第345話 ここしかない!
鈴井監督の願いが通じたのか、あれだけフォアボールを連発していた川合が、1番佐藤2番雨宮と2者連続でフォアボールを出さないままどちらも内野ゴロに打ち取っていた。
(ミットを構えた位置にドンピシャ、とまではいかないばってん、この回は珍しく川合のコントロールがストライク先行で安定しているたい。このまま最後まで安定してくれればありがたいばいが……)
キャッチャーの西郷がそう願う中、打席に上がる3番田所はこんなことを考えていた。
(2者連続でフォアボールを出していない。フォアボールどころかボール球すらそれぞれ1球ずつしか与えていないとなると、もうフォアボール狙いはやめた方がいい。普通にヒット狙いでいくぞ)
初球、川合の投げたストレートは外角の低めいっぱいに決まった。
「ストライク!」
(球速のあるお辞儀ストレート。最初はびっくりしたが、ようはただのひどい棒球だ。冷静に見極めれば、俺に打てない球ではない)
2球目、内角高めに構えた比嘉のミットから、中よりの甘いコースに外れた川合のストレートを、田所はうまくバットをかぶせながら1塁線へと弾き返した。
「カキーン!!」
ファーストを守る安達が必死にダイブするも、打球は安達のミットをかすめてそのまま1塁線をなぞるように転がっていく。ライトを守っている比嘉が必死に追いかけてボールを拾った頃には、すでに田所は2塁に到達しようとしていた。
(2アウトからのランナー2塁、このピンチで迎えるバッターが4番の角田か。絶対に打たれたくない場面……比嘉を投入するなら、ここしかない!)
鈴井監督はタイムを取ると、再び比嘉をマウンドに上げた。
「くっそ、せっかく調子良かったのにヒット1本打たれたくらいで交代かよ」
そう愚痴をこぼしながら、渋々比嘉にマウンドを譲る川合。
(今日投げられる球はあと6球……ここは無駄球を使わず三球三振で終わらすぜ)
打席に上がった4番角田に対して、初球は浮き上がるストレート、2球目は普通のストレートでリズム良く2ストライクを奪う比嘉。
(ようし、このまま三振だ!)
そう意気込みながら3球目の浮き上がるストレートを内角高めへと投げる比嘉。しかし、角田はこの時すでに、比嘉の2つのストレートをかなりの精度で見極めていた。
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