卒業・(第弐弾)
終わったな
あっと云う間だったよ
だな、早かったな3年間
あれ?そう云えば、一人なの?
母ちゃんは忙しくて今日来れなかったわ
そっか
娘の晴れ舞台、見たかっただろうにね
そっちは?
なんで一人なんだよ
ウチの親は飯の準備で先に帰ったよ
お祝いだからって張り切ってた
違げぇよ!
そんなオイハギにでも遭ったような格好しててなんで今は一人なんだって聞いてんの!
ボタンから何から全部獲られちゃってさぁ
・・・意外とモテたんだな
そんなんじゃねぇよ
後輩がさ、からかいがてらに面白半分で持って行っただけだよ
部活の風物詩みたいなもんだろ、これって
いやいやいやぁ
中には何人かいたと思うぞ
マジで先輩のこと好きでした的な仔もな
そんなコトよりさ、引っ掛かってんだけど
オイハギってなんだよ、オイハギって
そんな古い語彙は俺の辞書には載ってないんだけど
ぐはぁ
そこツッコムかよ!
あいあい、あたしが悪かったよ
言葉の選択ミスったわ、認めるわ
じぁ、「カツアゲ」に訂正してお詫び申し上げます
これでいいだろ?
カツアゲかぁ
そっちの方が、らしいかな
ところで、今日帰っても誰もいないんでしょ?
飯喰いにウチに来なよ
あれだぁ!
お祝い名物の手巻き寿司だろ!
アタリ!
ウチのご馳走って云ったら昔っから大概手巻き寿司だからね
相変わらずのワンパターンだけどさ
手巻き寿司なら一人くらい人数が増えても大丈夫だから
いやぁ、やめとくわ
あたしのコト覚えてないかもしれねぇし
覚えてないようならウチに呼んだりしないよ
まぁ、無理強いはしないけどさ
覚えてても多分あまり心象よくねぇと思うからさ
それに何年もご無沙汰してていきなり飯はご馳走になれねぇだろ普通
やめとく
なんか、急に思い付きで誘っちゃって悪かったよ
ウチの親も懐かしくて喜ぶと思ったんだけどな
そうだ、ノリとかでむしり獲られちゃうのがなんとなく嫌でさ
先に自分で第二ボタンだけ外して隠し持ってたんだけど
実際、自分の第二ボタンを誰にも渡せずに持ち帰るのもアレだからさ
これ、幼馴染みの誼しみで持っててよ
はぁ?要らねーよ!
じぁさ、あたしのブレザーのボタン要るか?要らねーだろ?
あ、要る
ちょうだいよソレ
なんだよ、お日柄が湿っぽい所為か今日は調子狂うな
オイハギとか云い出すし、なんか上手く喋れねーや
あたしもそんな風に素直なら色々と違ってたかもしんねぇな
ボタン、やるよ
幼馴染みの誼しみでな!
ありがとう
俺の第二ボタンも欲しいなら「欲しい」って云えばいいじゃん
誰にも貰われなかった可哀想なボタン
あたしが持っててやんよ、誼しみでな!
誼しみ、こだわるなぁ
「誼しみ」って云ったのは言葉の綾と云うか照れ隠しって云うか・・・
結構さぁ、いい線行ってると思うぞ
ん?
前に、あたしの父ちゃんみたいな漢になりてぇって云ってなかったっけ?
結構いい線行ってると思う、父ちゃんには及ばないけどな
おおお、娘の御墨付き!
それ、嬉しいわぁ
あーダメだ
今日のあたしは変なコト云い出しそうだ
もう帰るわ、元気でな!
そか
この通学路を、後をちんたら歩くのも今日で最後か
あ?
聞こえなかった、今なんか云った?
うん、なんにも云ってないよ
帰るんでしょ?俺もテキトーに帰るよ
んじゃ、・・・またね
ぁ、・・・やっぱさぁ
家に帰ってから気が変わったら服着替えて行くかも、手巻き寿司
オーケ!
ウチの親にも来るって云っておくよ
もう、気が変わってるんでしょ?
そんなんじゃねぇよ
あーね
んじゃ、後でね
おう、んじゃ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます