、下手なのがミルトだった。ディオンとゼノビアはその間ぐらい。

 とはいえ、四人とも技量に大差はない。


「うん。いいだろう。あとは練習あるのみだな」

「「「「ありがとうございます!」」」」


 弟子たちは四人が声をそろえてお礼を言った。


「ドゥラはまだまだ。きゅる」

「GRRR。メンモクシダイもゴザイマセヌ」

「また教えてあげるからきにしなくていいよー」

「ミにアマルコウエイ」


 口調こそ硬いが、ルーベウムとドゥラも、竜同士仲良くなっているようだ。

 雰囲気がそんな感じだ。


 一番汗だくだったディオンが言う。


「これで部下たちにも教えられます」


 ディオンは竜人で鱗に覆われているが、ルーベウムやドゥラと同じく恒温である。

 汗腺は、一般的な人族に比べて少ないがあるので汗をかく。


「ディオン、とりあえず汗を拭きなさい。風邪をひくぞ」

「ありがとうございます」


 ディオンはタオルで汗を拭き始める。

 タオル自体は普通の大きさなのだが、ディオンが大きいので相対的に小さく見える。


「手伝う。きゅる」


 そういって、ルーベウムがこっちを見るのでタオルを渡す。

 すると、ルーベウムは羽をバタバタさせて、ディオンのもとに飛んでいき汗を拭く。


 ルーベウムもディオンには色々お世話になっている。

 日頃の恩返しをしたいのかもしれない。


「ルーベウム、ありがとうございます」

「きにしなくていいよ! きゅる」


 そんな二人を見ながら、俺は尋ねる。


「部下って言うと諜報部門の者たちか?」

「そうなります。気配察知に気配消しの能力が必要なのは彼らですからね」


 諜報部門は枢機卿の作戦に気づけなかった。

 それどころか、魔人の勇者の学院への侵攻、その発見にギリギリまで察知できなかった。

 それは諜報部門の失態であり、能力不足を露呈した形になる。


「だが、ディオンが教えるなら、安心だな」


 弟子たちと同じことができなくとも、察知能力と気配を隠す能力を底上げできればいい。

 それだけで情報戦において、優位に立てる。

 そして、情報戦は救世機関の生命線だ。

 絶対におろそかには出来ない。


「じゃあ、アルティたちには私が教えておこう」


 そう言ったのはゼノビアだ。

 レジーナの方が気配消しはうまいが、教えるのはゼノビアの方がうまいだろう。

 レジーナは感覚派すぎるのだ。


「俺もアルティたちと一緒に訓練する際には教えておくことにするよ」

「師匠、心強いです。ぜひお願いしますね」


 するとドゥラが言う。


「ウィル。ココでクンレンシテホシイ」

「いいのか?」

「イイ。シコウなるクンシュサマにもアエル」

「すまない。すごく助かるよ」

「GRR。ウィルはリュウジンサマのデシ。トクベツなカタ。ドゥラもコウエイ」


 ルーベウムほどではないが、竜神の弟子である俺も特別な存在とみなされているようだ。


「きゅるー。ウィルは、ルーの兄弟子。お兄ちゃんみたいなもん」

「……まあ、そうかもな」

「きゅるるるるる」


 ルーベウムが嬉しそうに、尻尾をふりふり飛んできて、俺の顔にしがみつく。



 とはいえ、ルーベウムは竜神から教えを受けてないので竜神の弟子ではない。

 だが、ルーベウムは竜神の子どもみたいなものである。

 そして、弟子もまた子どもみたいなものだ。

 ならば、俺はルーベウムの兄と言っても過言ではないのかもしれない。


 ルーベウムだけでなくシロやフルフル、ルンルンも俺の弟妹みたいなものなのだが。


 それから俺はミルトと協力して、ドゥラの家と俺の部屋を地下通路でつないだ。

 ルーベウムが遊びに来やすくなって。ドウラはとても喜んでくれた。

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