第21話 【巫(かんなぎ)の祝福】
耳と尻尾の形状から見て、たぶん狐の獣人族かな?
地域によっては人間と同じくらい獣人族が冒険者をやってる場合もあると聞くが、俺の住んでいた辺りでは獣人族は割と珍しかった。
特にSランクパーティに所属している獣人族の冒険者は、初めて見る。
そんな可愛らしい外見のマイカという冒険者は、尻尾を逆立てながらパーティリーダーに威嚇する。
「む、無茶苦茶だわ……! こんな横暴、ギルドが許すワケが――!」
「我らが所属する『ヘカトンケイル』は、貴様の追放を容認してくれたぞ? それどころか、ヴォルク様から直々に許可して頂いた。我がギルドに、弱者は不要だとな!」
「そんな……!」
……ああ、またか。
ついこの間も、全く同じような光景を見た気がするな。
追放されるヴィリーネと、無能なサルヴィオって構図で。
――ただ、以前と違う点があるとすれば……
「もう諦めなさいな、小狐ちゃん。このパーティの魔術師は、私って決まったんだから♪」
そう、妖しいオーラをまとった女性が1人、いることだろうか。
甘ったるい声と共に、大きなウィザードハットを被った魔術師の女性が歩み出る。
胸元と肩を大きく露出し、妖艶な雰囲気を醸すその魔術師はパーティリーダーの腕に抱き付く。
「『アイギス』の魔術支援は、
「その通りだ、美しいヒルダよ。お前の屍術は恐ろしいまでに強力だぞ、ククク」
もしなにも知らない者が傍から見れば、この2人の組み合わせは美男美女のカップルにでも映るだろう。
だが事情が事情なだけに、どうにもヒルダという
というよりハッキリ言って、あのクレイというパーティリーダーが籠絡されたようにしか見えない。
マイカはヒルダをキッと睨み付け、
「アンタがクレイを言いくるめたのね……! ちょっとサイラス、なんとか言ってやってよ!」
「悪いな、マイカ。これはもう決まったことなんだ」
パーティの
全身を覆い尽くすほどの重甲冑を着込んだ彼は不敵な笑みを覗かせ、
「確かにお前は俺たちパーティの魔術師として貢献してきたが、問題がなかったワケじゃない。自分でもよく理解してるだろ? お前は魔力量が少なすぎる。それが足を引っ張ったことも、何度かあった」
「そ、それは……!」
「俺たち『アイギス』に最低限必要なのは、あらゆる攻撃を無力化するこの俺と、リーダーのクレイだけだ。それに……ヒルダはいい女だからな」
サイラスは如何にも下心のある感じでヒルダを流し見る。
ヒルダも「あら、ありがとう♪」とヒラヒラ手を振るが、相変わらずクレイに抱き着いたままだ。
……なんというか、あのヒルダという
それにしても――〝あらゆる攻撃を無力化〟だって?
〝耐える〟でも〝弾く〟でもなく、〝無力化〟――
幾ら防御力の高い
……なにか、裏がありそうな気がする。
俺は久しぶりに、【鑑定眼】を使ってみることにした。
「……【鑑定眼】」
目を瞑り、そして【鑑定眼】を発動させて再び瞼を開く。
マイカたちの前に〝隠しスキル〟が表示され、彼女たちの能力が露わになる。
まずは、サイラスの方を見てみよう。
=======================
スキル【鉄壁の盾】
全ての物理攻撃を50%軽減する
また自身の防御力より相手の攻撃力が
低かった場合、相手からのダメージは
全て1になる
=======================
……なるほど、大口を叩くだけのことはある。
これは
敵からの攻撃を一手に引き受ける
オマケに、相手の攻撃力より自分の防御力が高ければダメージが1しか受けないのも強い。
Sランクパーティの
ダンジョンの道中に出てくる雑魚モンスターくらいの攻撃であれば、ほとんどの攻撃が通らないはず。
無力化というのは流石に言い過ぎだが、あながち完全な嘘でもないのだろう。
パーティ名が『アイギス』というのも、おそらく
神の盾を名乗るのは伊達じゃない、ってコトか。
……だけど、不可解な点がある。
何故なら、それだけじゃ〝あらゆる攻撃を無力化〟することにはならない。
――そう、攻撃には大きく分けて〝物理攻撃〟〝魔術攻撃〟〝状態異常〟の3つがあるからだ。
いくら物理攻撃を防げても、魔術攻撃を防げねば完璧とは言えない。
大抵の場合
さらにモンスターには物理攻撃と同じくらい魔術攻撃と状態異常を使ってくる個体も多いため、
それを無視して〝あらゆる攻撃を無力化〟とは……
これはおそらく――
俺は次にマイカの方へと目を向ける。
そして彼女の前に浮かび上がっていた文字は――
=======================
スキル【
1度の戦闘で味方1人への物理攻撃を
3回まで無効化
一定時間毎に味方1人の体力を微量に回復
また味方1人への魔術攻撃・状態異常を完全に
無効化させるが、代わりに自身の魔術量の
上限値が大きく減少
=======================
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます