第15話 ギルド創設の申請に行こう


 地下迷宮ダンジョンで依頼のペンダントを見つけ出し、多額の報酬を入手してから、さらに数日後――


「よし、これだけ蓄えがあればしばらく大丈夫だろう」


 宿の一室で、俺はテーブルの上に並べた金貨を数えながら1人で呟いた。


 地下迷宮ダンジョンでペンダントを見つけた一件からしばらく、俺たちはカガリナから幾つかの〝内処理の依頼〟を回してもらい、報酬を得ていた。


 ペンダントの依頼の報酬額が、ギルド創設&運営の基盤金になったのは間違いない。


 それでも、ギルドを創設して団員を増やしていくことを考えると、もう少し余裕が欲しかったのだ。


 だから幾つか依頼を受けていたのだが――自らの〝隠しスキル〟に自信を得たヴィリーネの力は凄いモノだった。


 難易度が高く面倒なアイテム探しでも半日と掛からず終わらせ、Aランク程度のモンスター討伐でも弱点を的確に突いて一撃必殺で倒してしまう。


 もう下手なSランク冒険者よりも手際よく依頼を達成してしまう感じだった。


 ……途中から「あれ? 俺、一緒にダンジョンにくる必要あったのかな?」などと思ってしまったけど。


 というより、実際本当になにもできなかったというか……ヴィリーネが1人で済ませてくれたというか……


 ぶっちゃけ、ダンジョンでの俺は完全にいらん子だったよ、うん。


 でもまあ、喜ぶ彼女の笑顔が見れただけでも善しとしよう。


 そんなこんなで――遂に、ギルドの運営費が貯まった。


 となれば、あとは冒険者ギルド連盟に申請を出すだけだ。


 そう――『追放者ギルド』創設の申請を!


 なんて思っていると、コンコンと部屋の扉がノックされる。


「おはようございます、アイゼン様。入ってもよろしいでしょうか?」


 扉の外から聞こえてきたのは、ヴィリーネの声だった。


 これでも俺は早起きして金貨数えをしていたのだが、彼女も早起きだな。


「ああ、どうぞ。もう起きてるよ」


「失礼します。アイゼン様、今日の予定は――あっ、もうお仕事されていたんですね! こんなに早起きされて、尊敬します!」


 朝から屈託のない無垢な笑顔を見せてくれるヴィリーネ。


 金貨を数えるだけの作業を仕事と言ってくれるとは、本当に俺はいい部下を持ったなぁ。


「キミだって十分早起きだろうに。それと、今日の予定だけど……冒険者ギルド連盟の本社に行こうと思う」


「! ということは、いよいよ――!」


「うん、『追放者ギルド』の申請を出すよ。ヴィリーネのお陰で資本金も十分だからね」


 俺の言葉を聞いたヴィリーネは「やったあ!」と両手を掲げ、ガッツポーズする。


「遂に、アイゼン様のギルドが立ち上がるんですね! 感激です! アイゼン様なら多くの追放者を救ってくれると、私信じてます!」


「お、大袈裟だなぁ……。まだ申請を出すだけで、ギルドの活動を軌道に乗せるのとは別だからね……?」


「はい、わかってます! 私、精一杯頑張りますから!」


 喜びを体現するかのように、ピョンピョンと跳ね回るヴィリーネ。


 本当にわかってるのかな?


 けど、こうやって我が身のことのように喜んでくれるのは、俺も嬉しい。


 俺もギルドマスターとして頑張らないとって気持ちにさせてくれる。


「それじゃあ、準備をしたら出るとしようか。今日は本社のある『ビウム』まで行くよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る