放課後プロローグ

位置・(第百陸弾)

お疲れさま

久々だったし、やっぱり痛かった？

後半は「んでっ」って何回か云ってたし

ホント、無茶せずにマイペースで行こうね

キミの方こそお疲れさん

痛くはなかったぜ、全然痛くはなかったよマジで

左肩のクロスのタトゥーを彫ってた時はちょっと痛かったけどよ、あん時と比べりゃ全く痛くなんてねぇよ

タトゥー・スタジオの時間に制限が無けりゃ更に後２時間は大丈夫だったぜ

けど流石にぶっ通しで４時間も集中してタトゥー彫ってたらキミの方が持たねぇよな

紗枝が痛くなかったって云うんならソレで良いけど、カサブタが大きくなっちゃったり化膿なんかしちゃったら大変だからね

何れにしても２時間くらいが限界なんだと思うよ

クロスん時はよぉ、あたしもキミも初めて同士だったから正直緊張もしてたし色々と考えたりしてる余裕も無かったんだけどよ

キミのタトゥーのマネージャーをやらせて貰ってもう直ぐ１年じゃん？

あたしはマネージャーとしてキミがクライアントにタトゥーを彫ってる時に立ち会って見て来ててさ、キミ側の目線なんだよな

あたしがガンを握って彫ってるワケじゃねぇけどよ、彫ってあげる側の立場じゃんか

久々の彫られる側の立場、すんげぇ新鮮だったぜ

そうだね、初めての時は俺も緊張を通り越して頭の中が真っ白だったけど、今日久しぶりに紗枝にタトゥー彫ってて、感慨深かったよ

上手く云えないんだけどさ、帰って来た感って云うか「ただいま」って感じはあったね

マジ？キミもそんな風に感じててくれてたの？

「ただいま」かぁ

あたしはさ、たぶんどっかで待ってたんだよな

だから「ただいま」って云うよりは「やっとあたしの番が来たぜ！」って感じかもな

あたしさぁ、キミが集中して絵を描いたりタトゥーを彫ってる時の顔が好きだって云ったじゃんか

今日はソレを２時間も至近距離で独り占めだぜ、超幸福せだったよ

キミが照れたり気が散ると悪ぃからジーっと見詰めたりはしなかったけどよ、あの時間がずっと続いたら良いなと思ったぜ

そっか

処女作が紗枝のその左肩のクロスだったからってだけじゃなくてね、じゃあ何？って訊かれても困るんだけどさ、紗枝は特別なんだよね

逆に云えば今俺がタトゥーのガンを握ってるのもそもそも紗枝の為だったみたいな感覚だしさ

紗枝は加藤くんみたいに完成を急いでるワケでもないし他のクライアントさんみたいに予約するのに時間を調整したりしなくても比較的いつでも話して打ち合わせとかも出来るからさ、丁寧にじっくり時間を掛けて彫って行こうね

そうだな、１日も早くこの蛇と蛙が完成すんのを観てぇけどさ、完成しちまったらまた「終わっちゃったな」って云う喪失感に襲われそうだしな

キミがあたしの脚んトコに跨がって真剣な顔して彫ってる時にさ、一体感みてぇのを感じれてソレも嬉しいんだよな

キミが痛みに欲情するみてぇな話を聞いちまってたしさ、キミは今あたしにその「痛み」を加えてんだなとか考えてみたりもしてさ

後さ、キミの吐く息があたしの下腹部に触れるくれぇの距離感も程芳くエロくて良いよな

欲情ってワケじゃないよ

まぁ欲情も含めてなのかも知れないけどさ、興奮するって云うかドキドキとかゾクゾクとか、そんな感じだよ

そう云えば紗枝は俺が山口にタトゥーを彫ってる時に山口に跨がってるのを羨ましいみたいなコトも云ってたもんね

集中して彫ってる時はめっちゃ集中してるんだけどね、確かに独りで彫ってるって云うよりは紗枝の云ったみたいな「一体感」って感じはあるよ

一緒にこのタトゥーを完成させようねみたいな感覚

それからさぁ、キミはタトゥーを彫ってる時はマジで集中してんのも見てりゃ分かるしキミも煩悩みてぇのは無くなるっぽいコト云ってたからさ、キミは変な目でじっくり見たりはしてねぇんだろうけどよ、あたし、履いてねぇワケじゃん？何も

キミの角度からだとバッチリ丸見えじゃん？

いや、キミがタトゥーを彫ってる時はそんなコト考えてねぇのは知ってるけどよ、変な意味じゃなくな

あたしの身体を丸ごとキミに預けてますって感じがコレまた何とも云えねぇんだよ、良い意味でだぜ

あ、やっぱちょっとだけ変な意味も含めてかもな

じゃあ俺も正直に白状しちゃうけどね

最初に紗枝が下着を脱いで「敦子ちゃんに剃って貰っちゃったぁ」とかっておどけてた時は普通に彫り易くて有り難いなって思ったんだよ

タトゥーを彫るコトしか頭に無くてキャンバス的な意味で綺麗に剃れてるなと思っただけだったんだけどね

後半の方でさ、下の方を彫る為にちょっと脚を開いて貰ったじゃん？

あの時に、そのぉ、アソコがバッチリ目に入って来ちゃってね

目に入って来たなんて感じじゃないな、本能的に釘付けになっちゃってさ

ヤバい、ガン見しちゃったら紗枝にも悪いしもしも俺が今エッチな気分になっちゃったら手元が狂ってタトゥーを彫るのなんて続けられないなって思って慌てて目を反らしたんだよ

でね、ホント正直に云うとね

その時に「今は我慢」って思ったんだ

つまり、彫り終えたらもう１度だけ紗枝にバレない様にこっそりとチラ見して脳裏に焼き付けようって思ってたんだ

そのくらいの自分へのご褒美なら罸は当たらないだろうとか思ってさ

けど彫り終えてワセリン塗って、疲労困憊でワセリンを置きに行って「あ！終わったらもう１度チラッと見ようと思ってたんだった！」って思い出した時にはもう紗枝はベッドに座った状態で下着を履こうとしてるトコでさ

心の中で「だよね」って呟いたんだ

ぶはっ！

なんだよ見たかったのかよ！

ワセリンを置く前に見りゃ良かったじゃんか

キミなら良いぜ

あ、いや別にわざわざ脱いで見せ付けて、観られて興奮する様な露出狂みてぇな性癖は無ぇよ

けどさ、タトゥーを頼んだ相手がキミで良かったなってぇのはずっと思っててさ

キミにだったら観られても良いって思ってるからよ

まぁ、彫り始める前にエロい気分になって仕事が捗らなくなっちまったらもともこも無ぇけどよ、そのご褒美、罸は当たらねぇよ

ガン見したらあたしに悪ぃかなとは思わなくて良いぜ

あ、「ありがとう」で良いのかな？

何んて云ったら良いのか判らないけど、どっちにしても照れるから紗枝にバレない様にコッソリ観ると思うよ

まぁ、コッソリとは云っても彫り終わった後になるから紗枝には観られてるってバレるだろうけどね

そっかぁ、キミが観るのは彫り終わった後なんだよな

変な話、あたし的にはさ、彫って貰ってる最中の方が興奮しててよぉ

ソコで更にキミにガン見なんてされたら欲情しちまいそうなんだけどな

あれ？あたし変態っぽいコト云ってる？

勘違いすんなよな、相手がキミだからだかんな！

けどまぁ、相手がキミの所為で少なからずエロい気分にはなってるよ

脚を広げた後なんてエロい声が出そうになるのを堪えるので必死だったもんな

エロい声って云うか、俺はてっきり痛いのかと思ってたよ

もう一頑張りしてキリの良いトコまで彫るか無理せずに切り上げるか迷ったもんね

てか、痛そうな声は出してたよね？

「いでぇ」とか「んでぇ」とか云ってたじゃん

あ、悪ぃ

そー云やあたし声出しちまってたかもな

キミの前で何んか幸福せな気分で気持ち良くなっちまってさ

セックスの時にお互いに相手の名前を呼び合ったりすんのってこんな気分なのかなとか思ったんだよな

けどあたしは普段からキミのコトは「キミ」としか呼んでねぇじゃん？

で、敦子ちゃんやサッキーとキミの話をする時には「でいたん」って云ってるからさ

何度か「でいたん」って口に出して云いそうになって堪えたんだよ

堪えてたツモリだったんだよ

あはははは！

んじゃあの「んでっ」って「でいたん」の「で」だったってコト？

マジかぁ、堪えてくれてありがとう

あの状況であんな声で「でいたん」なんて喘がれたら絶対に手元が狂って続きを彫れなくなってたよ

てか、タトゥーを彫られる側のクライアントさんがエロい気分になっちゃうなんて話は聞いたコトもなかったし

だーかーらーさぁ

何度も云わせんなよ

相手がキミだったからだって云ってんだろ

他の彫り師に彫って貰ってたら絶対ぇそんな風にはならねぇよ！

もしかしたら菜々美ちゃんの影響かなぁ

キミの前で下着も付けねぇで横になってるのって、あたしにとっては新境地かもな

ちょっとときめいたぜ

トキメキ？マジで？紗枝が？

けど、何んか意外だなぁ

俺は彫ってる時は真剣に彫るコトに没頭してるからあまり考えたコトなかったんだけどね

クライアントさんは彫られてる時って、結構長い時間沈黙してて色んなコトを考えてたりするのかもね

意外って云うか、彫られてる時に紗枝が何を考えてるのかなんて想像もしてなかったからさ

今日さ、山口も連れて来るかなと思ってたんだよね

山口の総身彫りを彫ってる時って紗枝がずっと手を繋いであげてるじゃん？

だから紗枝も自分が彫られる時には山口の手を握ったりしたいかなってね

けど１人で来たからさ

酒巻を彫ってた時は半分ふざけてだったけど怒鳴り合いみたいになったりもしてたし、この前山口が寝てた時には紗枝とちょっと話をしたりもしたからさ、今日はタトゥー・スタジオで２人きりになって彫ってる最中に色々と話し掛けて来たりするかなとも思ってたんだけどね

紗枝が大人しいなとは思ったんだけど、そんな風だったのは意外だったなぁ

敦子ちゃんはちょっとでも時間があれば自分の部屋に行って勉強してるからさ

なんか連れ出すのが悪くってな

確かにさ、キミにタトゥーを彫って貰いながら親友のあたしに手ぇ握ってて貰えるのって至れり尽くせりで良いなとは思うぜ

良いなとは思うし羨ましいんだけどよ、それよりあたしはキミに集中してたいんだよな

いつも会って話とかしてるキミなんだけどな、タトゥー・スタジオで彫って貰ってる時はなんか神聖な時間なんだよ

なんとなくだけどな、大事にしてぇなって思う時間なんだよな

まぁ最低でもあと３回はあるからな、楽しみにしてるぜ

あ、それはそーとよ

サッキーから聞いたかなぁ

香織さんの送別会な、キミが来るって聞いたら最後くれぇ腹ぁ割って話とかしてぇから居酒屋に行こうって話になってるらしくてな

香織さんも呑んじまったら運転出来ねぇから電車で来るってさ

で、敦子ちゃんも来るなら面倒臭せぇコトにならねぇ様に制服じゃなくて私服で来て欲しいって云っててさ

まぁ、夏休み中にわざわざキミが制服で来るってコタぁねぇと思ったんだけど

一応な、「呑もう」って話になってるって云っとこうと思ってな

え、マジで？

だれかの家に集まって呑むならまだしも、居酒屋じゃ高校生だってバレるんじゃない？大丈夫なの？

それにみんな呑むんだったら俺等も原チャリ置いてかなきゃだよねぇ？

ああ、だから香織さんが電車で駅まで来てくれるんだってば

ウチ等は行きは徒歩か、原チャで行くにしても帰りはどのみち徒歩だな

次の日に原チャ取りにまた駅まで歩くのを考えたら初めっから歩いて行った方が良さそうかなって思ってるんだけどよ

菜々美ちゃんは遠いから電車だよな

タケシくんが自分は門限があるからたぶん先に帰るコトになりそうだけど菜々美ちゃんも来るなら帰りはタクシー拾って菜々美ちゃん家まで送るって云ってくれてるらしいからさ、菜々美ちゃんはタケシくんに頼もうぜ

あと偲ちゃんに声掛けたら雛先輩も釣れちまったってさ、雛先輩も来るってよ

キミ、モテるよな

キミが来るって聞いたら二言返事だったらしいぜ

あ！それでかぁ

スポーツ・センターで雛沢先輩と別れる時にまた次に会う約束でもしてるみたいな感じだったんだよね

俺はまた機会があったらって感じで返事しちゃったんだけどさ、香織さんの送別会でまた直ぐに会うってコトだったんだね

あ、けどさ、呑みになるなら菜々美は止めておいた方が良いかもね

いくらタケシがタクシーで送るとは云え、酔っ払った菜々美を見たら親御さんが黙ってなさそうだよ

菜々美ん家もそこそこ結構な御家柄だからさ

お？

今キミぃ、凄ぇ良いコト云ったな！

そーだよな、酔っ払った菜々美ちゃんを家に帰したりしたら大変だよな

確かにそーだよ

酔っ払った菜々美ちゃんは責任持ってあたしと敦子ちゃんとでウチに連れて帰ってウチに泊まって貰うわ

どーよ！解決じゃね？

菜々美ちゃんもまたウチに泊まりたがってたんだろ？完璧な案だな、決定だな

菜々美ちゃんを家まで送らずに済むならタケシくんも歩いて帰るだろうからタクシー代も浮くし、誰か問題有るヤツ居るか？

いや、問題はないかも知れないけどさ

紗枝、凄いドヤ顔してるけどね

うん、問題はないよ、問題は

けどね、激しく不安が

前回紗枝ん家で菜々美が何をされたのか詳しくは聞いてないけどさ、何んかされたのだけは確かじゃん？

紗枝と山口に菜々美を任せるなんて、狼の群れの中に羊の仔を置き去りにする様な気分で罪悪感しか無いよ

けどまだ菜々美が来れるのかどうかも決まってないからね

まぁ、最悪は紗枝ん家に泊まるって手段もあるなって感じで

最悪はとか云うなよ！凄ぇ名案じゃねーか！

たぶんウチに泊まれよって誘ったら菜々美ちゃん来ると思うぜ

任された！菜々美ちゃんのコトは任しとけ！

あたしから菜々美ちゃん誘ってみるわ

文句無ぇよな？

一応「文句無ぇよな？」って訊いてるけど、俺が文句を云う余地も無いんでしょ？

紗枝の良い様にしたら良いよ

そんなシケた面すんなって

当日は敦子ちゃんの私服も初御目見えだぜ

偲ちゃんのお父さんから貰った服を広げてどれを着て行くか迷ってるよ

どの服も大人っぽくて色っぽくてセクシーで格好良いからな、キミも敦子ちゃんに惚れちゃうんじゃね？

大人な敦子ちゃんの服装を見たキミの反応が早く見たくてあたしがワクワクしてんよ

そうだ！

今度よぉ、キミと２人でデパートとか行ってみねぇ？

スーパーで売ってる服とかとは違ってよぉ、高級ブランドの服はやっぱ高けぇだけのコトはあって格好良いんだよな

あ、違うぜ？あたしがそんな高けぇ服を買うだとか着るだとかって話じゃねぇよ

ただ観るだけだよ

良いモンは観といた方が眼の肥やしになるだろ？

そっか、山口が私服で来るんだ

まぁ山口の私服姿が見たいとかじゃなくてね、いよいよ制服の呪縛から解放されるんだなって思ったらとょっと安心するよね

これを機に普段から私服を着れる様になれば良いよね

で、紗枝はデパートに行きたいんだ

けどデパートに着て行く様な洋服も持ってないよね

たぶん俺等の普段着じゃ中に入れないと思うよ

あ、そうだ

今度さ、服を買いに行こうよ

前にもそんな話にならなかったっけ？

山口が貰った服だって他所行き用で普段着れる様な感じじゃないんでしょ？

山口が普段から着れる様な私服と紗枝がデパートに着て行ける様な服を買いに行こうよ

タケシも呼んでさ、山口の私服はタケシに選んで貰ったりもしてさ

あのさ、ドヤ顔してるトコ悪ぃんだけどよ

いあさ、あたしが訊くのも変なんだけどな、ちょっと気になっちまってさ

みんなで買い物に行くのは良いんだけどさ、菜々美ちゃんはどうすんの？

声を掛けりゃ菜々美ちゃんも来てくれるとは思うんだけどな

さっきのお泊まりの話とは違ってみんなで買い物って話だったら菜々美ちゃんはキミから誘われたいと思うんだけどさ

放っといたらキミの方からは菜々美ちゃんの名前が出て来なさそうな気がしたからさ

あ、そうか

俺の中では紗枝とか山口とかタケシとかとは菜々美は別枠だったんだよね

けどそうだよね、山口とタケシが一緒だったら菜々美の耳に入るだろうし自分だけ呼ばれなかったみたいな疎外感を感じちゃってたかもだね

そこまで気が回らなかったよ

そうだね、菜々美も誘おうね

あー、なんだろーな

違うんだよなぁ

まぁ、菜々美ちゃんとは仮の彼女みたいな関係だから仕方ねぇのかも知れねぇけどよ

もしも菜々美ちゃんがマジな彼女だったら別枠じゃなくなってたか？って話だよ

いや、別にキミに文句は無ぇよ、文句が云いてぇワケじゃねぇんだよ

確かに今服を買いに行こうって云い出したのはあたしで、敦子ちゃんの服をタケシくんに選んで貰って買おうって話は前からあったから４人で行こうぜってなるのは自然な流れだったかも知んねぇけどさ

キミの中で菜々美ちゃんって存在はどー云う位置付けなんだろうなって思ったんだよ

位置付け？

どう云う意味だろう、位置付けって

利害関係で云うなら菜々美は退屈な日常から俺を踏み台にして紗枝とか酒巻とかと仲良くなれて、その代わりに俺は菜々美から楽しい時間を貰ってて、お互いに損得無しの良い関係なんじゃないかな

今じゃ俺が居なくても酒巻のトレーニングを見学に行ったり俺を介さなくても紗枝や山口はお泊まりに誘ったりするまでに成ってるし

お互いに得るものを得たんじゃない？

そう云う話じゃなくて？

そんな感じなんだ！

いや、そー云う話だよ！

へぇ、キミからしてみたら菜々美ちゃんってそんな感じなんだなぁ

なるほどな、タケシくんが菜々美ちゃんに云ってる話ってかなり的を射てるんだな

ま、あたしが横からとやかく云う筋合いの話じゃねぇんだけどな

菜々美ちゃんの方はもうちょっとキミにマジだと思うぜ

「仮の」じゃなくてキミのマジな彼女になれたらなって思ってるよ

面と向かってキミにそんなコトを云ってフラれちまったらおしまいだからな、云えずにいるだけで、本心はキミの彼女になりてぇんだと思うぜ

そうなの？

てか、仮の彼女とマジな彼女の違いがいまいち判らないんだけど

今だって俺と菜々美との間に「仮の」って付いてるのを知ってるのは紗枝とタケシと、あと山口でしょ？

酒巻やその他の撮影会に来てた人達にはいちいち「仮の」なんて説明はしてないからさ、みんな俺の彼女だと思ってるよねえ？

実質的に「マジの彼女」となんら変わらないと思うんだけど

あっちゃー

キミぃ、マジで云ってる？

周囲りに対してじゃねぇんだよなぁ

例えば２人きりになった時とかに「好きだよ」とか云ってやるとかさ

なんかあるだろ？そー云うの

あ、あれ、店長じゃん

なんかシンヤさんも出て来たな

何んか探してる風だけど

あ、シンヤさんが俺等の原チャリを指差して何んか云ってるね

２人とも慌てて出て来たけど、どうしたんだろ

てか、俺等のコトを探してるんじゃない？

ちょっと出てってみようか

あ、拓巳さんと目が合った

こっちに来るね

だな、カフェに入って来るよな

ウチ等はココに座って待ってりゃ良いかなぁ？

あ、一応目が合ったし入口まで拓巳さん達を迎えに行って来るよ

紗枝はココに座って待ってて良いからね

あ、マネージャーはあたしなんだからよ

あたしが店長達を迎えに行くわ

キミがココに座って待ってろよ

んじゃ、ちょっと行って来るわ