第59話 食事
「準備はもうできているかしら?」
ダンジョンに潜っていたはずの異界竜が、久しぶりに姿を現す。
それに気づいたシーがいち早く蕾になって姿をくらました。
まあ、丸見えなんだけど。
「準備は……まあ一応完了してる」
長らく時間がかかってしまったが、魔法の習得は何とか終了していた。
更に、魔法の雨に当たった人間に永久コンボが発動するかどうかも確認が出来ている。
「それは良かったわ。魔人は後1週間ほどで肉体が完成するみたいだから、そのつもりでいてね」
異界竜は表情を変えずにさらりと告げる。
後一週間後にはとんでもない化け物と戦わなければならないと言うのに、平然としたものだ。
まあこいつ自身がとんでもない化け物だからこそとも言えるか。
「一週間後ですか。細かい時間の方も教えて頂けると有難いのですが」
アイシャさんが席から立ち上がる。
今は女神の天秤の面々が集まっての食事中だった。
戻って来た異界竜がそこに乱入して来た形だ。
「んー……多分、正午位になると思うわ。まあ場合によっては数時間前後するかもしれないから、細かい時間はあてにしないで頂戴」
「分かりました。では父に知らせてきます」
そう言い残すと、アイシャさんは報告に行ってしまう。
作戦決行時は、世界中の人間を建物の外に出す必要がある。
その伝達は早ければ早いほどいい。
「あら美味しそうね。私も御呼ばれしていいかしら?」
返事を待たず、異界竜がアイシャさんの座っていた席に座る。
そして皿の上にあった海老をフォークで突き刺し、その口に放り込んだ。
「普通の飯も食うんだな?」
魔物をバリバリ食らってるイメージがあるので、人間の作った物なんて食うとは思わなかった。
「あら、竜はなんでも食べるわよ」
異界竜は楽し気に目を細め。
更にもう一尾、フォークで刺して自分の口に放り込んだ。
「味の違いだってちゃんと分かるわよ。普段は放り込むみたいに食べるけど、こういう美味しい物はちゃんと味わって食べないとね」
「そうなのか……」
何でも食べると言われて悪食を想像したが、ちゃんと味の違いは分かっている様だ。
「他の子達は食べないのかしら?」
もちろん皆の手は止まっている。
まあとんでもない力を持った魔物が同席していたのでは、箸も進まないだろう。
まあ正確にはフォークとスプーンな訳だが。
「どうやら、同席はよした方が良いらしいみたいね」
異界竜の言葉に微妙な表情を返す面々を見て、彼女は首をすくめて席を立った。
どうやら最低限空気を読む気はあるらしい。
「じゃあお腹いっぱいだし、魔人が復活する日まで軽く寝ておくわ」
そういった彼女の体はふわりと宙に舞い。
そのままどこかへ飛んで行ってしまった。
「軽くねぇ……」
魔人が復活するのは一週間先だ。
その間ずっと寝続ける事を軽くとか……竜と人間とでは、そもそもの尺度が違う様だ。
人間が一週間も寝続けたら体が痛くなってしまう。
「ふぅ……お嬢と言い。竜也と言い。よくあんな化け物と普通にしゃべられるわね」
異界竜が居なくなるのを見届けたテアが、溜息をつく。
まあ相手はその気になれば、この場の人間を一瞬で皆殺しに出来る程の力を持った化け物だ。
そんなのが目の前をうろついていたら、生きた心地がしないのは分かる。
「前も言ったけど、今の所こちらに危害を加える気はないみたいだからな」
俺は異界竜がいきなり裏切ったりしない事を確信している。
裏切るんなら、とっくに俺達を始末しているだろうからな。
少なくとも、魔人討伐までは寝首を書かれる心配はないはずだ。。
まあ一応その事は皆には説明してはいるんだが、魔物と長く敵対してきたこの世界の人間と、異世界からやって来てまだ日の浅い俺とでは根本的な認識が違うんだろう。
「しかし……後一週間で人間の運命が決まる訳か。悔しいけど私らじゃ何もできない。しっかり頼んだよ」
「ええ、任せてください。魔人は必ず押さえて見せます」
ライラさんに向かって――いや、この場の全員に向かってそう力強く宣言する。
負ける事を考えて戦うつもりはない。
勝たなければ全てを失うんだ。
やって見せるさ。
クラス転移で適正村人の俺はゴミとしてドラゴンの餌にされそうになる~だが職業がゴミだった分スキルは最強だった。スキル永久コンボでずっと俺のターンだ~ まんじ @11922960
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。クラス転移で適正村人の俺はゴミとしてドラゴンの餌にされそうになる~だが職業がゴミだった分スキルは最強だった。スキル永久コンボでずっと俺のターンだ~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます