第12話 王都の手前の町

「特にこの町でやることも無いし、先を急ごうか?」


「そうですね。次の町に向かいましょう。」


自転車に二人乗りで次の町に向かった。

気配探知で通行人や馬車が探知されたときは、見られると面倒なので降りて収納し徒歩の旅人を装った。


「そうそう、これからの戦闘だが。覚醒したアカネを前衛にして、俺は後衛で支援にまわろうかと思う。もちろん、俺も殴るけどな。殴り賢者を目指す。アカネに戦闘経験を積ませるためだ。」


「了解です。では、弓ではなく剣を装備します。」


防御力が元々高いし、無理をしなければ大丈夫だろう。

決して、ステータスが追い抜かれていじけているわけではない。

正直、こっちに来れた時には俺が主役? 俺って勇者?と思っていたが、明らかに俺はサブでアカネはメインのようだ。

俺はアカネを救うためにこの世界に呼ばれたのであろう。

今までの苦労を忘れさせるくらい喜びを与えてやりたいと思っている。

そんなことを考えながら走っているといつの間にかに町が見えてきた。

思っていたよりも隣町までは遠くなかった。

いや、俺のステータスが向上し、速度が上がっていたのかもしれない。


王都の手前の町はさらに大きかった。

前の町の囲いは木製だったが、ここは石壁だった。

大きな門もあり、魔物が襲ってきたときには籠城できそうだ。

前の町と同様に町に入るのは身分証が必要だった。

ギルドカードを見せてすぐに通してもらった。


「とりあえず、ギルドで情報収集だな。」


2人で並んでギルドへ向かった。

なぜか最近アカネが手を握ってくるのだが。

経験の少ない俺は緊張して手汗をかいていないか心配になる。

挙動不審になっている俺にアカネは、「嫌でしょうか?」と聞いてくる。


「いや、問題無い。逆にアカネに手を握ってもらうと安心する。」


余裕ありそうに誤魔化した。

揶揄われているようだ。

アカネの笑顔が眩しい。


「買取をお願いしたいのだが、良いだろうか?」


「量が多いのでしたら解体場でお願いします。」


ここでも数の多さに引かれてしまった。

町が大きいのと王都が近いため、たくさん買い取ってもらえた。

タンスの肥やしのようになっていた魔物が大分減ってきた。

フォレストウルフの一部も買い取ってもらえて、50金貨(50万円)の収入が得られた。

暗くなってきたので自宅に戻ることにした。


次の日の午後、ギルドに行くと王都までの護衛依頼を見つけた。

急ぐ旅でもないので受けてみるかな。


「アカネ、この護衛依頼を受けてみようと思うのだがどうだ?」


「馬車で2日程度の距離ですし、報酬もなかなかです。良いのではないでしょうか?」


「この護衛依頼を受けたいのだが、手続きを頼む。」


「えっと、明日の朝の出発になりますが大丈夫でしょうか? 問題無ければサインをお願いします。ここから先は魔物や盗賊との遭遇率が上がりますので注意してくださいね。」


野営をしなければならないだろう。

一応、この世界の野営セットを手に入れておいた方が良いな。

地球のキャンプセットを見られたら面倒くさいことになりそうだ。

道具屋に向かい、一式を揃えた。

若干、護衛依頼を受けたことを後悔している。


翌日の早朝、待ち合わせ場所の門の前で依頼主が現れるのを待った。

すると豪華な馬車が現れた。

門の前で馬車が停まった。

中から老人と少女が降りてきた。


「おはようございます。本日護衛していただく冒険者の方で間違いございませんか?」


「はい、おはようございます。冒険者のケンタです。こっちはアカネです。よろしくお願いします。」


「わたくしは王都で商人をしておりますジョージと申します。この子は孫のソフィアです。王都までよろしくお願いします。」


馬車は4人乗りだった。

護衛は馬車の横を並走するものだと思っていたのだが一緒に乗って良いそうだ。

その方が馬車の速度を上げられるからだそうだ。

但し、魔物や盗賊が現れたらすぐに対処してほしいと言われている。

俺は気配探知で周囲を警戒していた。

レベルが上がったため数キロ先までは把握できるようになった。

馬車は順調に進み、本日の野営予定地の川の畔に到着した。

年が近いせいかアカネとソフィアはすっかり仲良くなった。

アカネにソフィアの面倒を見るように伝え、俺は野営の準備に取り掛かった。

異世界のテントの組み立ては難しい。。。

説明書が分かりづらい。。。

もおおおお! 面倒くさい!

諦めました。

俺には無理です。

インベントリから日本で買ったテントを取り出した。

今までの苦労がウソのようにあっという間にテントが建った。

日本の技術はすばらしい。

ジョージさんが興味津々に近づいてきたが口止めをした。

その代わり泊めてくれと約束されてしまった。

トイレに行くと言って急いで日本に戻り、御者さんも含む3人分の寝袋を買いに向かった。

テントは5人でも十分なサイズなので大丈夫だろう。


「ジョージさん、食事の方はどういたしますか? 私が作りましょうか?」


「昼と同じ干し肉の予定でしたが、温かい食事を準備して頂けるのでしたらお願いできますか?」


「了解しました。では、しばらくお待ちください。」


インベントリからオーク肉や日本で仕入れた食材を取り出して料理を始めた。

今日は豚汁(オーク汁?)と生姜焼き、コッペパンにした。

白飯がほしいところだが、食べなれていないジョージさんたちにはパンの方が良いだろう。

食事は大好評だったが失敗した。

商人のジョージさんに異世界の味を教えてしまったため、どこで仕入れた食材なのかと追及されてしまった。

旅の途中にもらったと言って誤魔化したが納得していないようだった。

馬車を含め周囲に結界を張り、アカネと交代で見張りをした。

何の問題も起こらず、朝を迎えたのであった。

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