第11話 冒険者ギルド代表会議①


 冒険者ギルド連盟――


 それは、数多く存在する冒険者ギルドや冒険者を統括する組合のことである。


 冒険者を名乗るならば必ず冒険者ギルドに所属する決まりであり、冒険者ギルドを創るならば必ず冒険者ギルド連盟に加盟する決まりとなっている。


 これは冒険者全体の利益を守り、冒険者同士の無益な争いを防ぎ、そして冒険者ギルドを循環させ発展させるための決定事項なのだ。


 冒険者に関わるギルドの設立においては、申請は冒険者ギルド連盟を通さなくてはならない。


 もしアイゼンが『追放者ギルド』を創ろうとするならば、冒険者ギルド連盟にその名を連ねることになるだろう。


 ――そんな冒険者ギルド連盟は半期に1度、4名の重鎮が集まって集会を開くことになっている。


 界隈で最も影響力のある3つの大手冒険者ギルドの代表と、冒険者ギルドの全てを取り仕切るたった1人の総代。


 冒険者ギルド『アバロン』のギルドマスター〝ライドウ・カグラ〟


 冒険者ギルド『ヘカトンケイル』のギルドマスター〝ヴォルク・レオポルド〟


 冒険者ギルド『アリアンロッド』のギルドマスター〝メラース・アイルーシカ〟


 冒険者ギルド『総代』〝ジェラーク・ファルネーゼ〟


 この4名である。


 彼らは〝四大星帝クアッド・マスターズ〟と呼ばれ、冒険者ギルドの未来を決める権利を有する。


 まさにギルドマスターの中のギルドマスターなのだ。


「それで……またこの4人がガン首揃えて集まったワケだが、なにか話すことなんてあんのか? 俺は忙しいんだけどよ」


 獅子のたてがみのように生え揃った金色の髪と髭を持つ巨漢ヴォルクが、つまらなそうに言った。


「話があるから集まってんだ。それに、こういう名目でもなけりゃオレたちが集まることなんて永遠にないだろう」


 退屈そうなヴォルクに答えるのは、目元が隠れるほど深めにバンダナを巻いたいぶし銀な男ライドウ。

 ヴォルクもライドウも40を過ぎた中年男性だが、両者とも歳を感じさせないほど肉体は筋肉質でガッチリとしている。


 そして大手冒険者ギルドを率いるボスとしての風格と貫禄、そして覇気をまとっている。


「そうねぇ、皆自分のギルドのお仕事で手一杯だもの。でも、アタシは2人に会えて嬉しいわぁ」


 この場にいる面子の中で1人だけ異様に若々しい――というより幼い風貌の女性、メラースがクスクスと笑う。


 子供のような見た目と妖しい雰囲気を併せ持つの彼女は、ヴォルクやライドウと比較にもならないほど華奢だが、ただ者ではない佇まいなのは同様だ。


「チッ、女豹が……俺はてめえに1番会いたくなかったってんだよ」


「あら残念。それなら今度は個人的に会いに行ってあげようかしら?」


「2人とも、無駄話はそれくらいにしておけ。――それじゃ総代、集会を始めるとしよう」


 ライドウが、上座に座る初老の男性に対して言う。


 そして冒険者ギルドの総代、長い白髪のジェラークがゆっくりと顔を上げた。


「うむ……皆ギルドの経営で忙しい中、大儀である。この顔ぶれで集まるのも、此度で10回目となるか」


「御託はいいんだよ、ジジイ。さっさと始めろや」


「……お主は相変わらずだな、ヴォルク。まあよい、半期の損益報告など聞くまでもあるまいからな。――今日交わすべき議題は、主に2つある。まず1つ、既に皆知っていると思うが、洞窟ダンジョンに住み着いたアクア・ヒュドラについてだ」

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