面接

面接

なんだよ！

サンズ・リバーサイドで面接って云うからさ

あたしはてっきりトップが来んのかと思ってたぜ

「神様は一次面接に顔を出すほど暇じゃないんです！」

今あたしの目の前に居る「御使い」って呼ばれてる連中は、ま、駒使いだな

神様の取り巻きって云ったら普通は「天使」だと思うだろ？

けど、天使より神様の側にいて細々した雑用をしてる「御使い」って階級があってだな

ま、天使とどっちが上でどっちか下かなんて興味無ぇんだけどよ

「今日ココに呼び出された理由は何か心当たりあります？」

ココって云うのはサンズ・リバーサイド・ビルヂングな

三途の川の源泉に近いとこにあって、位置的には天国と地獄が最も面してるエリアなんだけどよ

ま、天使たちが地獄に迷い込んだり悪魔たちが脱走して天国に逃げ込まねぇようにこのビルヂングで監視してんだよ

悪魔の中でも偉い方の悪魔だってこのエリアには用事もないのに近付いたりしねぇな

で？なんだっけ？

あーね、理由？心当たり？

全然無ぇな、笑えるくれぇなんも無ぇわ

にゃはは

「それは良かったです」

この若僧の御使い、さっきから物云いが気に喰わねぇな、丁寧過ぎてムシズが走るぜ

面接で呼び出しって聞いて嫌々こんなトコまで来てんだからよ

さっさと本題に入ろうぜ

いったい何んの面接なんだよ

「想像したコトはありますか？もしも貴女が人間だったなら」

ぶぁはっはーぁ！

人間？有り得ねーだろ！

もしもあたしが人間だったらかぁ・・・

それは今の能力とか今あたしが知ってる知識とか全部ナシでってコト？

だったら普通に他の人類と同化して低知能な生涯をおくるんじゃねーの？

バカみてぇに頭ん中で天使と悪魔を闘わせてさ

生きてる理由なんか模索しちゃったりしてな

あたしが人間とか、マジでウケるんですけどソレ

「貴女は人間になって地上に送られる悪魔の候補に選ばれているんですけど？」

はぁ？なーーんじゃそれ！

いや、天使で何かミスったり素行が悪かったりすると罰ゲームで人間の一生分を人類として地上で過ごすってペナルティがあんのは知ってるぜ

なんて云ったっけ？

あ、堕天使制度だっけ？

けどよ、あたし、悪魔だぜ？

悪魔って云ったら素行が悪くてなんぼだろ？

それに、もしもあたしが堕悪魔になって地上に、あれ？悪魔の場合は地獄から行くんだから昇悪魔か？

まぁ、なんでも良いわ

人間になってあたしん中で天使と悪魔が闘ったら悪魔の圧勝だぜ、悪魔サイド無敗全勝になるけど良いのかよ？

人類史上に類を見ねぇ大悪党になっちまうけどよ

あたしが地獄に還って来るまで人類が無事だって保証は無ぇよ？良いのか？

あたし、人類を滅ぼしちまうかも

そもそも何んであたしが選ばれたんだよ

「まず、赤ちゃんはみんな天使が人間の形になって降り立つんです」

へぇ、そーなんだ

んじゃ人類って、アイツら元々は天使なんだな

ほんのちょっとだけ、ペナルティ喰らった天使が堕天使んなって紛れてる感じだと思ってたぜ

「神様は思慮深いお方で、そのお考えは全部理解は出来ないのですが、天使50人に対して約１人、悪魔の赤ちゃんを混ぜているんです」

マジかぁ！初耳だぜ

50人に１人とか、なんのバランスだよそれ！

ホント意味分かんねぇな

てかあたしら悪魔の中でも既に地上に行ったヤツがいたのかよ

ホント、全然知らなかったわ

んで？あたしが選ばれた理由って何だよ？

その、50人に対して１人って云う倍率にあたしは何が該当しててペナルティを喰らうんだよ

「先に面接試験の結果からお伝えしますね」

いちいち癇に障るんだよなコイツ

あたしは選考基準を訊いてんのになんで結果発表しよーとしてんだよ！

この会話がズレてる感じがすげぇ苛っとするわ

まぁ、良いや

考えてみたらその結果とやらの方が若干大事なような気がしてきたし

候補から外れたなら、もうその選考基準なんてどーでも良かったわ

「実は貴女、悪魔にしては心優しくて気配りも出来て思い遣りもあって、悪魔として相応しくないのでは？と云う声が神様の耳に入ったものですから」

ほら、コレだよ、さっきからあたしが云ってんの

あたしがじゃあ結果から聞こうかって思った矢先にこの天の邪鬼

自分が先に結果発表をするって云ったんだから結果を聞かせろや！って話だろ

「非該当です！貴女は立派に悪魔でした、極悪です」

うーん、なに？

褒めても貶してもないのは分かるんだけどさ

なんなの？この微妙な感じ

もう、さっさと帰って迷ってる人間でも見付けて気晴らしに誘惑でもして遊ぼうっと

今、天使に連勝中だしな

自己連勝記録更新しちゃいそうな勢いだぜ