第13話 王都着

朝を迎え、テントを片付ける。

片付けも簡単だった。

ちなみに現地のテントは途中であきらめたため、ぐちゃぐちゃの状態でインベントリに収まっている。


「今日も良い天気ですね。このまま何も起こらないといいですね。」


ジョージさんが嫌なフラグを立てた。

アカネとソフィアは今日も仲良しだ。

王都に向けて出発する。

朝飯のサンドイッチを食べながら馬車で寛ぐ。

すると進行方向1km先に魔物の気配を察知した。


「ジョージさん、魔物が現れたので先行して始末してきますね。」


「お気をつけて。無理はなさらないでくださいね。」


馬車から飛び降り、魔物のところまで走った。

そこにはゴブリンが5体で道を塞いでいた。

いまさらゴブリンに手間取ることはない。

ウインドカッターを5発連射し、胴体と頭が切り離された。

討伐証明部位の耳と魔石をとり、道端に穴を掘って燃やしたあと埋めた。

しばらく待っていると馬車が追い着き乗り込んだ。


「ゴブリンでした。ササっと片づけましたので問題無しです。」


「そうですか。では、先を急ぎましょう。この分だとお昼には王都に着きそうですね。」


またフラグを立てたんじゃないのか?

予想は的中した。


「ジョージさん、盗賊が待ち伏せしているようです。人数は10人くらいです。討伐してもよろしいでしょうか? それとも生け捕りにしますか?」


「できれば生け捕りでお願いできますか? 孫に死体を見せたくないので。」


「了解しました。じゃあ、今回はアカネも参戦してくれ。拘束して王都に連れていくぞ。馬車を攻撃される可能性もあるのでみなさんはここでしばらくお待ちください。」


「いくぞ、アカネ!」


「はい!」


馬車から飛び降り、ゆっくりと盗賊が潜む林に向かう。


「アカネ、気配探知で敵の位置を把握しろ。俺が右側の5人、アカネが左側の5人を頼む。」


「「スリープ!!」」


数名を残し、意識を失った。

残ったものも周りの仲間が急に倒れ出して唖然としている。

その隙にバインドの呪文を唱え次々と拘束していく。

すると俺の方にいた一人の大男が姿を現した。

大きな斧? バトルアックスを担いでいる。


「ずいぶんと舐めたマネをしてくれるじゃないか。俺を斧使いのガンス様と知ってのことか? 俺に会ったことを後悔しながら死んできな!」


大男が斧を振り上げ向かってきた。

すごくめんどくさいやつのようだ。

絡みたくないので土魔法で足元に穴をあけた。

すると、穴につまづいて盛大に転がった。

起き上がろうとして顔を上げた瞬間に首に剣を突き立てた。


「参った、、、」


バインドで拘束した。

改めて縄で全員を縛り上げ、引っ張って馬車に戻った。


「ジョージさん、終わりました。」


「お疲れ様です。ここから王都までは1時間くらいですのでゆっくり向かいましょう。」


盗賊たちを引き連れながら馬車に並走し王都へ向かった。

ジョージさんに聞いた話では、盗賊を生きたまま警備隊に渡すと討伐報酬の他に犯罪奴隷として売ったお金ももらえるそうだ。

また指名手配がかかっている場合はさらに上乗せされるらしい。

その後は何のイベントもなく、王都の門に辿り着いた。

さすが王都だ、門がでかい。

それに結構な人が並んで順番をまっている。

人の列を横目に、門番のところへ盗賊を連れて行った。


「道中、盗賊に襲われたので拘束した。こいつらの処理を頼む。」


「それはご苦労だった。って、お前はガンスじゃないか! こいつはここいらじゃ有名な盗賊の親分でな、指名手配されていたんだ。これで街道は安全になるだろうよ。じゃあ、手続きをするから事務所に来てくれ。お前らは牢屋で反省しろ。」


別の門番に事務所へ案内された。


「手続きをするので何か身分証のようなものはあるか?」


「ギルドカードでいいか?」


「問題無い。10人の盗賊を拘束するのは大変だったろう。何人で討伐したんだ?」


「2人だが?」


「はぁ? 嘘だろ? しかもガンスが居たんだぞ?! まあいいか。それで報酬だが、指名手配のガンスも含まれているし、奴隷に落とすので精算に多少時間がかかるが大丈夫か? そうだな、1週間はみてくれ。」


「わかった。当分は王都に居るつもりだから問題無い。」


「精算が完了したら、ギルドに報酬を渡しておくから受け取ってくれ。」


警備隊から受け取るのではなく、ギルドで受け取るらしい。

外に出るとまだ馬車は並んだままだった。

日が暮れる前に町に入れるのか不安になるな。

馬車に戻り、ジョージさんに手続きが完了したことを報告した。


「もう少し掛かりそうですね。先に依頼達成のサインをしておきますね。これをギルドの受付に渡してください。あと、なにかお困りでしたら遠慮なく私の商会を尋ねてくださいね。」


「ありがとうございます。アカネを連れてソフィア様に会いに行きますね。」


ソフィアの笑顔が眩しい。

夕暮れ前にやっと門を通り抜けることができた。


「食事でも一緒にどうかね?」


「ありがとうございます。アカネもまだソフィア様とお話がしたいようなのでご一緒させてください。」


ジョージさん行きつけの高級料理店に案内された。

アカネが緊張しているようだ。

緊張を解そうと脇腹を突いたら本気で怒られてしまった。

料理は高級なのだろうけど、現代の料理に慣れてしまっている俺には正直物足りなかった。


「良い素材が手に入った時にはギルドより高く買い取りますのでうちに売ってくださいね。」


「では、今フォレストウルフが40頭分持っているのですが引き取ってもらえますか?」


「え?! もちろんです。フォレストウルフの綺麗な毛皮は高く売れます。全部買い取らせていただきますよ。」


「では、明日お店の方に持っていきますので。また、欲しい素材がございましたら取ってきますので依頼してくださいね。」


「そうですね。今はこれと言って思い当たらないですがトレントの木材は常に不足しているのでお願いしたいですね。」


「了解しました。ギルドで明日生息エリアを確認してみます。」


「よろしくお願いします。ところで今晩の宿泊先は大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫です。いろいろお気遣いありがとうございます。」


明日の来店時間を調整したあとジョージさんと別れた。

ホームで自宅に戻り、2日ぶりのお風呂を堪能した。

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異世界で雑種と呼ばれる君と出会った 蒼い空 @sky_blue

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