実りの秋

雨世界

1 ……私は、あなたを忘れない。

 実りの秋


 登場人物


 田村秋 とても真面目な女子高校生 ポニーテール


 田村景子 明るい秋のお母さん


 坂下舞 秋の友達 旬と恋人同士で付き合っている


 上草旬 秋の友達 舞と恋人同士で付き合っている


 プロローグ


 ずっと、大好きだよ。


 本編


 ……私は、あなたを忘れない。


 私には、大好きな人がいる。(それは、とても幸せなことだと思う)


 私が泣いた日


 その恋は、遊びですか?

 ……それとも、本当の恋ですか?


 ずっと泣かないと心に決めていた秋が泣いたのは、秋が高校二年生の年の夏の終わりごろの話だった。秋が泣いた理由、それは大好きなお母さんと大げんかをしたことが原因だった。

 ずっと仲が良くて喧嘩なんて一度もしたことがなかったのに、その日、秋は『ある人の話』をしていて、大好きなお母さんと大げんかをした。

 そして、泣いたまま、自分の家を飛び出して、もう薄暗くなりだした、夜の始まりの時間の中に、たった一人で飛び出して行ったのだった。


 秋は、小さなころから、とても真面目な子供だった。

 秋は、小さなころから、とても周囲の人に優しい女の子だった。


 真面目であることが、あるいは、誰にでも(知り合ったばかりの人にも、あるいはまだ名前を知らないような人にでも)優しくすることができることが、秋のいいところ(昔からお母さんに褒められるところ)だった。

 秋は勉強は頑張ったし(すごく成績が良かったわけじゃないけれど)家のお手伝いもよく手伝っていた。(今では仕事で忙しいお母さんの代わりに、家の家事、炊事、洗濯、掃除は、ほとんど秋がやっていた)

 近所でも秋ちゃんはいい子だねって、評判だった。(お母さんも喜んでくれた)


 ずっといい子だった秋は、あんまりお母さんに本気で怒られたことがなかった。


 だから、お母さんと大げんかをして、(大好きなお母さんに大声で怒られて)秋はすごく驚いたし、……本当に悲しい思いをした。


 だから秋は家出をした。

 絶対にお母さんのいる家に帰ってやるもんかって思った。

 

 秋は泣きながら、近所にある公園にまで走って移動をした。その公園は紅葉ヶ丘公園という名前の大きな自然公園だった。(秋になると色づいた紅葉が、とても綺麗なことで有名な公園だった)


 その公園の大きな池のある古い橋、秋雨の橋のところまでいったところで、秋はその足を止めた。そこに見知った顔の人物を見つけたからだった。

 

 そこにいた少年は、秋の同じ高校の同じ教室に通っている少年で、その名前を上草旬といった。


 旬くんは、その秋雨の橋のところから、ずっと暗くなりだした空を見ていた。


 旬くんは、控えめな性格をした秋と仲の良い、たった一人の男の子の友達だった。

 その理由は、秋の知り合いの女の子にあった。旬くんは秋の親友の女の子と付き合っている、男の子だった。


 その秋の知り合いの女の子の名前を坂下舞と言った。


 秋と舞は親友だった。

 ……世界で一番の友達同士の関係だった。

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