同じ部員で学年一の美少女に赤面させられるだけのラブコメ
@1ya12ma2to
第1話
「失礼しまーす」
一声かけて部室に入る。
といっても、僕の所属している部活、読書クラブには僕を含めて二人しか部員がいないため、正式には部活ではなくクラブという扱いになっている。
と、部室に入ると僕より先に先客がいたらしい。
「あ、春。ちゃんとサボらずに来たの?」
「僕は一度もサボった記憶は無いんだけど…」
彼女の名前は花宮 風花さん。
綺麗に透き通っている銀髪を短くショートカットにしていて、なんといっても目を引くのはその容姿の凄さだ。
黒く綺麗に澄んだ目。鼻筋がすっと通っていて、顔の一つ一つのパーツが綺麗に整っている。
身長は150前後と少し小柄だが、胸部にはこれでもかと主張してくる見事な膨らみもある。
これ程までに完璧だと当然男子も放っておくわけもなく。
入学してから今まで色々な人に告白されているが、全て断っている。
だが、諦めの悪い連中も多く、部活に入って仲を深めようとしてくる人もいたが、全て断っていた。
何故僕がこの部活に入っているのかは未だに教えてくれないが、そのせいもあって男子の恨みの的でもある。
「?何してるの?」
「いや、何でもないよ」
少し考え事をしてしまったが落ち着いて席につく。
さっきも言ったようにここは読書クラブで、図書室にある本を時間になるまで読むといった特に変哲もない部活だが、一つだけ違うことがある。
それは風花さんが読んでいる本の出来事を再現しようとしてくることだ。
この間は、キスシーンが出てくるラブコメを読んでいて、そのシチュエーション通りにキスをしてこようとしたから全力で止めた。
そういうことは好きな人としてくださいと力説し(本人は納得していなかったが)、事は済んだがつまりそういうことである。
「春は何を読むの?」
「僕は最近流行っている異世界ものかな。
風花さんは?」
「私は幼馴染みもののラブコメ」
「本当にラブコメ好きだね……」
「うん。こういう恋をしてみたい」
恋、か。僕も叶わない恋をしている。
好きな人は言わずもがな風花さんである。
僕も至って普通の男子高校生である。
彼女も欲しいし出来ることなら美少女が良いというのは僕だけではないはずだ。
と、本を読み進めていると、
「ねえ、春」
「ん?何、風花さん?」
「ハグしてみたい」
「はい?」
いきなり爆弾を投下してきた。
爆弾を投下した本人は特に変わった様子はなく、今いった質問の返答を待っている。
「な、なんて?」
「ハグ、してみたい」
「……また小説ですか」
「うん」
さてどうしたものか。
さっきも言ったように僕は風花さんが好きだ。けれど風花さんは僕の事が好きでは無いかもしれない。そういうことはお互い好き同士でした方がいいに決まっている。
と、悩んでいると、
「えい」
「ひぇっ!」
いきなり風花さんが抱きついてきた。
立派なお胸はギュッと押し付けられ、女子特有の柔らかさと、甘い匂いでどんどん顔が熱くなるのが分かる。
「ふふ、風花さん?!何してるの?!」
「何ってハグだけど?」
「そ、それは分かるけど!」
風花さんは僕の首元に顔を近付け、スンスンと匂いを嗅いでいる。ん?匂い?
「スンスン。良い匂い」
「ちょっと風花さん?!匂いは嗅がないで?!
めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど?!」
「大丈夫。良い匂いだから」
「そういう事じゃ無いんだけど……」
風花さんは満足したのかハグをやめ、僕の方を見ている。
「風花さん?こういうことはしちゃダメって言
ったよね?」
「好奇心には勝てなかった」
「そこは抑えて?!僕の心臓が持たないから
ね!……何だか僕だけドキドキしているみ
たいだなぁ」
「何言ってるの?」
「えっ」
風花さんは僕の手を取り、その豊かな胸に当てる。
「ちょっ!風花さん?!当たってるというかが
っつり触ってるんですけど!」
「静かにして」
何とかギリギリの理性で興奮を落ち着かせる。すると僕と同じくらいの鼓動の早さが手に伝わってくる。
「私もドキドキしてるよ」
そう言って手を解放する。
どうやら今日も僕の負けらしい。
風花さんは再び本を読んでいる。
僕が勝てる日は来るのだろうか。
だけれど、もう少し負けてみたいと思った今日この頃であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます