第19話 鐘の音

始まりを告げる鐘は鳴る。


歌うように。


夜明けを言祝ぎ、街を照らす太陽を賛美する。


鐘の音は寄せては返す波のよう。


町並みにしん、と染み渡っては消えてゆき、


再び音が世界を揺らす。


鐘を鳴らすこの瞬間は、私のもの。


この夜明けも、この町並みも、昇ってくる太陽さえも。


頬をなでて過ぎ去ってゆく風だって。


この鐘の音が響く限り、


塔から見下ろすこの世界は、私だけのものだ。

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