声劇台本:屋上にはいなかった

@2328y

△▼

ひなた「なに、やってんの」


ゆき「…屋上は立ち入り禁止です」


ひなた「ゆきだって入ってるじゃん」


ゆき「私はいいの。品行方正で成績優秀、みんなの頼れる学級委員長の私がこんなとこにいるなんて、誰も思わないでしょ」


ひなた「そんな学級委員長が、こんなところで煙草なんか吸ってていいわけ?」


ゆき「…いいんじゃない」


ひなた「よくないよ」


ゆき「じゃあなに?先生にでも言いつける?誰もあんたの言うことなんか信じないよ」


ひなた「本当なの」


ゆき「なにが」


ひなた「高橋先生と付き合ってたって噂」


ゆき「…さあ」


ひなた「高橋、来月結婚するんだってね」


ゆき「…なんであんたが傷ついたみたいな顔すんの、ほんと、あんたのそういうとこ大っ嫌い。昔からそう、私の後ろでうじうじして、言いたいこと何にも言わないで、一丁前に悲しい顔だけしてさ。…帰ってよ」


ひなた「……」


ゆき「帰ってって、言ってるでしょ!」


ひなた「帰らないよ」


ゆき「…そういう、頑固なところも嫌い」


ひなた「いつから吸ってんの、煙草」


ゆき「教えない」


ひなた「美味しいの?」


ゆき「まずいよ」


ひなた「そう。…その煙草、貸して」


ゆき「は?あ、っちょ」


ひなた「(煙を吸ってむせる)」


ゆき「ダサ」


ひなた「…やっぱり、苦いじゃん」


ゆき「あんたに、なにがわかるっていうのよ」


ひなた「なにもわからないよ」


ゆき「は?」


ひなた「明るくて、いつもみんなの中心にいて、強がりで、ひとりでこっそり泣いてるゆきのことが、僕は、なにもわからない」


ひなた「…やっぱり、嫌い」


ゆき「僕はゆきのこと、好きだよ」


ひなた「…え?」


ゆき「煙草なんてやめて、僕にしなよ」

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