~ 第二幕 ~ ●∞○

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「それは『和』だね」

 縁は字にして『和』を示す。

「縁のつながりが人と人との円、輪っかをつくり、やがてそれらがさらに結ばれて『和』になる。面白いと思う」

 縁は自分なりに円香のイメージを共有しようと頭を回転させている。

「いかにもコンセプトっぽい感じでよくない?」

「そうだね。サッちゃんにも話してみよう」

「葛城な」円香が茶化して言う。

「円香さんもたまにサッちゃんって言ってるでしょ」

「だって葛城って名前、ちょっとカッコつけすぎじゃない?」

「僕も正直、葛城って響きとサッちゃんはつながらない」

「でしょ?」

 二人で笑った。

「そういえば、たまきさんなんだけど、そのたまきって字も『環』って書けて、やっぱりエンとつながるんだ」

「へぇ、ここまで偶然つながると、本当にご縁ってもんを信じたくなるね」

「たまきさんもいろいろな人とのつながりを持ってる。お多恵さんだって長年小古呂町で過ごしてきただけあって僕なんか頭が上がらないし、ゆらちゃんはこれからどんどん自分の輪を広げていくんだろうね」

「縁、あんた、幸せものだね」

「そうだね、そう思う」

「でも、こんなもんで満足してちゃ、まだまだ小っちゃい男って感じ」

「な、ま、円香さん」

「まだまだ先は長いよ。わたしはどんどん行くからね。あんたがあきらめるようだったら置いていっちゃうかも」

 縁は円香の言葉に一瞬冴えない表情を浮かべそうになるが、すぐにいつものキツネ目の笑顔を取り戻して、

「遅れたり立ち止まったりはあるかもしれません。でもあきらめたりはしませんから」

「そうそうその意気」

 縁を結び続けるというのは実際のところ生易しいもんじゃない。強かったつながりもちょっとしたことで切れてしまうことがある、もろくて繊細なものだったりもする。

 だからこそお互いがつながりを切らさぬよう互いの手を離さない努力をしていかなくてはいけないのだ。


 二人にはまだまだ多くの出会いと受難が待ち受けているはず。

 しかし、それらを語ることがあるとすれば。

 それはまた、次のご縁があるときに。

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縁々∞交処 ~えんとエンの交わるトコロ~ (アーカイブ) 生坊 @tevasaki

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