Level≧Ⅳ

奇苺

1.宮地藍

そのいち


 わたしは影だった。

わたしの人生において、わたしはいつも主役ではなかった。自分の人生なのに主役でないことに疑問を抱いたことはない。わたしは脇役でよかったし、脇役である自分に満足していた。

 わたしの人生の主役は、いつだって姉だった。

姉は平凡なわたしと違って優秀だった。勉学も運動競技もなんでもそつなくこなす、わたしの英雄だった。

 わたしは脇役だ。けれど、それでいい。それがいい。

なぜなら、姉の活躍を一番間近で見れるのはわたしだったのだ。姉の寵愛を一番に受けるのもわたしだったのだ。両親は姉ばかり褒めたが、わたしはそれに何ら不満などない。だって、そんな両親を姉が咎めてくれるから。姉がわたしを認めてくれる。姉がわたしを助けてくれる。だからわたしは姉の影でよかった。姉がいれば、姉さえいてくれるなら、わたしはそれでよかったのだ。

 それで、よかったのに。





 国立東京教育大学。「東京」と名前についているが、実のところこの大学の所在地は茨木県だ。なんでも、キャンパス移築の際改名案が出たものの、当時の学長の「東京」へのこだわりから改名案は棄却されたそうだ。なんとも間抜けな話だが、実のところ、茨木の町にありながら、この大学は都心からのアクセスが非常に良く、東京の副都心駅から電車で一本40分のところに位置している。東京教育大学、通称東教大(読みが全国一の大学と同じことに定評がある。)は全国二か所しかない「遺伝的突然変異体(イレギュラー)の研究室」があり、一か所に大学の有するすべての学部を置く超巨大な学園都市を形成している。そんなわけで、ここに集う学生は誰もが優れた才能の持ち主であり、研究者魂を宿す若き研究者の端くれというわけである。

 そんなキャンパスの一角に、ひときわ目立った集団がいた。ひとりは銀髪という奇抜な染色を施している女子学生。その隣には落ち着いた雰囲気の背の高い女子学生。さらにはなぜか制服を着た中高生くらいの女子生徒。そしてこの集団で黒一点のとくに変哲の無い、ハイネックを着た男子学生の4人組集団である。

 もしこれがキャンパスの中心の方ならば、この数奇な集団に誰もが奇怪な目を向けていたことだろうが、生憎とここはキャンパス最北端の「理学・農学研究エリア」で、キャンパス内でもとくに人気の少ない場所だった。ゆえに、多少奇抜な集団が大声で騒いでいても、だれも気には留めなかったのだ。

「前にも言いましたけど、凪をここへ連れてこないでください!」

黒一点の少年が、銀髪の少女にむかって声を荒げる。鬼気迫るといった気迫があるその抗議の声にも、銀髪の少女は涼しげな顔でどこ吹く風といった様子を崩さない。

「ここは大学よ。だれが入るのだって自由でしょ。それに、今回は凪ちゃん本人が来たいって言うから連れてきたの。藍君がどうこう言う話じゃないわ。」

そうでしょ。と、同意を求める風に、銀髪の少女は制服の少女_凪(なぎ)に視線を移す。

「そう。わたしが小鹿野さんに頼んだの。だから小鹿野さんは悪くないよ。悪いのはわたし。ごめんなさい。」

謝罪の言葉を口にしてはいるが、反省している様子はなく、まさに口だけといった凪に、

「お前なぁ…今日普通に学校だろ。三年って受験で大事な時期なのに、こんなとこに来て油売ってる場合かよ。」

と、少年_宮地藍(みやじあい)はあきれた風でそう言った。 

うしろで銀髪の少女_小鹿野衣織(おがのいおり)の「こんなとこって言い方はなんだー!」という抗議が聞こえたが、藍はスルーした。

「ちゃんと午前の授業は受けたし、午後は体育と試験演習だったから帰ってもいいと思って。」

真顔で、しかしどことなくすねた様子の凪を見て、ますます呆れる藍を尻目に、集団のなかで唯一黙って話を聞いていた少女_吉田結城(よしだゆうき)が、

「とにかく、ここではなんですから研究室へ行きましょう。立ち話も疲れました。」

と雑に取りまとめて、集団を移動させたのだった。





東教大のキャンパス北門から歩いて2分。そのオフィスビルの3階に、その研究室はあった。ゼミの教授の名を冠して、「荒川研究室」と名付けられたそこは、別名「遺伝子的突然変異体(イレギュラー)研究所」と呼ばれていた。むしろ、実際ここを呼ぶときは後者の方がポピュラーな呼称だったりするのだが。

 先ほどの集団、藍、凪、衣織、結城の四人組はその一室の前に来ていた。

「ひらけ~ゴマ!」

という衣織の間抜けな掛け声でかざされたカードキーによって、『ぴっ』という電子音とともに扉が開く。

 中はシンプルな研究室で、雑然とした様子はない。にもかかわらず、不思議と生活感がある部屋だった。

「それで。さっきの続きですが…」

研究室に入って早々、藍がそう切り出そうとすると、

「びゃびゃーーーん‼お待ちしてましたーーーーーーーー‼」

という騒がしい叫びと共に奥の部屋からここの管理者である教授_荒川真(あらかわまこと)が飛び出してきた。文字通り。

「荒川センセー‼こんちわー‼元気してますー⁉」

「トーーーっゼン‼元気ですよー‼って、昨日も会ってるやないかーい‼」

「一日で不調になることもあるんですよ‼」

「確かに‼すまない‼助手に気を使わせてしまうとはッ、不覚‼」

いきなりハイテンションなやりとりをかます荒川教授と衣織の横で、もはや慣れた、という風な三人は、研究室内の椅子に腰かけて嵐が過ぎるのを待っていた。

「とりあえず、お茶でも淹れましょうか。」

返答を聞く前に結城が立ち上がって給湯室へ向かっていった。お茶を入れるのは大体において結城の役目、というのが暗黙の了解になってきている。

「結城―‼あたし紅茶でお願い、ダージリンを60℃で‼」

すぐさま、衣織が細かい注文を入れる。結城は「はいはい」と適当な返事をした。

「で、もう話してもいいですか。小鹿野先輩。」

「藍君もしつこいねー。さっき言ったとおりだよ、文句を言うならせめてあたしじゃなくて凪ちゃんに言いなさい。まあ、堂々巡りでしょうけど。」

衣織はいかにも面倒、という風に藍をあしらう。

「凪に言ったって聞かないんですから、先輩に頼むしかないでしょう。お願いしますよ、凪が学校さぼってここに来るの、やめさせてください。」

「そんなこと言ってもなー。かわいい後輩の頼みだし…。別にいいんじゃないの、成績だって悪いわけじゃないし。」

「そういう問題じゃないんですよ‼」

議題が自分のことなだけに、凪は黙ってそのやりとりを眺めていた。

「そもそも、凪ちゃんはどうして学校サボタージュしてまでここに来たいの?」

そこで、横で同じように聞いていた真が口を挟んだ。

「それは…」

そのまま凪は口ごもってしまった。

「お茶はいりましたよー」

微妙な空気の中、空気を読んだのか読まなかったのか、結城がお茶を運んできた。ご丁寧にお茶菓子のクッキーもついている。

「…その、お恥ずかしながら」

お茶を飲んで一息ついた凪がぽつりと話はじめる。

「学校、嫌いなんです。うまくやっていけてなくて。こっちにいる方が、心が休まるっていうか…」

気まずげにそう告げる凪に、藍は何も言えなくなる。なんとなく、凪が学校でうまくいってないだろうことも察していたのだ。悪いことだとは思えないとはいえ、いやな場所へ送り出していた罪悪感が藍にはあった。

「なるほどね。じゃあいいじゃん。ここに来なよ。」

「えっ」

あっさりそう言ってのけた衣織に、凪も、藍もぽかんとする。

「ちょっとここに来てさ、飽きたらまた学校行けばいいじゃん。大丈夫だよ、みんな凪ちゃんが思うよりあっさり受け入れてくれるって…って、あれか‼もしかしていじめとか?それならあたしが学校に乗り込んで相手をめった刺しにして…」

「ちち違います‼そういうんじゃないです‼」

物騒なことを言い出す衣織を凪が慌てて制止する。

「わたしが、ただ、馴染めないだけで…」

落ち込んだように言う凪に、今度は藍が口を開いた。

「凪、お前やっぱり自分が学校に居ちゃいけない、とか考えてるんじゃねえのか。」

「…そんなことは、ない、と思うけど。」

「嘘つけ。いいか、潮音(しおん)のことは、お前には関係ない。お前はお前だ。」

「…」

藍の言葉を聞いて、凪はまた黙ってしまった。

「…えっと、聞いてもいいのかわかんないけど、潮音さんって?」

その場を代表するように、真が疑問を口にする。

応えていいのか惑った藍は凪に視線をやる。その視線を受けた凪は、真に向き直って、

「私の姉です。その、殺人で、捕まった……」

と、静かに答えた。

流石にこれには、知っていた藍以外の三人が少し動揺する。

「そっか。じゃあ藍君とはどういう関係なの?」

しかし、次の瞬間には、衣織はあっさりそんな質問を口にした。

「えっ、俺ですか?」

「うん。口ぶりからして、藍君もその人と知り合いだったんでしょ。それに藍君が大学生のくせに生意気にも凪ちゃんと同居していることにも関係してるんじゃない?」

衣織の推察に唖然としながらも、藍は

「そうです。潮音は、まあ、俺のバイトの知り合いで、凪とはそれで知り合って、同居してるのも、潮音の頼みというかなんというか」

としどろもどろに答えた。

結局のところ、藍本人も正直凪と自分との関係をよくわかっていなかった。

「バイトって…ああ、そういうこと。ま、いいわ。とにかく、この話はこれで終わりでいいわね。凪ちゃんが来たいっていうなら、あたしはアッシーになるから。」

衣織が藍の「バイト」について余計なことを言わなかったことにほっとしつつ、藍は

「…わかりました。」

と渋々承諾した。

「まあ、アッシーはお嬢じゃなくて私なんですが。」

とそれまで無言で聞いていた結城が衣織をねめつけながら愚痴を零した。





宮地藍と、15歳の少女、凪は二人暮らしで、同居している。しかし、二人は親戚ではないし、まして恋人などといった関係でもない(もしそうなら藍は恐らく捕まっている)。二人の関係は一言でいえば知り合いのきょうだい。およそ普通ではないその生活は、もう2年ほど続いている。藍の知り合いであり、凪の姉であった潮音が、潮音と凪の両親を殺したことで逮捕されてから、ずっと。

 誰かに言いふらすようなことでもないと思っていたため、藍も凪も、それを誰かに告げたことなどなかったが、第三者から見ればやはり異常な関係性にも見えた。

 研究室の三人(衣織、結城、真)は、ふたりの異常な同居生活を知っていて、黙認していた。藍はそんな風に考えていた。

だが、実際のところどうなんだろうか。もともと研究室に引き抜かれたのも、真(もしかしたら衣織)が藍のかつての「バイト」の内容を知ってのことなのだろう。彼らを信用していないわけじゃないが、凪にかつて潮音ともう一人の同僚とともに行っていた「バイト」の内容が露見するのは、藍にとって喜ばしくないことだ。

いろいろと思うところはあったが、つまるところ、藍は失うのが怖かった。研究室のメンバーにも、凪にも、軽蔑されるのが怖かった。自分は軽蔑されて当然のことをしてきたし、自分自身も軽蔑されてしかるべき存在だ。わかってはいたが、それでも、藍は軽蔑されることを嫌った。だれに対しても。ゆえに、彼の周りから見た印象はずっと、「どこか一線を引いた人」 だった。





「それで、荒川センセはどう思います?」

藍と凪が帰宅し、少し静かになった研究室で、衣織が口を開いた。

「何が?」

「藍君ですよ。彼のバックボーンについては一通り調べてはいますけど、O-07(オーセブン)辺りに彼のことが露見するのも時間の問題では?」

「あー、さっきの話ね。O-07にバレたとして、何か問題なの?」

「荒川教授は無問題かもしれませんが、私達は困るんですよ。彼らはいわばライバル企業、ですから」

結城が横からそう告げる。

「世の中物騒なライバル企業があったもんだなぁ。まあ、小鹿野組の問題は僕の問題とも直結するし、対策は講じないとかもね。…具体的に何を?」

「…それを考えるんですよ」





「こんにちはー?」

その翌日、藍がいつものように研究室に行くと、そこは珍しく静まり返っていた。

「誰も、いないのか…」

昨日の出来事が出来事なだけに、誰もいないという稀有な状況に藍は思わず動揺する。

昨日の今日ということもあって、凪はひとまず真面目に学校に行くことにしたらしく、今日は藍一人だ。

「…」

何となく落ち着かず、藍は研究室の自分のデスクについて、研究レポのまとめを開く。


『遺伝子的突然変異体(イレギュラー)生理学概論Ⅰ』





遺伝子的突然変異体(通称:イレギュラー)は20xx年代後半から出現した、ホモ科の新種である。

それまでホモ科は一種であったが、遺伝子的突然変異体の出現によって、「ホモ・サピエンス」と「ホモ・イレギュラー」の二種となった。

登場年代から推定するに、現存するホモ・イレギュラーの平均年齢はホモ・サピエンスに換算すると20歳前後と考えられる。

この遺伝子的突然変異体「ホモ・イレギュラー」(以下、イレギュラーと表記)は、ホモ・サピエンス第6の染色体上に変異箇所があり、ホモ・サピエンスとのDNA上の違いはおよそ0.00001%と推測されているが、データ不足により、詳細は分かっていない。

イレギュラーとホモ・サピエンスとの決定的な違いは、第6染色体上の変異によって、ホモ・サピエンスをはるかに上回る身体機能を持つことである。

例)脳の多機能化。コンピューター並みの演算能力と、超常的な思考能力を持つ。

例Ⅱ)筋力の増大、獣並みの怪力、あるいは足の速さを持つ。

その個体数は非常に少なく、見た目においてはホモ・サピエンスとの違いはないため、イレギュラーの発見は現状困難である。さらに、ホモ・サピエンス、つまり我々人類とイレギュラーとの明確な違いは身体機能以外には確認されておらず、研究における倫理的な問題は未解決である。…….





「藍君‼」

「⁉」

うしろから聞こえてきた声にハッとする。気が付くと、藍のうしろには衣織が立っていた。

「いつからいたんですか?」

「さっききたとこー。んで、何やってんの?まさか真面目にレポート書いてんの⁉」

「いや、まさかって。俺一応大学生なんですけど…」

そういいつつも、勤勉な方ではない藍はレポートを閉じながら目をそらす。

「そういう小鹿野先輩はどうしたんですか。今日遅かったですけど。」

「あたしも一応大学生、だからね。ちゃんと学生としての職務を全うしてるのよ。」

「俺が全うしてないみたいな言い方はやめてください…」

衣織は鼻歌を歌いながら給湯室の方へ向かっていった。

「ところで、吉田先輩は?あと荒川先生」

衣織が勝手に研究室に持ってきた最新のティファールでお湯を沸かしながら今日飲むであろう紅茶を選別していた。

「うーん、結城は知らないけど、荒川先生なら、今日は東京の方に行ってるよ。えらーい人たちとお話し中」

「そうなんすか。てか、吉田先輩と一緒じゃないの、珍しいすね」

「あたしも結城も別に四六時中一緒ってわけじゃないし。」

なんとなく不機嫌そうな様子で衣織はティーポットで紅茶をそそぐ。

「ま‼紅茶は確かに結城が淹れたほうがおいしいわね‼」

紅茶を一口飲んで、先ほどの不機嫌などなかったことのようにそう告げる衣織に、やっぱり読めない人だな、と藍は思う。

「話変わりますけど、荒川先生、ちょくちょく東京行きますけど、いつもどこに行ってるんですか?」

衣織はあくまで自分の分の紅茶しか淹れなかったので、藍は自分でお茶を淹れるべく席を立つ。

「あれ?知らなかったっけ?といっても、いくつか行ってる場所はあるけど…」

指を折りながら、ひーふーみーと数えつつ

「ま、一番多いのは衛生省かな‼」

と言って手をたたいた。

「役所⁉荒川先生、やっぱり非合法的な恐ろしい研究に手を出して…」

「あっははは。出してるかもねー。でもそういうんじゃないんだな。」

衣織はけらけらと面白そうに語る。

「ここって全国で二か所しかない貴重な研究所じゃない?だから、たまーに役所のエージェントさんが情報収集にくるんだよ。ほら?知らない?衛生省保健局・イレギュラー対策本部って名前」

その名前に藍はハッとする。

「その様子じゃ、知ってるみたいだね。」

衣織は残っていた紅茶を一口で飲み干すと、シンクに投げて放り込んだ。パキンと激しい音を立てて、ティーカップが割れた。

「あいつら、イレギュラーによる超常事件・事故を専門としてる割にそのイレギュラーのことを何にもわかってないからさー。たまーに助言してあげてるの。もう一つの研究室はお国様と仲悪いから。」

割れたティーカップを律義に片付けながら、衣織は話を続ける。

「んでまあ、イレギュラーのことに関して荒川センセーの右に出るものはいないからね。」

そこまで話しきったところで、衣織は破片をすべて拾いきって、満足げにすべて危険物のごみ袋に突っ込んだ。

「そ、そうなんですね。」

衣織の意味不明な行動は何度も見てきたが、やはり慣れるものではなく、若干引きつつ藍はこたえる。

「そういう藍君こそ、今日は凪ちゃんと一緒じゃないの?」

衣織は棚から新しいティーカップを取り出しつつ尋ねる。

「はい。昨日の今日ですし、あいつも今日は学校かと。…小鹿野先輩、あんまり壊すとまた吉田先輩に怒られますよ?」

藍はあきれたようにその様子を眺めながら、自分も淹れた緑茶をすする。余談だが、研究室の人間で紅茶を飲むのは衣織だけで、棚の無数の茶葉やティーバックはすべて衣織が勝手に持ち込んで勝手に飲んでいるものだった。

「ふーん、そっか。この調子だと結城も多分今日はここ来ないし、あーあ。二人だけかあ。なんかつまんないね」

衣織は不貞腐れながらティーカップに給水機からミネラルウォーターを注ぐ。

「たしかに、いつもより静かな感じですね。」

衣織は注いだ水を一気に飲み干した。

「まあ、そんなわけだしさ、藍君。」

「なんですか?」


「今日は、文献でも読んで、久しぶりに真面目に研究レポート書こうか。」

「小鹿野先輩は頼みますから普段からもっとまともに研究に貢献してください。」





今日の凪は不機嫌だった。不機嫌、というか、何に対してもやる気というものが起きなかった。もともと真面目な性質だったため、授業自体には真摯に取り組んではいたが、どこか心ここにあらず、といった風だった。

「宮地さん、今日どうしたの?大丈夫?昨日も早退してたし…」

心配そうな顔をしたクラスメイトが凪に声をかける。便宜上、というか戸籍上、凪のフルネームは藍の名字を拝借して「宮地凪」になっていた。凪はそれが好きではなかったが。

「ううん大丈夫、ありがとう。」

造り笑顔を浮かべて、凪はクラスメイトにそう返す。

「そっか。ダメそうだったら言ってね。私保健委員だし、先生に言って、保健室に連れて行くから。」

軽くうなずくと、クラスメイトはそそくさと他のクラスメイトの方へ向かった。クラスメイトの好意はありがたいものではあったが、凪はそれを受け取るのが苦手だった。他人に親切にされるというのは、凪にはほとんど慣れない経験だったのだ。

(ここに転校するまでは、まともに同級生と話したことなんてなかったし…)

姉がいたころは優秀で目立っていた姉と比べられて虐げられて、いなくなってからは姉が殺人犯であることでいじめを受けた。ゆえに、もはや凪は純粋に自分に向けられた好意を納得して受け取れなくなっていた。

(ダメだな)

当然、周辺と一線を引こうという凪の態度は、察しのいいクラスメイト達を遠ざけるのに貢献していた。周りからは、「一人でいるのが好きな子」だと思われている。実際、凪にはその気質があったため、あながち間違ってはいなかったが。

「なぎにゃん、具合悪いのー⁉だいじょうぶかぁ⁉」

だが、稀にそういう空気が読めないやつという者もいる。

 今凪に話しかけてきたクラスメイト、番場湊はそういう空気が読めない人間だった。

「番場さん、ありがとう。でもわたしは大じょ…」

「だーめだよっ!悪化したらどうするの⁉ほら!次の授業まであと30分あるし、熱はかりにいこ‼」

凪がまた何か言う前に、湊は凪の手を取って廊下に駆け出した。

「…」

もはや何を言うでもなく、ただ、はぁ、と一息ため息をついた。

「失礼しまーす‼」

「…失礼します」

保健室は誰もいなかったが、鍵は開いていた。湊はなんの躊躇いもなく、凪をベッドに座らせて、棚を勝手に漁って体温計を取り出して、凪の口に突っ込んだ。

「⁉」

それは口に突っ込むタイプではない、と言う間もなく、仕方なしされるままにする。

 ぴぴぴっ、という音を立てて温度計が測定を終えて、凪の口内の温度を知らせる。

『37.9』

「えええええ‼ほとんど38℃⁉熱じゃん‼よし、帰った帰ったー‼」

それは脇で測ってないからじゃ…と言う間もなく、あれよあれよという間に湊が勝手に凪の帰りの支度をして、さらには先生への連絡まで済ませていた。

 しばらくして、湊は凪の荷物を纏めて運んできて、

「はい‼さようなら~‼今度は熱下がってからくるんだぞ~‼」

「…」

気が付けば、凪は自分の荷物を抱えて、正門、というか学校の外に立っていた。

「どうしよう」

もちろん熱などないため、この時点で凪は不本意だが仮病を使ってしまったことになる。昨日のことがあったため、今日は学校へ行くと、藍に言っていたのに、これは非常に気まずい。

(藍は、今日は確か4限まで、それでたいてい4限の時は研究室へ足を運んで、小鹿野さんあたりと駄弁って帰ってくるはず。)

そこまで結論付けた凪は、ひとまず荷物を抱えなおす。とにかく藍と鉢合わせはしたくないな、と適当に駅周辺のカフェで勉強でもして帰ろうか、と考える。

「‼」

しかし、その考えは、視界に映った一人の人影によって一瞬にして払しょくされた。

それまでの様々な思案など、掻き消えて、凪は夢中でその影を追っていた。

確かに見えたのだ。姉の、少年院に送られたはずだった姉の潮音の姿が。





「え?うん。まあ、何ともなかったよー。ただ新入りが入ったらしくて、なんかドタバタしてるみたい。そんな時期だもんね。うんうん。」

東京都、有楽町駅。荒川真は雑然とした駅のホームで、誰かと電話していた。

「そういうわけだから、しばらく来なくていいって影森君が。いやー‼ラッキーだよね‼ここまで来るの面倒だし‼次は違うやつに越させよう。藍君か、もうひとり助手でも増やしてさー。そういや影森君、最近『狼(ウルフ)』やめたらしいじゃん。ねー、びっくりした。ん?ああ、いや、空いた枠は既存の子が就いたみたい。新入りは別の人だったよ。」

仕事帰りのサラリーマンや、塾帰りの学生、あるいはこれから飲みに行こうとする人たちでごった返す駅では、他人の電話など気に留めるものはいなかった。

「それで、そっちは?」





「へー、そっか。にしても、あの忠犬のさっきゅんがねぇ」

ちょうど先刻、藍は研究室を出ていき、今室内は衣織一人だった。

「ん?あぁ、藍君?そのことなら、やっぱりビンゴでしたよ。」

衣織は濃いめに注いだ紅茶を飲みながら、先ほど書き上げた一枚のメモを見る。

「普通はそんなに有名じゃないイレギュラー対策本部の話も知ってたみたいだし、それに、“シオン”って名前、やっぱりあの『長瀞潮音(ながとろしおん)』で間違いなさそうですよ。家族構成見たところ、両親、姉、妹で、かつ両親殺害で捕まってました。まあ、藍君たちの言うシオン=長瀞潮音と仮定すると、疑問点も残りますけど」

衣織は視界の端に映る人影を一瞥して、話をつづけた。

「ただ、もう後手だったみたいです。…今日さっきゅんに会ったならそこのところ詳しく聞いておいて欲しかったですけど」

電話越しに抗議でもされたのか、衣織は返答にけらけらと笑っている。

「冗談ですよ。いくらあの人でもそれは喋らないって、わかってますから。…ええ、荒川センセの想像通り、O-07が、彼女と接触したみたいですね。だれの手引きかは分かっていません。…はい。そのあたりは引き続き調査します。」





「はーい。いろいろとありがとう。あ、僕はあと一時間くらいで帰れると思うんで、研究室の戸締り、ちゃんとしてよー。それと、藍君にこのことは…え⁉もう話したってどゆこと‼ちょっと小鹿野君⁉」

真が慌てて電話越しに何か言ったタイミングで電車がホームに到着し、騒音で応答が聞こえなくなった。仕方なく、真は電話を切って、満員を超える電車に乗り込む。

そこで、不意に真は視界にうつった人物に気が付いた。

(ん?あれってもしかして凪ちゃんか?なんでこんなところに…)

真がその答えにたどり着く前に電車が発車し、視界に映った凪に似た影はぐんぐん遠ざかっていく。

(って、そんなわけあるかーい‼つ・ま・り、僕の気のせいだな‼)





「今の」

衣織が真との電話を切ると、帰ったはずの藍が部屋へと入ってきた。

「あれ?藍君、帰ってなかったんだ。」

「忘れ物です。それより、今の話、どういうことですか。勝手に調べたんですか?凪や潮音のこと。」

衣織は怒りを隠そうとしない藍の態度に肩をすくめる。

「調べたよ。」

あっさり言ってのける衣織の態度に、藍はますます苛立ちを覚える。

「どうしてですか⁉俺はともかく、凪のことを勝手に調べるなんてありえません‼あいつは一般人ですよ⁉」

怒りのままに叫ぶ藍に、衣織はあくまで冷静な態度を崩さない。

「そりゃあ、藍君の出自は怪しいから。んで、それは凪ちゃんも同じ。…あのさ、凪ちゃんが危険なことに巻き込まれるのは潮音さんが藍君たちと『バイト』していた時点で決まってたわけ。潮音さんも藍君も、わかっててやってたんじゃないの?」

藍はぐっと言葉に詰まる。

「…そう、ですね。すみません。」

「いや素直に謝らないでよー‼逆にやりづらいじゃーん」

相変わらずへらへらとした衣織に、藍はもはや抗議する余地はなかった。

(そうだ。どう考えたって…悪いのは俺だ。俺の身勝手で、潮音や凪や、多くの人を危険に晒したんだ。)

藍はぐっと唇をかみしめて、そして衣織に向き直る。

「お願いが、あります。」

これには衣織も予想外だったのかきょとんとした顔で藍を見る。

「えっと、何?」

いつになく真剣な藍に、衣織も居心地が悪くなって姿勢を正す。

「俺の知ってることをお話しします。そのかわり、小鹿野先輩が調べたことを、教えてくれませんか?」

身構えただけに、内容の簡単さに衣織は拍子抜けする。

「いいけど。どうして?」

性分というか、本能的に、衣織は藍の言葉の裏を勘ぐってしまう。

「俺が責任もって、凪を、危険から守りたいんです」

返答は、衣織の想定とは全く別方向のものだった。

「っ…ふふふっ」

肩を震わせて笑い出した衣織に、藍は思わず後ずさる。いつものことながら、衣織の意図が全く読めない。

「っあっははははは‼面白い‼面白いね、青春だねぇ藍君‼これだから、人生はやめられない‼」

意味不明なことを言いながら心から楽しそうに笑う衣織に内心ドン引きしながら、藍は衣織の返答を待っていた。

「もちろんいいよ、藍君の知ってることが聞けるなら万々歳。それに思春期全開なそのクサい態度も、あたしは気に入った‼」





かつて、イレギュラー関連の騒動のプロフェッショナルと謳われた集団がいた。

 『3P(スリーポイント)』と呼ばれていた集団は、未だよく知られていないイレギュラーについて異常に詳しく、イレギュラーたち、あるいはその家族やイレギュラー犯罪の被害者など、あらゆる人間たちから注目の的になっていた。

 当時はまだ警視庁にイレギュラー対策本部が設置されておらず、人間を超える頭脳と力を持つイレギュラーの引き起こす犯罪に全く対処ができていなかった。そのことも3Pの注目に拍車をかけた。

 3Pの実態はよく分かっておらず、三人組の集団ということと、メンバー全員がイレギュラーだということ、そして、現存するイレギュラーの平均年齢から見て、おそらく子供ではないかと考えられていた。

 イレギュラーには力がなかった。

 もちろん身体機能の話ではない。むしろ、身体機能ならば、イレギュラーは人間とは比較できないぐらいだ。

 イレギュラーには権「力」がなかったのだ。

 大半のイレギュラーはイレギュラーだと周辺に露見すると、偏見や差別にさらされた。イレギュラーに人権は保障されず、多くのイレギュラーが冤罪で捕まり、実験所送りになった。

人間は、己と違うものをひどく嫌ったのだ。

 そのため、イレギュラーのほとんどは人間に紛れて生活していた。人間にイレギュラーだとバレることに怯えながら。

 3Pはそんな彼らにとって唯一の拠り所だった。イレギュラーの抱える不安、あるいはイレギュラーの家族が抱える不安、それらを取り除いてくれる、唯一の存在だった。

 危険なこととは知っていた。イレギュラーは個体数が少なく、研究材料にしたい人間は大勢いる。イレギュラーの中には、人類の発展に貢献するため、自ら望んで被検体に志願した者もいる。加えて、イレギュラーは人身売買といった闇取引でも高く売れた。貧しい家庭のために臓器を売り飛ばされた子供のイレギュラーもいた。

 3Pは恐らく善人の集団だった。一応、営利目的とはいえ、不当な金銭を要求したりはしないし、顧客の情報は絶対に漏らさなかった。それこそ、警察や裏の商売人なども幾度となく3Pの情報を捜索したが、ついにそれが見つかることはなかった。

 だが、3Pは3年前に姿を消した。それこそ、煙のように。跡形も残さず。

 ついに公的機関か闇組織に情報を掴まれた、だの、メンバーの方向性の違いで解散、だのさまざまな噂が囁かれたが、結局真相は闇の中へ消えた。ただひとつ、確かだったのは、イレギュラーにとっての最後の希望が潰えてしまったことだった。

 イレギュラー達は絶望した。また、人間たちにバレることに怯えながら暮らす生活に逆戻りだと。

 中には、イレギュラーによるイレギュラーのための革命を謳う集団などもできたが、かつての3Pほどの勢いはなかった。

 それだけ、3Pはイレギュラー達にとって、精神的に大きな組織だったのだ。





「小鹿野先輩は、3Pについて、どこまで知ってるんですか。」

立ち話も何だから、と席につかされた藍はすぐさま衣織にそう問いかけた。

「藍君が思うほど詳しくないわ、関係者なら知ってるであろうことくらい。メンバーは三人でイレギュラー。全員子供。それで3年前に消えたってこと。あとは…


藍君が、その一員だったってことくらいかな。」


沈黙が流れる。

「…やっぱり、ご存知でしたか。」

「そりゃそうでしょうよ‼もし知らないで藍君をスカウトしたんだと思ってるなら、藍君はちょっと荒川センセを舐めすぎよ。いくら付属の研究室だからって、たかだかただの大学生をスカウトしないわ」

おどけたようにそういう衣織に、藍は思わず苦笑いする。

「何言ってるんですか、俺もただの一学生です。」

「遺伝子的突然変異体(イレギュラー)に特別詳しい一学生ね。」

そうですね。と軽く答えて、藍は再び口を開く。

「それで、話すとは言いましたけど、何から話していいやら…、とりあえず、小鹿野先輩は何が知りたいんですか。」

「うーん、あたしっていうかさ。この研究室ってこんななりしてるけど、結構国からも重宝される超・重要機関なのよ。」

改めて言われると確かに全国二か所の公認・遺伝子的突然変異体(イレギュラー)研究室だからそうなんだろう。と妙な納得をしてしまう。いつもお茶飲んで大学の先輩と駄弁ってる場所だと思うと何となく不思議だった。

「つまりね、研究は諸外国に負けじと進めなくちゃいけない。だから優秀な人材は誰だって欲しい。けど一応国からお金貰ってるから、あんまり変な人は入れられないのよ。」

「それはわかりますけど…、こう言ったらなんですが、それは俺をここに入れる時点で判断しなくてよかったんですか。」

そういう疑問を口にできる立場ではないと思いつつも、素朴な疑問が口に出る。

「うちは履歴書だけで人を判断しないの。社員が入社してから、その働きぶりを見る、米国式なの‼もし藍君がクソ使えない人間だったら、入って一週間でたたき出してたわね‼」

そもそもここの責任者は衣織じゃなくて真だ、とか、定期的に口汚い言葉使うなこの人、といったことはさすがに口にできなかった。

「けど、藍君は第一線で活躍できる知識と技術があったから、もし犯罪とか、完全にアウトなことしてなければここで使おうって、荒川センセと決めたわけよ。…てか、たかが1イレギュラーにしちゃ知識も経験もありすぎよね?そこはやっぱり3Pで学んだの?」

「えっと、それは…」

「まあ、それはあとででいーや。問題は、3Pって組織の本質よ。結局、表面上は善良な営利団体だったわけだけど、解散理由がメンバーの一人が殺人で少年院に送られたから、でしょう?正直、3Pの消滅と無関係とは思えないんだけど。」

衣織は息つく間もなく藍に質問を畳みかける。

「とりあえず、そこ教えてよ。3Pはどうして解散したの。やっぱり、凪ちゃんのお姉さん、潮音さんの事件と関わりがあるの?藍君は、その事件に関与したの?」

「…小鹿野先輩、実はほとんどわかってるんじゃないですか?」

もはや質問の羅列の仕方が恣意的だ、と藍は思う。

「あはは。まさかー。わかるとしたら、あたしは間違いなく遺伝子的突然変異体(イレギュラー)だね。」

と言って衣織は相変わらず笑っているが、間違いなくあれは知っている様子だ。そのうえでわざわざ藍の口から説明させようというんだから、衣織も人が悪いと思う。

(いや、もしかして試されてるのかな。ここで素直に全部吐くかどうか。)

衣織は読めない人物だ。何をしても楽しそうにしているが、内心どう思っているのか全くわからない。衣織との付き合いはたかだか半年程度だが、衣織に何か心理戦をしかけて勝てるとは全く思えなかった。

「だいたい、小鹿野先輩の想像通りです。潮音が事件を起こして、それが原因でもう一人のメンバーが離脱。当然、潮音も3Pとしての活動はできなくなったので、実質3Pは消滅しました。…俺一人で活動できるほど、俺は優秀じゃなかったので。」

少し当時のことを思い出して感傷的になる藍に、衣織は「それで?」と容赦なく続きを促してくる。

「潮音の頼みで妹である凪を、父さんに頼んで宮地家の養子としました。事件に関しては、ほんとにこのくらいですよ。潮音はいまも少年院で、もう一人は…もう連絡も取ってないんで、わからないですね。」

話し終えると、衣織が不満そうに藍の額にぐりぐりとペンを押し付ける。

「こらこらー大事なこと言ってないぞー。」

「?」

「藍君は、結局その犯罪に関与してるの?してないの?」

「してません。3Pも、そういう悪いことに手を出したことは一度もありません。」

藍はきっぱりとそう告げる。

「あそ。じゃあ今日のとこはよし‼えーとそれで?藍君はあたしに聞きたいこと、あるんだっけ?」

大した話はしていないが、衣織はもう聞くことは聞けたらしいのか、満足げにペン回しをしている。

「あの。小鹿野先輩。ひとついいですか。」

衣織が静かになったので、藍はずっと聞きたかったことを口にする。

「んー?なに?」

「…俺が3Pのメンバーだったって知ってたってことは、俺がイレギュラーということも知っていたはずです。荒川教授はどうして俺を雇ったんですか。」

イレギュラーは差別されるのが常だ。イレギュラーと知っていれば、普通はどこの会社も受け入れてはくれない。まして、イレギュラーの研究をイレギュラーにさせるなんて到底認めてもらえるとは思えなかった。だからこそ、衣織の、否、藍を雇った責任者の真の真意が、藍にはわからなかった。

「別にイレギュラーを研究助手にしちゃいけないなんて法律はないし、それに、荒川センセは研究以外のことに興味ないから。誰であれ、研究者として使えるなら使う。それが荒川真の本質なんじゃない?」

 あっさりと。衣織は当然のようにそう答えた。存外に、イレギュラーも人間なんだ、とそう思ってるようにも感じられた。

「やっぱり、変わってますね。小鹿野先輩も、荒川先生も、おそらく吉田先輩も。」

「あははー。よく言われる」

 やはり読めない人物ではあったが、衣織は悪い人ではない。そう感じた。

(小鹿野先輩のような人に出会えれば、いや、小鹿野先輩ともっと話せれば、凪も、何か変われるんじゃないか?)

 藍はそんな期待を抱いた。



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