第465話 特待生選抜試験~野手編~④

 打席に立つ101人目のバッターを見て、鈴井監督は期待を膨らませていた。


(笹野亮介。中3にして身長は185センチ。ベースランニングと遠投の成績はどちらも上位5位以内か。外野の守備も悪くなかったし、こいつはかなり期待できるぞ)


 そんな笹野の1球目の打席は……。


「ブン!」


 豪快なバットのスイング音を響かせるも、空振りに終わった。


(あの豪快なスイング……当たればかなり飛ぶはずだ)


 しかし、2球目3球目と打撃試験が進んでいき、ついに10球目の打席が終わっても、とうとう笹野の豪快なスイングに球が当たることは1度もなかった。


(なんだ……ただのフィジカルモンスターだったか)


 鈴井監督は気を取り直して、吉田、川合、比嘉と1打席ずつ対戦してもらう二次試験へと進んだ6人の様子を見守ることにしたのだが……。


 1人目、2人目、3人目、4人目、そして投手志望では最有力候補だった5人目の飯沼までも、この3人の投手相手に全く良いところを見せられないまま1つのヒットも打てずに二次試験が終わっていった。


(まあ予想はしていたものの、ここまであっさりと抑えられてしまうとはな。せめてファールで粘るくらいの気合は見せてほしかったが、まあ仕方ないか。だがまだ中村が残っている。まあヒットは無理でも、せめて前に飛ばすくらいの健闘は見せてくれよ)


 そんな中村と最初に対戦する吉田は、カーブ、スライダー、そして1番得意なチェンジアップと、変化球のキレが絶好調だった。


(こいつは確か、ゴルフ打ちで低めの球ばかりデカい当たりを打ちまくってた奴たい。普通に高め中心に投げれば簡単に打ち取れそうたいが、それじゃあつまらんばい。幸い今日の吉田先輩は変化球がキレッキレだばってん、あえて得意の低めを攻めて抑えることで格の違いを見せつけるのも面白そうたい)


 そんな考えであえて低めのコースにミットを構える西郷と、黙って頷く吉田。


(こちとら甲子園投手だ。あんなふざけたバッティングフォームの中坊相手に打たれてたまるか)

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