第51話 ヒャハハ
「邪魔だ、痴れ者めが」
サルヴィオを斬って捨てたクレイは冷酷に言い捨て、
その瞳は既に、正気とは言い難かった。
「また会ったな、太古の怪物よ。期待通り、随分と暴れてくれたものだ」
『ォォォォォゴオオオオオオオオオオッ!!!』
空に向かって咆哮を奏でる
そんな
彼女たちの目にも、クレイの姿が映る。
彼の姿を見て、誰よりも驚いたのはマイカだった。
「クレイ……!? アンタ、どうしてここに……!」
「フン、貴様らはまだ生きているのだな。残念だ、惨めに潰されていることを期待していたのに」
チッと舌打ちするクレイ。
彼は剣の切っ先を掲げ、
「だが丁度いい。お前たち『追放者ギルド』の目の前で、俺がこのエンシェント・ドラゴンゾンビを葬ってやる。そうすれば、俺はまた世界から認められる……栄光を取り戻せるんだ……ク、ククク……!」
クレイは構えた剣を、
「古の竜よ! かつて神と呼ばれた厄災よ! 貴様の不死は、この俺が終わらせてみせよう! 〝勇者〟となる者の一撃――――受けるがいい!」
大きく剣を振り被り、
「ハアアアアアアアアアアッ!」
そして―――
『ォォォゴオオオオオ!』
「どうだ! 竜殺しの力を持つ者に脳天を貫かれる感覚は! これで貴様は死ぬのだろう、醜い化物め!」
勝利を宣言するかの如く、クレイは高らかに叫ぶ。
――そう、これこそヒルダがクレイに教えた
竜を殺した過去を持つ〝ドラゴンスレイヤー〟、その称号を冠する者だけが
そう教えられて、クレイは言われた通りに
しかし――――
『ォォォゴオオオオオッ!』
「な――!? うわあッ!」
地面に叩きつけられるクレイ。
そんな彼へ、
「ひ……っ!? ど、どういうことだ!? ヒルダの話と違う!」
クレイは錯乱し、怯え竦む。
そんな彼の耳に、女性の声が届いた、
『――クレイ、聞こえるかしらぁ?』
「ヒルダ……!? この声はヒルダなのか! どこにいる!?」
『探しても無駄よぉ、この声は魔術で思念を飛ばしているだけだからぁ。それよりも残念だったわねぇ、エンシェント・ドラゴンゾンビを殺せなくて』
「どういうことだ! お前の話では、竜殺しならアイツを殺せるはずだろう!?」
『ええ、私はそういう
「か、仮説……? 実験……? ヒルダよ、なにを言って……」
『難しく考えることないわぁ。あなたに
クレイは絶句し、頭が真っ白になる。
そして、ようやく気が付いた。
自分は――最初から最後まで、利用されていただけなのだと。
『これからそのドラゴンは街という街を蹂躙し、何千何万という人々を虐殺するでしょうね。もしも後世なんてものがあれば、あなたはそんな悪魔を解き放った大罪人として歴史に名を残せるかも。でも大丈夫よ、クレイ。あなたの骸だけは、ずっと私が愛してあげるわぁ♪』
「ヒルダ――――ヒルダああああああああああッ!!!」
クレイの怒りと怨嗟の叫びが、『デイトナ』の街に木霊する。
――
その前足は無情にも振り下ろされ――――1人のSランク冒険者の生涯が、幕を閉じた。
「クレイ――! こ、攻撃を再開して! アイツの動きを止めるの!」
「は、はい!」
ハッと我に返ったマイカやヴィリーネたちは、再び攻撃を再開する。
しかし、
「! きゃあッ!」
攻撃の寸前、一瞬の隙を突かれたヴィリーネは骨の尻尾に弾き飛ばされてしまう。
3回だけ物理攻撃から彼女を護るマイカの【
「ヴィリーネ先ぱ――! うわッ!」
マイカも足場の家屋を崩されて、瓦礫の中へ沈む。
ヴィリーネとマイカの脱落という状況に冒険者たちは遂に戦線を維持できなくなり、ライドウやメラースも次々と
『ォォォォォゴオオオオオオオオオオッ!!!』
絶望という名の咆哮が響き渡る。
もはや、太古の怪物を止められる者は残ってはいない。
だが――そんな中で、1つの人影がゆらりと立ち上がった。
「…………ヒャハハ……!」
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