放課後プロローグ

弥生

帰途・(第壱弾)

遅くなったな

一緒に帰ろうか

  

なんだよ急に

いいよ独りで帰れるし

  

そう云うと思ったけど一応さ

暗くなっちゃったし、方向一緒だし

  

へぇ、「一応」ねぇ

一応オンナ扱いはしてくれるんだぁ

  

まぁ、嫌なら別にいいんだけど

  

あたし、可愛くねぇよな

  

どうした?そんな萎らしい顔して

好きなヤツでも出来たか?

  

うるせぇよ、妙な勘働かせてんじゃねぇよ

余計なトコだけオトコになりやがって

  

まぁな、ガキの頃はよく泣かされたけど

いい加減もう10年ちかく経ってるしな

  

母ちゃんがさ、

「学校で会うんでしょ?元気にしてるのかい?」

って、たまに訊いてくるんだけどよ

「会わねぇよ!」って応えてるわぁ

  

そっか、お袋さん俺のこと覚えててくれてるんだ

お袋さんは元気にしてるのか?

  

そうさね、相変わらずかねぇ

一時は落ち込んだりもしてたけどよ

  

おやっさんがあんな事になっちゃうなんてな

俺も結構世話になったんだよ

あんな頑固親爺になりたいなとか思ってたんだよな

  

世話に?父ちゃんとなんかあったの?

  

いや、ガキの頃さ、俺が虐められてると無愛想な顔して

小銭持ってきて俺にお使い頼んでたの覚えてない?

  

あー、たまたまだろ?

タバコ切らしたりして自分で買いに行くのが面倒だったんだろうよ

ってかあたしが虐めてたみたいな云い方やめよーぜ

  

一度お使いから戻った時に

「助けてくれてありがとう」って云った事があるんだよ

そしたら釣銭を受け取りながら顔も見ずに

「そんなんじゃねぇよ」って呟いたんだ

  

ほら

じゃ、やっぱホントにそんなんじゃなかったんじゃねぇの?

  

かもな。

けど「おやっさんみたいな漢になりたいな」ってずっと思ってた。

  

ん。そか

そう云やこうやって話すのも久しぶりなんじゃね?

ガキの頃以来、小学校でも一緒に帰ったりしなかったし

  

そうだな、クラスがずっと別々だったからな

避難訓練の集団下校の日以外は別々だったな

  

たまによぉ、帰り道であたしの後を歩いてるだろ?

あたしはちんたらフラフラ歩いてんのになんで追い越さないの?

  

そうかぁ?たまたまだよ

学校帰りは俺もちんたら歩いてるし、急いで帰る理由もないし

  

なぁんだ、歩くの速えぇのにずっと後ろに居るから

もしかしてあたしのコトを見護ってる的なヤツかと思ったぜ

  

そんなんじゃねぇよ!

ガキの頃のトラウマで近付いたり追い抜くのが怖いだけだよ

・・・それは冗談だけど

  

んじゃ、あたし、ここでいいよ

もう家見えてるし

  

なんだよ、大して遠回りにもならないし家の前まで送るよ

久々にあの懐かしい玄関とかも見たいしね

  

母ちゃん家に居るよ?顔出して行けば?

あの頃と比べたら全然でっかくなってるからビックリすんじゃねぇかな

  

いや、また今度にするよ

お袋さんに宜しく伝えておいてくれよ

あの・・・お袋さん、大事にしろよ

  

云われなくてもそこそこ仲良くやってるよ

  

ならいいんだけどね

  

あのよぉ

そんなに嫌いなワケじゃねぇよ?

たまに、また一緒に帰ってやってもいいよ

  

なんだよその云い方

普通に「送ってくれてありがとう」って云えばいいじゃんか

  

・・・そんなんじゃねぇよ

  

あーね

じゃ、またね

  

おう、じゃまた

  

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