最終話

 授業中、窓の外がチカッと光り、生徒会棟から騒音が聞こえる。

 プツッ、というノイズ鳴り、校内放送がスピーカーから流れる。


崇蔓すつる美円みまるさん、可楽須からすくろすさん、なかなしくびきさん。速やかに生徒会室まで来るように。繰り返します。崇蔓美円さん、可楽須亜さん、尖剄さん。速やかに生徒会室まで来るように」


 そうして放送はプツッとノイズを残して終わった。


 俺の名前は当然のように呼ばれず、またかつてのようにクラス中で囁き合う声が漏れる。

 教師がそれを困った顔で一瞥し黒板への板書を続ける。


 隣の席の魔王は、俺の顔を心配そうにのぞき込んだ。

 それに対し、俺は特に気にしてないと微笑みを返す。


 別にヒーローとして求められなくたってかまわない。

 困っている人がいれば助ける。

 それはヒーローでなければできないことじゃない。

 自分に恥じないように行動する、そう思ってれば誰に笑われたってかまわない。


 教室のドアが開き、飾磨しかまが転がり込んできて、勢い良く教卓にぶつかった。

 それだけで不穏な燃料で満たされていた教室内に火がついたように爆笑が起こる。


笹咲さささきさん。一人だけ楽しようったってそうはいきませんよ」

「やっぱりお前がいないとしまらないんだよな」

「いざ立ち上がれ勇者よ。我らには君が必要だ」


 尖が、可楽須が、崇蔓が現れて口々にそう言った。

 教室の爆笑が、一気に消火され、燻るような驚きと不安の声に変わった。

 そこに再びプツッとスピーカーのノイズが入る。


「笹咲十慈はリーダーなのだから呼ばれなくても当然来るように。一刻も早くだ」


 祝桜いわおうの不機嫌そうな声が響き、プツッとノイズが鳴った所で飾磨が飛び起きた。


「いくぞ、ブラジャスガイ、出動じゃんか!」


 俺は椅子を引き教室を見回す。


「言われなくてもそのつもりだったさ」


 俺は制服のシャツを脱ぎ捨てた。



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ヒーローの資格 亞泉真泉(あいすみません) @aisumimasen

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